憑依日向と瑞雲鎮守府   作:8号機

26 / 37
作者「ついにクライマックス!俺の中二病が悪化した」
近所の瑞雲「あー痛い痛い」


桜花の龍12―守る―

「ふう、これで全部か」

 

戦闘は終了した。現在は艦載機の収容作業中である。着水した瑞雲はすべて釣り上げた。

 

「日向、こっちも終わったよ」

 

「あたしが一番たくさん釣ったんだからね!」

 

白露、時雨から残りの瑞雲を受けとる。

 

「ありがとう。お陰で早く撤収できそうだ」

 

「次も任せて!」

 

白露の頭を撫でると嬉しそうに答える。

 

「日向さんと航空巡洋艦の皆さんは先に戻っていて下さい」

 

赤城、天城は艦載機の収容にもう少し時間がかかるようだ。俺も普段使わない、本来なら入らない量の瑞雲を捌いたため、少し疲れている。

 

「わかった。白露、時雨、後はたのんだぞ」

 

白露型の二隻に赤城達の護衛を頼み、俺達は鎮守府に帰投した。

 

 

*

 

 

「ふう、やはりこれくらいが丁度いいな」

 

今の装備は35.6cm連装砲二つに12.7cm連装高角砲、そして瑞雲だ。確かに瑞雲は好きだが日向は航空火力艦だ。瑞雲だけ積んでいればいいものでは無いのだ。

 

「さて、そろそろ休むか」

 

工廠を出て鎮守府の廊下を歩く。その際中、青い髪と白いセーラー服が目に入り、咄嗟に廊下の曲がり角に隠れる。

 

「あれは……大鯨と雲龍か?」

 

なぜ隠れたのかは俺にも分からない。密かに調査していたことを後ろめたく感じているのかもしれない。

 

「……桜花のこと?……覚えているわ。……あれの爆発は痛かった……嫌いだわ」

 

「そ……そうじゃなくて……アレは……」

 

「……あぁ。特攻兵器を運んだことをどう思うか……ね?」

 

「はい」

 

大鯨はやはりあの事を気にしていたのか。確かに雲龍は桜花の輸送任務を行い、その際中に沈んでしまったのだ。

 

「たしかに……あまりいい気分じゃ無かったわ。でも、今は余り気にしてないわ。……提督は流星改をくれる見たいだし」

 

「そんなにあっさりですか?」

 

大鯨が思い詰めているのとは反対に雲龍はほとんど気にしていない様である。

 

「……ごめんなさい。私が運んだ桜花は全て沈んでしまったから。……使われなかったことはすぐに解るの」

 

「そう……ですか……すみません。こんな話をして」

 

大鯨は目に見えてがっかりした顔をする。輸送中に沈んだ雲龍と輸送を終えた大鯨では意識が違うらしい。

 

「……でも私も桜花を積んだことは同じ。……相談があるんでしょ……」

 

「雲龍さん……私、どうしたら良いか……分からないんです」

 

大鯨が話始める。

 

「この鎮守府に来てから……夢を見たんです。昔の……夢を」

 

「夢?私も見るわ」

 

「それで……桜花のことを思い出して……私が、人を特攻に……私があの時に……沈んでいれば……」

 

大鯨の涙声が廊下に響く。俺も、日向も大鯨の気持ちは分からない。特攻兵器を積んでしまった龍鳳と航空機を積めなかった日向とでは状況が違いすぎる。

 

「そんなことを言わないで。……それじゃああの人達も浮かばれないわ」

 

「じゃあ……私は……どうすれば」

 

大鯨が雲龍の胸に顔を埋める。雲龍はいつもの、何を考えているのか分からない表情のまま抱き締め返した。

 

「私の……手伝いをしてくれると……うれしい」

 

「雲龍さんの?」

 

「特攻は良くない……でも、決死で敵を倒そうとする人の桜花を沈めてしまったのは……心残り。私は……守りたい」

 

無表情な雲龍の目はどこか遠くを見ている様な気がした。

 

「守る……?」

 

「これは……生まれ変わった後に聞いた話だけど……。桜花を運んだ一式陸攻は……敵の攻撃ですぐに落ちてしまった。私は……どんな攻撃機や爆撃機も守れる様になりたい。発艦した艦載機が全て戻ってほしい」

 

それは、空母としては当たり前の願いではないか。しかし俺も敵機との交戦の後に全機を帰って来させたことは無かった。彼女達も俺もどこかで諦めているのかもしれない。

 

「もし、空母になるなら……ね。桜花を守れたあなたなら……」

 

「雲龍さん……私は……」

 

大鯨の言葉は突然鳴り響いたサイレンにかき消された。

 

 

*

 

 

同時刻 作戦海域

 

「天城さんも、着艦が終わったのなら先に帰ってもいいですよ」

 

搭載数の多い赤城は収容にも時間がかかる。

 

「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます」

 

天城が加速し、鎮守府へ向かう。

 

「白露さん、時雨さん。天城の護衛をお願いします」

 

「良いのかい?赤城一人になってしまうよ」

 

「私は多少の砲撃戦能力がありますから。彼女についてあげてください」

 

時雨が赤城の護衛から外れる。

 

「時雨ー!遅いよ。護衛も私が一番!」

 

「待ってよ白露」

 

時雨を見送った後、最後の零戦が着艦した。零戦は着艦後矢に変形する。

 

「これで全部か……」

 

「ソウヨ。ノコリハワタシガ……オトシタワ」

 

赤城が振り返る。

 

「空母棲鬼……」

 

手足の鎧や艤装はひび割れ、砕け、内部から赤い光が漏れている。しかし溢れる威圧感はむしろ増している。

 

「セントウゴトハイエ……センリヨクヲブンサンサセルトハ……慢心シタワネ、赤城サン」

 

「私の名前を……」

 

「オボエテ……イルワ。モウイチド、シズメテアゲル」

 

赤城の手に矢は残っているが着艦直後、燃料の補給も行っていない状態だ。それでも赤城は躊躇なくその矢をつがえる。

 

「ヒノカタマリトナッテ……シズンデシマエ!」

 

赤城の矢と球形の艦載機がすれ違った。

 

 

*

 

 

『空母棲鬼が浮上、再び攻撃を開始したもようです。全ての戦闘艦は出撃してください』

 

大淀の放送が響く。

 

「日向、出撃準備完了」

 

整備も丁度終わっている。タイミングだけは良かった。

 

「雲龍、準備完了」

 

「うわぁっ!……雲龍か。驚かせないでくれ」

 

後ろを見るといつの間にか雲龍が立っていた。

 

「……見てたでしょ」

 

ばれていたのか……

 

「……瑞雲がはみ出ていた」

 

「本当か!?」

 

急いで格納庫を確認する。異常は無い。

 

「……冗談。本当は袖が見えてた」

 

「真顔で冗談はやめてくれ」

 

やはり、彼女が何を考えているのか分からない。

 

「あの娘は大丈夫よ。私よりも強いから」

 

「そうか」

 

どうも見透かされているようで気にくわない。

 

「急ぐぞ。制空権がとられているかもしれない」

 

「……わかった。零戦は積んでる」

 

こちらの航空戦力は損耗が激しい。本当はもう一隻くらい空母が欲しいが贅沢は言ってられない。

 

 

*

 

 

同時刻 工廠

 

工廠の扉が大きな音を立てて開かれる。

 

「うわっ、びっくりした……。大鯨さん」

 

その音に明石が振り返るとそこには肩で息をする大鯨がいた。

 

「はぁっ……はぁっ……。明石さん、お願いが……」

 

「どうしたんですか?そんなに……」

 

「私を……!空母に改造してください!」

 

明石の言葉を遮る様に大鯨が叫ぶ。

 

「え……?いいんですか?あんなに嫌がってたのに」

 

「いいんです。もう大丈夫です。それより急がないとみんなが……」

 

大鯨は工廠の中まで入ると早口でまくし立てた。

 

「わ……わかりました。でも提督に報告しないといけませんし、設計図も取りに行かなきゃ……」

 

「その必要はありません。設計図もここに」

 

大鯨の後ろから提督が入室する。

 

「提督!?」

 

提督が明石に設計図を渡す。

 

「このページにしたがって改造を」

 

「わかりました。では、大鯨さんついてきてください」

 

「はい。あの、提督……ありがとうございました」

 

大鯨は振り返り、提督にお辞儀をした。

 

「私、何もしてませんよ」

 

提督がいたずらっぽく笑う。

 

「いいえ、皆さんは私にとっても良くしてくれました。日向さんもずっと見守ってくれましたし……」

 

大鯨が嬉しそうに笑う。

 

「今度は私が皆さんを守りますから」

 

 

*

 

 

「赤城!大丈夫か!?」

 

俺が戦場に着いたとき、すでに赤城は大破していた。さらにいつの間にか敵にも護衛が出現している。

 

「油断しました……護衛まで復活、強化されるとは……」

 

敵には空母棲鬼……いや空母棲姫が一隻、ツ級eliteが二隻、イ級後期型が三隻。

こちらには青葉と天龍が率いる攻撃隊が戻って来ているが空母棲姫一隻に戦況を持って行かれた状態だ。

 

「フフ……フフフ。鎧袖一触ネ……。デモ……慢心ハシナイ……」

 

天城の飛行隊に雲龍から発艦した零戦が合流する。しかし空母棲姫の艦載機とツ級の苛烈な対空砲火の前に数を減らしつつあった。

 

「村雨、五月雨。赤城を待避させてくれ」

 

「いいんですか?二隻も減ったら対空が……」

 

「大丈夫だ五月雨。空襲の回避は得意分野だ。村雨、後はたのんだ」

 

赤城を二人に託し、空母棲姫に向かう。

 

「大物ヲ狙ッテイクカ……」

 

球形の爆撃機が殺到する。だがこれくらいの爆撃を回避出来ないようでは伊勢型航空戦艦の名が廃る。

 

「甘いな……」

 

上空には急降下する爆撃機が見える。俺は面舵を切った。

 

 

*

 

 

同時刻 工廠 改修ドック

 

紅色のセーラー服の上に桜色の衣がゆっくりと被せられる。さらにその上から胸当て、矢筒、飛行甲板の肩当てが取り付けられ、最後に日の丸印の鉢巻きが巻かれた。

 

「大鯨さん……いいえ、龍鳳さん。改造が終わりました」

 

龍鳳が目を開く。赤い瞳は大鯨の頃と比べ物にならないくらいに燃えている。

 

「明石さん、ありがとうございます。では、私も出撃じす」

 

「待って下さい、あなたに手伝って欲しいことがあります」

 

工廠を出ようとする龍鳳に提督が呼び掛ける。その後ろには大量の資材が置いてある。

 

「本日の任務は終わりましたが……開発を続行します。戦況を打開するために強力な艦上戦闘機が必要です。手伝ってくれますか?」

 

 

*

 

 

「デカイクセニ……ヨクウゴクナ……」

 

大量の爆撃機が迫る。赤城によると、空母は中破すると艦載機の操作に集中出来なくなり、動きが単調になってしまうらしい。天城や雲龍に攻撃が行かない様に俺が艦載機をひきつける。

 

「最上、今だ!」

 

最上が合図にあわせて主砲を放つ。砲弾はツ級に直撃し、ツ級は浮力を維持出来ず沈んで行く。

 

「これで最後だ、空母棲姫!」

 

敵は残り一隻。しかしこちらも防空を担当する駆逐艦の多くが待避する艦娘の護衛に着き、残ったのは対空力の無い睦月型が数隻のみのため、戦力比はあまり変わっていない。

 

「最後ノ一艦ニナッテモ……叩イテ見セル」

 

そしてこちらの戦闘機は減る一方である。ついに防空網に穴が開き、敵の攻撃機が天城に迫る。

 

「しまった……間に合わない!」

 

攻撃機が魚雷を切り離し上昇する。

 

 

*

 

 

「やらせません!」

 

上昇を始めた攻撃機が新しく来た戦闘機編隊に打ち落とされる。さらに別の戦闘機隊の機銃によって魚雷も撃ち抜かれた。

 

「あれは……大鯨?違う……あの桜色は……」

 

軽空母龍鳳だ。

 

「ワタシノ……フクシュウノ……ジャマヲスルナ!」

 

爆撃機の大群が龍鳳に迫る。

 

「やあぁぁぁぁ!」

 

龍鳳は船体を思い切り傾けて爆撃を回避する。手に持っていた矢が海に落ちるが、直ぐに矢筒から新しい矢を取りだし、発艦させる。

 

「日向さん!爆装した瑞雲は?」

 

「三機いるが……」

 

「直ぐに出して下さい。護衛します!」

 

龍鳳の言う通りに瑞雲を発艦させる。直ぐに龍鳳の戦闘機が護衛につき、空母棲姫に向かう。

 

「シチメンチョウドモメ……オチロ!」

 

「精鋭達です!侮らないで!」

 

龍鳳の戦闘機隊が敵戦闘機を蹴散らし、瑞雲に近づけさせない。

 

「瑞雲、爆撃開始!」

 

瑞雲の急降下爆撃が直撃する。

 

「飛行甲板ニ被弾……ソンナ……バカナ」

 

敵艦載機の動きが一気に単調になり、零戦に落とされ始める。

 

「ワタシノ……フクシュウガ……オマエタチノ……フクシュウニ……ヤブレタノカ」

 

「復讐何かじゃありません!」

 

龍鳳が答える。

 

「復讐何かじゃありません……守るためです」

 

「マモル……タメ……」

 

球形の艦載機達が力を失い、海へ落ちて行く。

 

「ダレモ……ウランデ……イナイノカ……?」

 

空母棲姫が周りを見渡す。既にお互いの攻撃は終わっていた。

 

「オマエハ……アノトキノ……」

 

空母棲姫の目線は菊月に向けられる。

 

「オマエモ……ワタシヲ……ウランデイナイノカ……?」

 

「ああ。やはりヨークタウンか……。そうだな……、むしろよく私を沈められたと思っているよ……」

 

菊月が空母棲姫の前に立つ。

 

「菊月……コンドハ……アナタガ……」

 

「わかった。さよなら……ヨークタウン」

 

菊月から魚雷が発射され、空母棲姫の艤装が完全に崩れ落ちる。

 

「シズカナ……キモチニ……そうか、だから私は……」

 

空母棲姫が今度こそ海の底へ沈む。彼女の魂が深海棲艦になることはもう無いだろう。

 

 

*

 

 

「赤城、何を見ているんだ?」

 

戦闘の翌日、島の端で赤城は戦闘のあった海域を眺めていた。

 

「日向さん、私は龍鳳さんが眩しいです」

 

「どう言うことだ?」

 

赤城が振り返る。

 

「私はミッドウェーで私を沈めた機動部隊に復讐することばかりを考えてました。でも彼女は違った。守るために戦う……私が忘れていたことを彼女は真っ直ぐに行いました」

 

「別に……今からでも遅くはない。この鎮守府を守るために力を貸してくれ、赤城」

 

赤城が頷く。

 

「戻ろう、赤城。君を呼びに来たんだ。一緒に工廠に来てくれ」

 

「工廠?新しい空母ができたんですか?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

赤城を連れて工廠へ向かう。

 

「あ、赤城さん!探しましたよ。ほら、赤城さんに挨拶してください」

 

明石が工廠から出てくる。その後ろから一人の空母が出てきた。

 

「お久しぶりです赤城さん」

 

強い風が吹いた。

 

ロングヘアーとサイドテールが揺れた。

 

 

 

次回―海原の鷹―




と言うわけで「桜花の龍」は終了です。

帝国海軍並みに目的のはっきりしない行き当たりばったりなストーリーてすみませんでした。もはや誰が主役か分からないという……

空母棲姫はミッドウェーで沈んだ全ての空母の怨念という設定です。(というキャラがぶれぶれの言い訳)

あ……まだ話は続きます。いい話が書けるように精進します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。