悪くないけど被りそうだな
あのあと神通を捕まえ、それを好機と見て攻撃を再開した駆逐艦達を航空戦艦パンチで黙らせたあと、神通と駆逐艦を隔離することに成功した。
「で、一体何があってあんな喧嘩をしていたんだ?」
そして今、駆逐艦の四人の事情聴取中である。目の前にはしおらしい顔をした四人がいる。
「その前に、迷惑をおかけしてすみませんでした」
「「「すみませんでした」」」
不知火に続いて三人が頭を下げる。
「謝るなら私ではなく神通にしてくれ」
頭を下げたままの彼女達に言ったが……
「それはいや」
「あり得ないわ」
「いやよ」
「いやです」
口を揃えて否定した。旧式の駆逐艦よりも大人っぽく見える彼女達だが中身はそんなに変わらないものらしい。
「まあ、話を戻すが……」
つまり何故喧嘩したかということだ。水雷戦隊が喧嘩となれば大問題だ。出撃の停止すらも考えられる。
「不知火達の見解では神通の課す訓練は安全性を度外視しており危険かつ非効率的です」
とうとう呼び捨てにしている。冷静な不知火がここまで怒るのも珍しい。
「訓練で沈みそうになるのよ。冗談じゃないわ」
さらに霞の言葉に三人が頷く。たしか史実でも二水戦は危険な訓練を繰り返し、事故を起こしている。強さと華々しさの陰に隠れた闇と言えるかもしれない。
「だが……それは昔もそうだったのではないか?」
「それは……昔とは趣が違っているのです」
不知火が否定する。
「そう……昔は、条件は厳しかったけど……雷撃戦の基本の延長線だった」
「でも最近は特攻の練習でもしてるんじゃないかってぐらい過激で無謀な戦法を繰り返すのよ」
「まるで沈むのを承知でやってるとしか思えないわ」
彼女達が昔、どんな訓練を続けてきたかは知らない。しかしその彼女達がおかしいというなら調べる必要がある。
*
「で、何があったか説明してもらえるか?」
そして次は神通への事情聴取である。
「はい、訓練の内容について口論になって気が付いたら……」
「取っ組み合いになっていたということか」
水雷戦隊の艦娘たちは気が荒い娘も多い。普段大人しくても戦闘になると豹変することもある。神通もその手合いだ。
「しかし、彼女達は訓練の厳しさよりも内容が良くないと言っていたぞ。何か心当たりはあるか?」
「別に……日向さんには関係ないじゃないですか」
神通は俺から目を逸らしながら言った。明らかに何か言いたくないことがある。
「彼女達は沈むことが前提のようと聞かされたが……」
「…………」
神通は答えない。
「沈んででも倒したい敵がいるのか?」
「別に……そういうわけでは……」
否定するべきところは否定するようだ。つまり、何か明確な意志がある。
「沈みたいのか」
「違います……」
「なら、格好良く沈みたいのか?」
「…………」
神通の沈黙。嘘がつけないのか、否定したくないのか。どちらにせよこれが過激な訓練の原因と考えていいだろう。
原因はわかった。そして、やるべきことも。
「わかった。一度水雷戦隊同士で演習をやってもらう。そこで訓練の成果を見せてくれ」
なんか艦娘の内面を想像するのすごく楽しいんですよね。