俺のラブコメは緩すぎる!?   作:まえだ有機

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6話 課題って出すと大抵は誰かやってこないですよね

「ふあ〜ぁ」

一つ大きな欠伸をする。

「あー、ねむ………」

もっと深く座ると寝落ちしてしまいそうだ。

朱坂誠司はバスの心地よい揺れから襲いくる凄まじい睡魔と戦っていた。

「…………はっ!」

駄目だ。少しぼーっとしただけで意識が飛んで行ってしまう…!

誠司は何かしなければ、と鞄から単語帳を取り出し、読み始める。

さて、なぜ彼がこうなったのか。

それは、端的に言えば今日の放課後にある事によるだ、という事である。

今日の放課後、何があるのか。

それは今年の年間行事の最初に行われる『強歩大会』の代わりに行う新行事の企画の会議である。

そして誠司はそれのアイデアをひねり出すのに一晩まるまるかかったのである。

もちろん、一睡もしていない。なので徹夜慣れしていない誠司は現在それから来る睡魔と必死になって戦っているのである。

「あー、駄目だ」

誠司は単語帳を閉じる。

頭が上手く働かず、全く集中出来ないのである。

ガタン、とバスが揺れる。

「………!!」

カクン、と誠司の頭が揺れ、目を覚ます。

「駄目だな…。てか、なんでこういう時に限って時間は長く感じるんだろう?」

なんてちょっぴり哲学的な事を考え出したりする。

 

そして数十分後、睡魔との必死の戦闘の末、なんとか最悪の事態(寝落ちして乗り過ごす)を回避する事が出来たのであった。

フラフラと若干おぼつかない足取りで校門までの道のりを歩く。

「徹夜なんてするもんじゃないな……」

一人ひっそりと徹夜しない宣言をする誠司であった。

そんなこんなでダラダラ通学路を歩く誠司。

「ふぁ〜〜あ」

大きな欠伸を一つ。

それとほぼ、同時のタイミングで、

「せーんぱいっ!!おはようございます!!」

背後から勢いよく飛びつかれる。

「…え?…ってのわっ!!?」

突然の事であったのと、完全に気を抜いていたのが相まって思いっきり押し倒される。

「痛ぇ……。全く。一体なんなんだ。山村」

「なんなんだって。そりゃあ、挨拶ですよ。あ・い・さ・つ」

誠司の上に跨ったまま愛らしい笑顔を浮かべめ答えるのは若干茶色がかった髪に割と低めの身長、そして少し幼めな体型で同じ生徒会メンバーで後輩の山村好織である。

よくあざとい言動をするので校内の男子(一部の)からは非常に人気がある。ただそれのせいで他の女子からはあまり好かれていないらしい。

女子の世界は恐ろしい。

「そうか。随分と斬新な挨拶だな、山村。ところで、早く降りてくれないか。さっきから背中に小石が刺さって痛いんだ」

誠司はここで重い、と言おうと思ったが、怖かったので言わなかった。というのは余談である。

「は〜い」

そういって好織は誠司の上から退いた。

好織がすんなり退いてくれたので誠司は立ち上がって制服についた汚れを払い落とした。

「ところで先輩」

校舎へと向かって歩き出した誠司の制服の袖を軽くひっぱる好織。

「ん?」

誠司は顔だけを好織の方へ向け歩みを止める。

彼女は俯いていたので表情はわからなかった。

「どうした?」

誠司は質問してみた。

すると、ボソボソと普段の好織にしてはかなり小さめな、元気のない声で返事をした。

「あの後、どうしたんですか?」

あの後、というのは恐らく好織が帰らされた後の事(5話その3参照)だろう。

誠司はすぐにそれに思い当たった。

「そうだな……。うん。特に何も無かったぞ。だから、安心しろ」

何が安心しろなのか。誠司は自分で言っておきながら心の中で自分に問いかけた。

が、

「そう、ですか。なら良かったです!!」

「お、おう」

思っていたよりも効果があったようで好織は一気に元気を取り戻した。

いや、もしかしたら今までのやり取りの全てが演技だったのかも知れない。誠司は内心そう思った。

「じゃ、先輩。また放課後に!!」

こちらの方を向きながらテテテっと駆け出す好織。

「おう。また後でな」

軽く手を振ってそれに答える誠司。

側から見れば通う高校の違う彼女を彼女の高校まで送りに来た彼氏に見えない事もない。

「さて、俺もそろそろ行くかな」

いつの間にか眠気は何処かへ消えていってしまっていた。

軽く伸びをする。

そして再び歩き出そうと一歩目を踏み出した時、予鈴のチャイムが響き渡る。

「んなっ!?ヤベッ!!」

誠司は全力で校内へと駆け込んだ。

 

* * *

 

教室の扉を開ける。

と、既にHRが始まってしまっていた。

「…す、すいません。遅れ、ました」

肩で息をしながら教室へと足を踏み入れる。

「朱坂君。早く席に着きたまえ」

担任に声をかけられる。

誠司のクラスの担任教師は中々に時間について緩いところがあるので少しの遅刻なら許してくれる、という遅刻常習者には嬉しい教師なのである。

誠司が席に着いたのを確認すると担任は、

「うーし。んじゃ、HR再開すんぞー」

と、気だるそうに言って今日の諸連絡を伝え始めた。

先ほど、時間にルーズ、と言ったがこの男性教師は基本、大抵の事にルーズである。ちなみに担当している科目は化学である。なのでいつもスーツの上から白衣を羽織っている。

 

「これで、連絡は以上!んじゃ、1限目の準備しとけよー」

担任は気だるげな足取りで教室を後にした。

「てか、本当よくあれで教師としてやっていけるよなぁ……」

誠司は呟いた。

だが、彼は気付いていないが、本来、遅刻した者は原則として遅刻届を生徒指導の教室まで取りに行ってそれを書いて提出しなければならないのだ。が、担任の性格上、それが省かれているという事を。

それから数分後、1限目が始まった。

1限目の科目は現国だった。

誠司は普段通り真面目にそれを受けた。

そして2限目以降も同じように普段通りに授業を受けた。

 

そして4限目が終わり、昼休みに入った。

誠司はいつも通り売店でパンを購入し、そしていつもの様に隼汰と英介と共に昼食食べる。

「なあ、朱坂」

「ん?」

隼汰が誠司に声をかける。

誠司はパンを頬張りながら返事をした。

「今日は篠原さん、来ない感じ?」

「…!?ゴホッ、ゴホッ!…はあ?

そんな毎日来るわけが無いだろう?

というよりそんな事をされたら明らかに俺に迷惑だろう?」

突然の、そして全く想定していなかった問いに誠司は思いっきりパンでむせた。

「なるほど、それで?誰が来たら迷惑なの?」

「だからな、篠原が………」

声がした方を振り向くとそこには腕を胸の下で組んで仁王立ちする黒髪美少女、篠原優香がいた。

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