俺のラブコメは緩すぎる!?   作:まえだ有機

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4話 その2

朱坂誠司の高校生活4話その2

 

「さ、誠司君。食べて」

優香が誠司に夕食の野菜炒めを一口分差し出す。

要するにあのリア充たちがやるあの「はい、あーん」というやつである。

「……ぇ?」

と、誠司は顔を引きつらせる。

「待て、篠原。一旦落ち着こう…っ」

「私はいつでも冷静そのものよ?」

「……ングッ!?」

優香はそう言って見事に誠司の隙を突き、誠司に野菜炒めを食べさせる。

「ちょっ!?あんた、何やってんの!?」

今の光景を見ていた千沙斗が身を乗り出して言った。

「え?私は彼氏の誠司君にご飯を食べさせただけなんだけど、それが何か?」

「いや、何かって。ってほら、あんたの彼氏、思いっきりむせてるじゃん!」

「あら、本当ね」

やはり優香は本当に千沙斗の反応を楽しんでいるだけなんだな…。でもそれって俺の身も保たない気が……。

誠司は咳き込みながらそんな事を思った。

「あらあら、誠司君。大丈夫?」

「だい……じょうぶ…」

少し収まった頃に優香が心配そうな視線を誠司にむける。

「そう?少し横になったら?」

そう言って優香はカーペットの敷いてある方へ行き、正座した。

そこに横になれ、という事だろう。

「いや、大丈夫だ。本当に」

誠司はさすがにそこまで付き合うと後が面倒だと考えた。

「そう」

と優香がつまらなさそうに呟き、スタスタと誠司たちのいるテーブルへと戻り、やっぱり自然な動作で誠司の隣へと座った。

なんか正面からイライラオーラがびんびん来ているがそれはあえて気づかない事にしよう……。

 

それから数十分後、3人とも夕食は食べ終えたが、中々席を立てずにいた。

そこで、

「さて、俺は、勉強してくるかな…」

と、このピリピリした空気から脱するべく誠司が言った。

そして立ち上がったとき、やっぱり逃がしてくれるはずもなく、

「誠司君。このまま仲の悪い彼女と妹を放置してあなた1人逃げる、というの?」

優香はそう言いつつも目で逃げたら……みたいな感じで誠司に脅しをかける。

「いや、しかし、予習と復習は大事だろ?ってか、千沙斗。お前は受験勉強しなくていいのか?」

誠司は逃げの一手を打った。

「え?あ、ああ。じゃあ、して来るね!!」

千沙斗は思い出したようにそう言って自分の部屋へと向かっていった。

 

「ふう、これでやっと落ち着ける」

誠司はそう言って自分が座っていた椅子に深々と座り直した。

「以外と演技するのも疲れるのね」

と何やら満足そうなため息をついて優香が言った。

「なら初めからそんな下らないことしなきゃいいだろ…。って言っても遅いか」

と誠司は言った。

「ふふ。ま、思ったよりも楽しかったから良しとしようかしらね」

「なんかお前、登場してから凄い勢いでキャラが黒くなってるよな」

「そうかしら?」

「ああ。少なくとも俺にはそう見えるぞ」

「……そう。なら少し考えとくわ」

会話の内容はともかく、やはりこの2人は側から見ると絵になるわけであって、

「私抜きでいい雰囲気になるなあぁぁぁ!!」

と、勉強を始めたはずの千沙斗が自分の部屋のドアを勢い良く開き、そう叫んだ。

「全く。騒々しいのよ。なぜ、彼氏と少しいい雰囲気になっただけであなたが出てくるの?もしかして混ざりたかったの?」

優香が先程の弄ぶような目とは打って変わって挑戦的な視線を千沙斗におくる。

 

それは誠司の彼女(嘘)と妹による本日2回目の戦争?の始まりの合図であった。

 

* * *

 

時計が午後9時を過ぎたあたりで、

「おい、風呂上がったぞ…ってまだやってるのかよ」

誠司がタオルで濡れた髪を拭きながら出てくると、未だに彼女らは絶讃戦争中であった。

「なあ、もう1時間近くやってるだろ。どっちか早く風呂入れよ…」

 

「「お兄ちゃん(誠司君)は黙ってて!!」」

 

見事に息の合った瞬間であった。

2人はそう言ってから言い争いを再開するのであった。

「はあ、どうでもいいけどとにかく早く入れよ。じゃ、俺は部屋で勉強するからくれぐれも静かに頼むぞ。って聞いてないか」

なおも喧嘩を続ける2人にそう言って誠司はさっさと部屋に引っ込んだ。

 

* * *

 

それから数時間が経過して誠司が気が付いた頃にはダイニングの方からの喧騒は聞こえなくなっていた。

「静かになったな。んで、今は」

誠司は時計を見た。

時刻は0時半を指していた。

「ふう、今日は一先ず寝るかな」

誠司はそう言って布団の中へ潜り込み、部屋の灯りを消した。

 

それからどれ位経過しただろうか。

誠司は自分の上に何かが乗っかっている感覚を覚え、それにより、目を覚ました。

「…ん?」

誠司が外を見るとまだ陽は全然登っておらず、外は闇一色であった。

そして誠司が再び寝ようと寝返りをうった時である。

寝返りをうてなかった。

正確には何かに身体を抑えつけられている様な、そんな感覚を誠司の身体は感じとった。

「(か、金縛り?いや、足は動くからそれはない。なら…?)」

と、誠司は感覚を捉える事に集中した。

すると、それは金縛りではなく何者が誠司の上に乗っているせいだという事が分かった。

誠司が目を凝らすとそこには人影がいた。

そしてその人影の、頭であろうものが誠司の顔に接近してくる。

「(まさか、とは思うが、これは夜這いというやつか?いや待て、これまでのパターンだとそれはないな)」

と、誠司は自分で出した考えを即座に否定した。

するとその人影の頭は誠司に息使いが聞こえるところまで接近し、

「誠司君」

と、耳元で呟いた。

「!?」

誠司は驚いて声は出なかったが、布団から飛び起きた。

するとその拍子に何かが落ちる音がした。

誠司が部屋の灯りをつけ、その落ちたものを確認するとそこには、

「…篠原。なんでお前が?」

「いたた。大分、驚いてたわね」

とベッドから落ちた際にぶつけたらしい箇所を押さえた篠原優香がいた。

 

「お、おい、篠原。今言った事をもう一度頼む」

衝撃が大き過ぎたようで誠司本人も動揺を隠せなかった。

「私は誠司君の彼女です。それが何か?」

優香はさも当然のように。何ヶ月も付き合ってきた彼女のように。再び、答えた。

「はあ、そうか。篠原、ちょっとこっち来い」

誠司はシラを切り続ける優香の袖を引き、千沙斗のいないところへと連れて行った。

 

「なあ、篠原。あれは一体どういう訳なんだ?意味が分からんのだが」

誠司はうんざりとした様子で質問した。

「そうね。強いて言うなら、あなたの妹さんの初めの反応が面白かったからつい、ってとこね」

「お前、そんな事であんな修羅場を作り出したのかよ……?」

「ふふっ。でも安心して。あなたに手を出すつもりはないから」

なんだこいつ。なんかすごい黒いぞ…。

誠司は優香に新しい印象を抱くのであった。

「さ、早く戻らないと妹さん、ますます勘違いしちゃうわよ」

やっぱり優香は楽しそうだ。

「はあ、わかったよ」

「ふふふっ」

「ったく。あんまり遊び過ぎるなよ」

誠司は念のためにそう優香に注意した。

 

* * *

「すまんな、千沙斗」

「えっ!?いいよ、いいよ!」

千沙斗は顔の前で手を大げさに振る。

「お前、絶対勘違いしてるよな……」

誠司はそう呟いてようやく部屋の中へと入った。

その誠司に続いて千沙斗、それと優香も部屋に入っていった。

 

* * *

誠司が部屋に自分の荷物を置いてまとめていた時、

「誠司君」

誠司の部屋のドアをノックする音が聞こえた後、そう呼ぶ優香の声が聞こえた。

「どした?」

「あの、私の荷物はどこに置けばいいのかしら?」

「千沙斗の部屋に置かせてもらえよ」

「妹さんに頼んだんだけど、断られたから聞いてるんだけど」

すでに千沙斗とは交渉済みらしかった。そしてそれは決裂に終わっていたようだ。

「なるほど、で?俺の部屋に置かせてくれって言いたいのか?」

「い、いや、別にそこまでは言ってないんだけど…」

「あそ。ならどうしたいんだ?」

言葉を濁す優香に誠司は再び聞き返した。

「……ね……さい」

「あ?聞こえないぞ」

誠司はこの一切の行動が読めない少女に痺れを切らし、

「あぁ、もういい!俺が千沙斗に頼んどいてやる!」

そう言って誠司は部屋を出て千沙斗のもとへと行った。

「なあ、千沙……」

「やだ」

「早いな。俺はまだ何も言ってないぞ…」

誠司は想定外の妹の即答振りに驚きを覚えた。

「だって、お兄ちゃん。私の部屋にあの女を置けって言いたいんでしょ?なら話は早いよ。絶対嫌。断固拒否」

と、絶対に首を縦には振らない千沙とに

「千沙斗。落ち着いて聞いてく…」

「お断りします」

「だから早えよ!!」

誠司は思ったよりも千沙斗が強情なので、とりあえず千沙斗に理由を聞く事にした。

「なあ、千沙斗。なんで嫌なんだ?理由を教えてくれ」

すると、

「だってあの女、なんかいけすかない。あと、仮面被ってるみたいでヤダ」

ごもっともである。しかも、優香が誠司の彼女を演じていることまですでに察しているという。

誠司は内心、流石、行動残念の天才少女だな。と思った。

「なるほどな。でもな千沙斗。あいつをお前の部屋に入れないと次に誰のところに来ると思う?」

誠司は千沙斗を説得しに入った。

「言うまでもないが、俺の部屋だ。そしてもし、俺があいつを俺の部屋に入れて一晩過ごしたとしよう。何が起こると思う?高校生の男女が部屋で二人っきりだ。何も起こらないわけがないだろう?」

誠司がそこまで言うと、流石に千沙斗も理解してくれたのか、

「………わかった」

まだまだふて腐れた表情ではあったがとりあえず承諾はしてくれた。

「わかってくれて助かるよ。千沙斗、一晩だけだからなんとか我慢してくれな?」

誠司は千沙斗にそう言って優香のもとへと戻った。

「ずいぶんな言われようね」

千沙斗との会話が聞こえていたらしい。

「まあ、俺はともかく、あいつの篠原に対する第一印象は最悪だからな」

「それより、あなた達って本当に兄妹なの?むしろ夫婦に近いものをかんじるんだけど」

「縁起でもない事を言うな。俺と千沙斗は正真正銘の兄妹だ」

優香はそんな事を言っていたが誠司が言ったとおり本物の兄妹である。

余談だが、なぜ誠司がそう断言できるのかと言うと、彼が千沙斗の母子手帳を一度見た事があるからだそうだ。

そんなやり取りをしてるうちに千沙斗がこちらへとやって来た。

「ほら、あんたはこっち!!これ以上お兄ちゃんに近付くのは無し!!」

先ほどとは打って変わって大分威勢が良くなった。見方を変えると小者臭がするようになった、とも言えるだろう。

そして当の千沙斗は優香の腕を掴み、グイグイ引っ張る。

また、優香の方はと言うと、

「千沙斗さん、落ち着いて、ね?ちゃんとそっちに行くから。それとも…」

「篠原、ストップ」

優香が千沙斗に精神攻撃を仕掛けようとしたのを察した誠司は篠原の声を遮った。

 

そんな2人が千沙斗の部屋に行ってから数十分後、もちろん平和はそう長く続かないのが当然で、

「お兄ちゃぁぁぁん!!やっぱ、あいつ、いけすかないよ!!」

そう言って誠司の部屋に泣きながら飛び込んで来たのは言うまでもない、千沙斗である。

「なんだ、どうした?」

「あの女が…ひぐっ…あの、女が…えっく」

千沙斗の泣き顔がなんか演技っぽいのは置いといてこのままでは先に進めないので、話をまとめると、

どうやら、優香を自分の部屋に入れたのはいいのだが、優香と少し言い争い(笑)になったらしく、それで敗走してここまで来たのだそう。

「どうせ、お前からなんか言ったんだろ?なら一概にも篠原が悪いとは言えんだろ」

誠司はあくまで諭す様に言った。

すると、世の中の物事の起こるタイミングは素晴らしいもので、

「そうよ、千沙斗さん。全く、あなたから言い出したのに、それでちょっと言い返されただけでそんなになるなんて」

と言いつつも優香の目は千沙斗のそんな様子を楽しんでいるように見受けられる。

おい、こいつどんだけ黒い性格してるんだよ…。と、誠司は思った。

そろそろ、誠司の敵にまわしたくない奴リストに加える事を考えないとな、とも思った。

「まあ、いい。それよりも、時間が時間だ。夕飯を用意しないとな」

誠司が話題を反らすようにそう言った。

「なら、私が作るわ。あくまで頼んで泊まらせてもらってるんだし」

と、優香が、もしかしたらこの日一番気の利いた事かも知れない事を言った。

ここで千沙斗が何か呟いたようだが、それは誰も聞こえていなかった。

 

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