ここでペースを落とすわけにはいかない。
俺が大鯨を見つけたのは島の隅にある岩場だった。岩に腰掛け、ぼんやりと海を見ている。
「あれ?大鯨さんどうしたでち?」
「何か悩み事?イムヤが相談に乗るわよ」
海中から現れたのは二隻の潜水艦、伊168と伊58だった。たぶん輸送任務からの帰りだろう。
「べ……別になんでもないです」
「悩みはいった方がいいわよ」
「そうでち。放っておくといいように使われるだけでち」
ゴーヤが言うと説得力がある。主にオリョクルとかデコイとか。
「そうですか……。実は、提督から改造を勧められたんです」
「改造?いいじゃない」
「ずるいでちゴーヤ達は改造レベルが高いからまだまだでち」
「そうなんですけど……私、空母になりたくないんです」
ここだ。俺は更に注意して盗み聞く。感じは悪いがあの時の提督からはただならないものを感じた。
「その……アレを積んでしまったので」
「アレって、もしかして桜花のことでち?」
「桜花?」
桜花。日本軍がかつて使っていた特攻兵器だったはずだ。
「桜花は特攻兵器でち」
「特攻って特攻のための兵器があったって言うの?」
「ゴーヤも人の事は言えないでち。ゴーヤも回天っていう特攻兵器を使ったでち」
まあ戦果はあげなかったけどと付け加え苦い表情をするゴーヤ。
「私が運んだ桜花のせいで誰かが死んだ……。そう思うととても悲しいんです。恥ずかしいんです。情けないんです」
大鯨が泣きながら続ける。
「なにより……平気でそんなものを運んでいた自分が……とても怖いんです」
大鯨は涙を拭って立ち上がる。
「こんな話されても仕方がないですよね。すみません。もういきます」
「待って大鯨さん」
立ち去ろうとする大鯨の腕をイムヤが掴む。
「大鯨さん……それなら私のせいね。私がミッドウェーでうまく連絡できていれば空母も足りて、大鯨さんも空母にならずに済んだかもしれないわ」
「そんな……そんなのイムヤさんのせいじゃないです」
「それと同じことよ!」
イムヤが大鯨を指差す。
「物事すべていろんな原因が絡まって出来てるのよ。それを全部自分のせいにするのは間違っているわ」
「でも、私が原因になったことは間違いないんです」
「それなら今度は通常兵器で戦果を挙げるでち。それが特攻兵器を使った艦の贖罪になるとゴーヤは思うでち」
ゴーヤは生前に回天を使わずに重巡洋艦を撃沈させている。通常の魚雷で敵を仕留めるのが潜水艦としての矜持なのだろう。
「それは今からでも遅くないでち。ゴーヤは打った回天の百倍の数を通常魚雷で沈めるのが目標でち」
ゴーヤが胸を張りながら宣言する。
「ゴーヤさんは強いんですね」
「当然でち。潜水艦なんて強くなくちゃやってられないでち。でも艦娘はみんな強いはずでち」
「みんなですか……私も……」
大鯨は再び歩き始めた。俺は急いで隠れる。
「ありがとうございます。少し元気が出ました」
*
同時刻 補給経路奪還作戦海域
「江草隊、発艦!」
第二艦隊旗艦、蒼龍から多数の艦爆が飛び立つ。他の空母から発艦した艦爆と合流し、敵の空母へ向かうが多くは敵の丸い艦戦に落とされ、更に二隻の軽巡ツ級によって数が減らされる。
「金剛、こちらの航空支援は期待しないでください」
「そんなもの、最初から期待してないデース。皆さん、最初の目標はル級デース」
旗艦金剛が率いる第一艦隊の戦艦、比叡、扶桑、山城の砲撃がflagshipの戦艦ル級を呑み込み一瞬で轟沈させる。
「第二次攻撃隊、発艦!」
第二艦隊の蒼龍、瑞鶴、葛城から再び艦爆が発艦し、敵の艦戦をすり抜けて重巡ネ級を撃破する。
お互いに別の形で火力に特化された二艦隊は同じ敵艦隊の別の艦を黙々と倒して行く。連携を必要としない彼女達はある意味最高のパートナーといえる。それは互いの提督の仲が悪いことを覗けばであるが。
「シュリョクカンタイ……ヤットツレタワネ」
「次の目標は空母棲鬼デース。全砲門、Fire!!」
第一艦隊の砲撃が空母棲鬼に向かう。しかし海中から出現した巨大な腕が砲撃を阻んだ。
「What!?」
腕に続き二つの丸い頭部が浮き上がり、それを従える一本角の女性が現れる。
「ヤクニタタヌ……イマイマシイ……ガラクタドモメ!!」
「全艦に通達、戦艦水鬼の出現を確認。最優先攻撃目標とする」
「蒼龍、作戦目標の空母棲鬼はどうするんデスカ?」
「水鬼級を放っておくわけにはいきません」
「Shit!とんだダイソンデス」
第一、第二艦隊が戦艦水鬼に攻撃を集中させる。
「アソンデアゲナサイ。ワタシハ『アイアントゥーム』ノセイアツニムカウ」
「ナキサケンデ……シズンデイケ!」
戦艦水鬼は空母棲鬼には答えずに砲撃を続ける。空母棲鬼は二隻のツ級を連れて海域を離れていった。
文才足りないです。勉強しなきゃ。