俺のラブコメは緩すぎる!?   作:まえだ有機

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6話 その4

 

「おーい、お兄ちゃーん!!お待たせっ………」

誠司たちの方へ駆け寄ってきた千沙斗の動きが凍りつく。

見事に表情も固まっているのでなかなかの器用さだと思う。

そんな千沙斗の表情が少しずつ変わっていき、

「な、な、何であんたがいんのぉーー!?」

驚きと怒りの入り混じった顔になる。

こちらを指す指先がにわかに震えているのが確認できる。

「ちょっ、お兄ちゃん!!そんな事一言も言ってないでしょ!?」

「いや、言ったら来なかっただろ…」

怒りの矛先が理不尽にも誠司の方へと向き、対応に追われる。

なんか今日の千沙斗はやけに理不尽な気がする。

あれか。朝の場面で出番が無かったからだろうか。

などと誠司が考えていると、

「千沙斗さん、いくらイライラしているとしても他人に八つ当たりなんてみっともないわよ?」

優香が煽るように千沙斗に話しかける。

「や、八つ当たりじゃないもん!!私は、私は……」

そう言って千沙斗は「うわぁぁぁーん!」と誠司に抱きつく。

「うお!?」

千沙斗に抱きつかれバランスを失い後ろに倒れる誠司。

この時思いっきり後頭部を地面にぶつけた。

優香がそばで「うわぁ、なんて痛い兄妹…」と言いたそうに目を細めて口元を手で覆っている。

誠司は自分に抱きつく千沙斗をどかしてから立ち上がり、制服に着いた汚れを軽く払うと、

「それより、早く行かないと混むだろ」

と、極力平静を装って言った。

「ま、それもそうね。それに、私も小学生の相手をしている時間もあまりないし」

ちらりと千沙斗の方を見る。

「いや、篠原。それは流石に無理がある……」

「小学生じゃないもん!!」

誠司の反論を遮って正に小学生のような反撃をする千沙斗。

だが、優香は相手にする事はせず、丁度来たバスに乗り込み、

「さ、誠司君。早く行きましょ」

と誠司に微笑みかける。

そしてそれがさらに千沙斗の怒りに拍車をかける事になるのだった。

 

* * *

 

「むぅ〜……」

「なあ、千沙斗。いい加減に機嫌を直して欲しいんだが」

そこはとあるファミレスで客入りはまあまあである。

そしてそのファミレスのとあるテーブル、そこに誠司と千沙斗に優香が陣取っていた。

「全く、お子ちゃまじゃないんだから。いい加減になさいな」

若干面倒くさそうに優香がなだめる。言うまでもないが千沙斗のこの不機嫌な理由はもちろん優香絡みの事である。

が、これはもちろん逆効果なわけであって、

「むぅ…」

と、さらにふくれる訳である。

因みに、余談ではあるが既に3人とも注文した料理は完食済みである。

「仕方ない、千沙斗。何かデザート頼んでいいからそれで機嫌直せ」

誠司は千沙斗にメニュー表を手渡す。

それを千沙斗は渋々といった体でそれを受け取る。

「あ、私も頼んでいいかしら?」

優香も食いつく。

「あぁ、別に構わないがそれってもちろん自分で払うんだろ?」

「へ??」

「え?」

誠司の言葉に優香はメニュー表から顔を上げ、訳がわからないと表情で伝えてきた。

「いや、だから言葉通りの意味なんだが?」

「???」

優香の頭の上に浮かんでいる疑問符が一つ増えた気がする。

「まあ、いい。店員、呼ぶけどいいか?」

誠司は優香の疑問がどんなものだったのかは気にしない事にして彼女らに尋ねた。

「うん」

「ええ」

二人からそれぞれに返答を受け、誠司はウェイターを読んだ。

「ご注文は?」

「チョコレートパフェ」(千沙斗)

「レアチーズケーキ」(優香)

「ホットコーヒーで」(誠司)

三人が注文をして、ウェイターが厨房の方へ戻ってから待つ事数分。

それぞれが注文した品がテーブルへと運ばれてくる。

「わあぁ………!」

「へぇ、なるほど」

正面に座る少女二人がそれぞれ、感激と感心の声をあげる。

こう言うスイーツに弱いところとかがなんとも女の子らしいと思う。

日頃からこんな感じだとどれだけ楽か、と誠司はこの時しみじみ思った。

 

それぞれに食後のデザートを堪能した後、待ち受けるのは勿論、会計であって…

「た、足りない…、だと」

レジのカウンターの前で一人、戦慄する少年の後ろ姿があった。

レジに表記されている金額は4250円。

そして誠司の財布に入っている金額はおよそ3500円。

要するに1000円ほど足りないのである。

なぜ、こんなに高いのかというと、それは勿論このファミレスの料理が高い訳ではなく、単に誠司が全額奢る事になってしまっていたからだ。(本人は支払いの時まで気づいていなかった)

「な、なあ千沙斗。1000円ほど貸してくれないか?」

誠司が後ろに立っている妹の方を振り返る。

「え、お金?持ってきてないけど?」

千沙斗の方は初めから支払うつもりはさらさら無かったらしい。

それならばと、今度はその横にいる少女、篠原優香に尋ねる。

「し、篠原は?」

「そうね、それくらいならあるけどこの貸しは高いわよ?」

と意地悪く微笑んで自身の財布を鞄から取り出し、「はい」と1000円札を一枚出した。

誠司は、

「すまない」

と、一言だけ言った。

恐らく、レジに立っている店員には誠司がさぞ情けなく見えている事だろう。

それはさて置き、無事に会計は済ませた訳である。

「いやぁ、美味しかったねぇ。お兄ちゃん!!」

「うわっ、て千沙斗っ!離れろ!」

誠司の腕に自分の腕を絡ませてくる千沙斗を誠司は振り解こうとする。

「全く。なんて現金なの…」

そんな側から見るととても痛々しい兄妹を見て優香はため息を吐く。

主にその呆れの理由は千沙斗である。

なぜなら千沙斗は先程まで思いっきり拗ねていたからである。

なのにそれが好きなデザートを食べれただけでこの有様である。

優香が呆れるのもわからない事もないと思う。

そんな風に和やかな雰囲気に包まれながら再び帰りのバスに乗り込んだ。

まあ、それでもやっぱり平和というのは長くは続かないもので、

「だから、それが気に入らないの!!」

「別にそんなの人の勝手でしょう?」

バスの中でもこの二人は論争を始めてしまう。

実は本当はこの二人仲が良いのではないか、と誠司は少し疑ってみたりする訳で、

「なあ、あくまで公共の場だぞ。少しは静かにしたらどうだ?」

と、誠司は取り敢えずたしなめてみるものの、

「こいつを黙らせてから!!」

「誠司君。それに私は該当しないと思うのだけど。それにさっきから喚いているのはあなたの妹さんだけよ?」

と思いっきり反対される訳で、それが誠司と千沙斗がバスを降りるまで続く訳で、何かと面倒なのである。

「じゃあ、篠原。俺たちはここで降りるから」

誠司はそう言って千沙斗の腕を引く。

「そう。じゃあ、また」

と、優香は軽くこちらに手を振る。

バスを降りた途端、

「なぁにが、また、だよ!!」

千沙斗がわざとらしく舌打ちしてこれまたわざとらしく地面の小石を蹴る素振りをしたりする。

「はあ、…ったく」

誠司は一つため息を吐くと、髪をクシャクシャにして歩き出した。

しかし、同時に自分の日常が少しずつではあるが充実してきたのを感じ、星が輝く夜空を見上げ、ふっと微笑んでみるのだった。

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