俺のラブコメは緩すぎる!?   作:まえだ有機

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1話 引っ越しをしたことない人が引っ越しネタを書くとこうなります

ー土曜日。

父の言った通り本当に引っ越しの業者が来て、誠司の部屋の物を引っ越し用のトラックに積み込んでいく。

「まさか本当に引っ越す事になるなんてな」

誠司は産まれてからずっと暮らしてきた我が家を外から眺め感慨深げに呟く。

見送りは、なし、か。いや、当然か。

千紗都は家に来た翌日、母のところへ帰り、父親は今日も朝から仕事に行っている。

そして誠司は心の中で我が家に別れを告げ、近くのバス停へ向かう。

そこから駅へ行き、隣の市へ行くためだ。誠司の新しい住処はそこにある。

前の家からバスや電車を乗り継いで40分の所にそこはあった。

そこそこ新しいマンションで大体10階建てだろうか。

「引っ越し屋はもう来てるんだな」

マンションの入り口近くに引っ越し屋のトラックが一台止まっている。

「ええと、部屋は407号室、か。て事は4階だな」

誠司はマンションの中に入り、エレベーターで自分の新しい住処へと向かった。

エレベーターを降りた誠司は407号室を探す。

まあ、探さずとも部屋の前に引っ越し業者の人がいたのですぐ見つけられたのだが。

「朱坂さん、ですか?」

部屋の前に立っている業者の男の人が尋ねる。

「ええ、そうです」

誠司がそう答えると、業者の男は、

「一応、朱坂さんのお荷物はお部屋の中に入れておいたんですが、大きい物の配置とかは朱坂さん本人が来てからだったので、早速始めてもいいですか?」

誠司は、「ええ」とだけ答え、中に入る。

部屋の中は、入って正面に十分な広さの廊下が伸び、その両サイドにドアが付いていて、さらに廊下の一番奥にもドアがある。

両サイドのドアを開けるとそれぞれが風呂場(脱衣所有り)とトイレになっている。

一番奥の部屋はダイニングキッチンになっており、そこから寝室などの部屋に行けるようになっている。

(中々立派なとこだな)

誠司はそんな事を思いつつ、この部屋を用意してくれた自分の両親に心の中で少し感謝した。

大体午後2時の頃に勉強机や本棚、ベッドなどの配置が終わり、業者の人たちも帰っていった。

部屋に1人残った誠司は前の家から持ってきた荷物(教科書や漫画、ゲームなど)の整理をした。そして、その間に軽い昼食をとりに近くのコンビニで弁当を買って食べた。

陽が暮れてきた頃、玄関でチャイムが鳴る。

 

誠司は玄関に行き、ドアノブに手を掛ける。

その瞬間、

「お、に、い、ちゃーーんっ!!遊びに来たよ!!!」

ドアが勢いよく開かれる。

ゴンッと鈍い音がしてそこで誠司の意識は途切れた。

 

* * *

 

「……ん。いてぇ………」

「あ、お兄ちゃん!!起きた?」

「ああ」

誠司は痛む頭を抱えつつ身体を起こそうとした。

「!?ちょっ、千沙斗っ!?何すん……」

「もうちょっとこのままにして!」

千沙斗はそう言って誠司を押さえる。

「千沙斗よ。これはどういう事だ?

何故、俺は妹に膝枕されている?」

誠司が言った通り、現在誠司は自分の部屋の自分のベッドの上で妹の膝を枕にして横になっている。

「お兄ちゃんが千沙斗が来た時にドアに頭をぶつけたっぽくて、そんで、気絶したから私がこうして介抱してるの!」

千沙斗は誠司を膝に乗せたままドヤ顔をして、小さな胸を張るった。

「なるほど、結局のところ玄関に客を出迎えに行ったら、その客がお前で、俺がドアを開ける前にお前が勢いに任せて一気にドアを開け、それで俺にドアが当たり俺は気を失い、今に至る、と」

誠司は千沙斗の説明から自分の今に至るまでを推測し、その間に身体を起こした。

千沙斗は一瞬、名残惜しそうな顔はしたが、

「おぉ〜、流石私のお兄ちゃん。ほぼあってるよ」

と言ってニコリと笑った。

「さて、千沙斗よ。なぜお前はここに来た?聞こうと思って聞けなかったから今聞こう」

誠司はベッドから立ち上がり、服装を正す。

「あ、そうだった!!私ね、お兄ちゃんに引っ越し祝いを持ってきたの!!」

千沙斗はそう言って、

「はい!!」

と自らの身体を差し出す。

「ん?引っ越し祝い?どこにあるんだ、それは?」

誠司は千沙斗の意図がわからず、思った事をそのまま口にした。

「え!?いや、だから、はいっ!引っ越し祝い!!」

「いや、だからどこにあるんだ、それは」

なおも誠司には千沙斗の行動の意味がわからないでいた。

そして、千沙斗は

「だ〜か〜ら〜。引っ越し祝いは私なのっ!!」

つい強めの口調で言ってしまった。

「は??」

いや、わからない。なぜ、引っ越し祝いが妹なんだ。

誠司の思考回路は機能を停止した。

千沙斗は誠司が驚き、取り乱すだろうと予想していたので、彼のこの反応で自らのやった事に対する恥じらいとでも言うべきものが一気に込み上げてきた。

「…………」

お互い黙り込んでしまい、誠司の寝室は酷く気まずい空気で満たされた。

「ゴホン。まあ、なんだ。千沙斗、腹、減ってないか?そろそろ晩飯を食べようと思ったんだが」

誠司はわざとらしい咳をして沈黙を破った。

「え、うんっ。食べる!」

千沙斗もそれに乗る。

「ただ、今ここには食材がない。それにこんな時間だし、スーパーにもろくな食材はないだろうしな。よし、」

誠司がここまで言ったとき、

「焼き肉!!」

千沙斗が言った。

「はあ!?無理に決まってるだろ。お前、高校生で週3のバイトの収入でんなとこ行けるか!」

もちろん、断る。

「ファミレスに決まってるだろ。ほら、最近出来たとこ。あそこで我慢してくれ」

「はぁ〜い」

千沙斗は思いっきり残念そうな顔をする。

頼む、そんな顔するな。なんか俺が悪いみたいだろうが。

誠司は内心、毒づきながら出掛ける支度を始めた。

そこで誠司はふと、ある物に目を留めた。

「千沙斗。これはなんだ?」

誠司の指差した先にあった物はスーツケースだった。あの旅行とかに持っていくトランクである。

「え?あ、それは私のだよ」

千沙斗はしれっと答える。

「はぁ〜〜〜!?」

誠司の驚きに満ちた叫びが部屋中に木霊する。

「妹よ、なぜお前のがここにあるのだ?」

「さっき言ったじゃん。引っ越し祝いだって」

めまいがしてきた。千沙斗の言っていた「私が引っ越し祝い」と言うのは本当の事だったらしい。

「そうか、わかった。まあいい、取り合えず飯、行くぞ」

ツッコミを入れるのも面倒くさかったので誠司はさっさとファミレスへ行こうと促した。

 

* * *

バスに乗って10分ほどの所にそのファミレスはあった。

誠司たちはそこでメニューを広げ、何を注文するか選んでいた。

「ねえねえ、お兄ちゃん。デザートって頼んでいい?」

「ああ、いいぞ」

「ドリンクバーは?」

「いいぞ」

「この黒トリュフとフォアグラのソテーは?」

「いい……訳あるかぁ!!」

いや、待て、どうしてこんな一般のファミレスに世界3大珍味のうち2つも使った贅沢な品があるんだ!?そもそも値段は……6500円だと!?いや、なんでこれだけこんなに高いんだ…?そもそもどこから仕入れているんだ?

「ねえ、お兄ちゃん」

「今度はなんだ!?」

「完全にキャラ壊れてるよ?ってあれ?お兄ちゃんのキャラってどんなだったっけ…」

「まて、いつ俺のキャラが壊れた?そもそも俺のキャラは壊れていない!」

「あ、元からか…」

千沙斗は答えに行き着いた。

「元から壊れていない!!ってそれより、本当は何が言いたかったんだ?」

だんだん千沙斗にツッコミを入れてから誠司は話を戻した。

戻すといっても始めからズレていたので少しアレな気もするが。

「そうそう、私、注文決まったから店員さん呼んでいい?って聞こうと思ったの」

「そうか、いいぞ」

ただの注文が決まった、というだけだったのか、と誠司は内心安堵した。

 

注文をしてから数分、二人が頼んだ物が届く。

「ええと、チーズインハンバーグのデミグラスソースでお待ちの方は…」

「あ、私っ!!」

千沙斗は手を挙げて返事をする。

頼む、恥ずかしいからやめてくれ……。ほら、店員も引いてるだろ。

誠司は顔の前で手を組み、うつむいてこの精神的に成長していない妹に嘆く。

「次に、ビーフハンバーグ&エビフライです」

そう言って店員は誠司の前に鉄板を模した皿を置く。

「器が大変お熱くなっておりますので、気を付けてお召し上がり下さい」

店員は一礼してその場を去って行った。

 

 

それからゆっくり1時間ほどファミレスで過ごしてから二人は再びバスに乗って帰った。

自分の部屋に帰った誠司は自分のベッドに倒れこむ。

「疲れたぁ」

ベッドに横になった瞬間に誠司の身体に一気に疲労感と睡魔が襲いかかってきた。

「お兄ちゃんっ!!寝ちゃダメだよ!」

千沙斗のその声で誠司は重い身体をゆっくりと起こす。

「わかっている。千沙斗、先に風呂にはいっていいか?とにかく俺は早く寝たい」

「いいよ…」

千沙斗はなぜかボソッと答える。

「先、入りたかったか?」

「えっ!?いや、違うよ!そうじゃないの!」

千沙斗は顔を赤らめ顔の前で手をブンブン振った。

「そうか」

誠司は千沙斗のそんな態度は特に気に留めずに風呂に入った。そして、その後は歯を磨いて千沙斗の寝る場所を用意して誠司自身も眠りについた。




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