近所の瑞雲「それ終わる前にイベント始まってるだろ」
「なるほど。事情はわかりました。大方予想どうりです」
俺は提督室で岩場で見聞きしたことを報告した。
「大方?どういうことだ?」
「こっちの話です。この後の事は大鯨さんの好きにしてもらって大丈夫です」
提督の考えていることは分からない。彼女にとって重用なのは改造するかではなくその理由だという。
「冷たいな」
「そんなつもりは無いのですが……。胸部装甲が増加されるのならば願ったり叶ったりですし。私が彼女に言うことも……ん?」
提督の言葉を遮るようにノックが鳴る。
「何?大淀?いいわよ」
何故ノックだけで解る。
「提督、本部より緊急の連絡です」
提督室の扉を開き、大量の資料を抱えた大淀が入室する。よっぽど慌てているのか眼鏡がずり落ちかけているが本人は気にしていない。いや、気にする余裕がない。
「補給経路を封鎖中の空母棲鬼がこの鎮守府に向かっています」
「向こうも気付いた……?友軍の艦隊はどうしました?」
「補給経路上に出現した戦艦水鬼と戦闘状態です。支援は不可能との返答が……」
空母棲鬼。大量の新型艦載機を操る空母タイプの深海棲艦である。
「これは不味いんじゃないか?しかしなぜこんな辺境へ?敵艦隊は何のために攻めてくるのだ?」
「…………ともかく全員を提督室に集めて下さい」
数瞬の沈黙の後、提督は命令した。
*
「現在、空母棲鬼の率いる艦隊が鎮守府に接近中です。我々は航空戦と砲撃戦にて敵艦隊を殲滅します」
鎮守府の全戦力を集めての作戦会議。これはこの鎮守府が稼働して初めてのことである。
「提督、空母棲鬼相手に航空戦を挑むのは無謀ではないですか?」
そう言って立ち上がったのは赤城だ。慎重な作戦行動を心掛ける彼女らしい意見だ。
「俺も同感だ。強力な機動部隊が相手なら水雷戦隊の夜戦で決めるべきだろ?」
天龍も同意見のようだ。最も彼女の場合は夜戦がしたいだけのような気がするが。
「それは危険です。情報によれば空母棲鬼は夜間空襲を行うことが分かっています」
確かに空母棲鬼は夜戦でも攻撃に参加してくる。
「更に敵には軽巡洋艦の存在も確認されています。夜戦で仕留めきれなかった場合空母棲鬼より手痛い反撃を受けることになります」
「でもよぉ、それじゃあ昼間っから行っても変わんねえじゃねえか」
「いいえ、今回の航空戦は敵攻撃隊を無力化するために行うのです。よって空母は艦上戦闘機による防衛に専念し巡洋艦による砲撃で空母を倒します」
なるほど。つまり戦闘機は目に写る敵機を落とすだけで良くなる。役割分担をはっきりさせることで強敵に打ち勝とうというわけか。
「それでは作戦メンバーを発表します」
*
今作戦では空母と航空火力艦は航空戦力の運用が役目となった。赤城、天城は零戦を、俺、最上、鈴谷、熊野は爆装していない瑞雲を使う。雲龍は偵察のため、別行動をとっていた。
『偵察隊、敵艦載機の発艦を確認』
「了解、偵察隊は撤退してください。航空支援隊は発艦を開始してください」
「「「「了解」」」」
赤城の号令に合わせてそれぞれが艦載機を発艦させる。特にカタパルト発艦の瑞雲は展開が早く、雲に隠れて見えなくなっていた。
天候は理想的。強力な敵機を相手に真っ向から勝負を挑むのは分が悪い。雲に隠れて奇襲を行うのだ。
精神を集中させ、瑞雲と感覚を共有する。雲間から僅かに見える海や空。機体を揺らし、時には逆さになって敵を探す。そして……
『見つけた。一時の方向に敵攻撃隊を確認。突撃する』
ちらりと見える海に白い球がいくつも飛んでいるのが見えた。ゲームではどれが艦戦でどれが艦爆なのかよくわからなかった球形の艦載機達だが日向になった今は感覚で解る。狙いは艦爆と艦攻。上からの奇襲。これも理想的だ。
『瑞雲の力を思い知れ!』
瑞雲が敵機に向かって急降下し、機銃を撃つ。敵はこちらの接近に気付けなかったためかなり混乱している様だった。
『慢心しましたね、空母棲鬼!』
そこへ零戦が襲いかかる。小回りのきく零戦を前に敵の艦爆や艦攻が次々と落とされていった。
*
結局敵攻撃隊はすべての艦爆、艦攻を失い、撤退していった。青葉達も攻撃を行っているようだ。
瑞雲に帰還するように命じ感覚共有を解く。
「これで、後は青葉さん達が空母棲鬼を倒してくれれば作戦は終了ですね」
「昼の戦いに加えて夜戦を行えば十分に殲滅可能だろう」
そう言っているうちに航空機が帰ってくる。
「それでは……艦載機を回収後撤収……」
『赤城さん、緊急事態です』
艦載機の回収を行おうとしたとたんに青葉から通信が入る。
『空母棲鬼が損傷に構わず進撃中です。中破させましたが追い付けません!』
青葉の話によると空母棲鬼は僚艦を盾にしながら一直線に鎮守府へ向かっているらしい。
「見えましたわ!」
熊野の指差す方を見ると黒煙をあげながら接近する空母棲鬼が見えた。
「くっ……航空火力艦は砲戦を開始!」
航空巡洋艦たちに指示を出し、俺も砲撃を開始する。多数の砲弾が突き刺さり、空母棲鬼が大破するが速度は下がらない。
「アトスコシ……アトスコシデ……」
空母棲鬼の向かう先には赤城が立っている。
「赤城、回避しろ!」
俺が叫んでも赤城は動かない。
「問題ありません」
赤城が前方へ手をかざす。現れたのは三門の20.3cm砲だった。
「撃ち方、初め!」
「モウ……オソイ」
赤城の砲撃が突き刺さり、空母棲鬼の艤装が完全に砕け、急速に沈んで行く。
「今度こそ、終わりです」
赤城は反転すると鎮守府へ向かう。
「カッタト……オモッテイルノカ……カワイイナア……」
やりたかったこと
赤城に砲撃戦をさせる