憑依日向と瑞雲鎮守府   作:8号機

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作者「あれ?なんか長いぞ?」
近所の瑞雲「今日は神通の沈没日じゃないか」
作者「あー、だからやる気でたのか」


海原の鷹6―闇を切り裂く― Ver.1.1

戦艦棲姫の出現。偵察に出ていた秋津洲よりもたらされた情報だ。

 

「敵艦隊は大きく分けて二つ。戦艦棲姫率いる水上打撃部隊と軽巡棲鬼率いる水雷戦隊です」

 

「厄介だな」

 

大淀が指示棒で指し示した写真を見る。高い雷装値をほこる軽巡棲鬼と高火力高耐久の戦艦棲姫。どちらも余り相手にしたくない相手だ。

 

「このままの速度だと日没後に当鎮守府に到達します。敵艦隊の狙いは水雷戦隊による夜戦の後、水上打撃部隊で止めを刺すことにあると推測されます」

 

空母の使えない夜に強力な水雷戦隊で突撃。単純かつ効果的な戦法だ。

 

「ならば、大人しく待つことはないな。此方から出向いていって水雷戦隊を撃滅しよう」

 

「こちらもその方向で作戦を考えています。それで作戦メンバーですが」

 

「それは私が言います、大淀」

 

それまで黙って座っていた提督が立ち上がった。

 

「こちらも二艦隊で迎撃に当たります。主力の第一艦隊は旗艦日向、榛名、龍鳳、隼鷹、白露、時雨。そして水雷戦隊の第二艦隊の編成は……」

 

提督はそこで言葉を切った。

 

「提督、第二艦隊はどうするのだ?」

 

提督は周りの艦娘を見渡した後に言った。

 

「日向さんが決めてください」

 

 

 

 

期限は一時間後。それまでに編成を決めなければいけない。工廠にて格納庫の瑞雲を整備士ながら考える。

 

「今作戦の水雷戦隊は本隊の護衛も兼ねる。ここは第一班に来てもらうか……いや、相手は軽巡棲鬼か」

 

工廠のドアがノックされる。

 

「すみません、日向さんはここに?」

 

「ああ。居るぞ」

 

入って来たのは神通。頭には緑色の鉢金を巻いている。記憶が正しければこれは神通改二が身に付けているものだったと思うが。彼女が改二になった様には見えない。

 

「日向さん、お願いがあります」

 

神通が俺の前で正座する。

 

「今回の作戦、私たち第二班を出撃させて下さい」

 

神通がゆっくりと頭を下げる。

 

「神通、顔を上げてくれ」

 

顔を上げた神通の目は覚悟に満ちて強い光を放っている。目の前に居るのは自分よりも背丈の低い少女。だが、巨大な軍艦を見上げているような錯覚。

 

「神通、その鉢金は?」

 

「これですか?旗艦が戦闘不能になると困るからって提督がくださったんです」

 

「そうか。無くすなよ」

 

瑞雲の整備を終えて立ち上がる。

 

「何をしている?出撃するぞ。駆逐艦達にも準備するように伝えてくれ」

 

俺はそう言い残し、返事を待たずに工廠を出た。今日の一部始終は全て提督に伝えてある。なにが俺が決めろだ。選択肢などないではないか。

 

 

 

 

「日向さん、本当に良かったんですか?彼女達、今朝喧嘩していたと聞いたんですけど」

 

「まあ、大丈夫だと思ったから来て貰ったのだが……」

 

横を航行中の榛名に答える。

 

「そう……ですよね」

 

「そう心配することではない。彼女達も艦娘、そう弱くはない。何なら今度演習でもしてみるか?」

 

「それは……いえ、お願いします」

 

真面目な榛名らしい反応だ。だが演習は積極的に行うべきかもしれない。艦娘の問題を知るのに役立ちそうだ。

 

「おーい、日向そろそろ艦載機出そうぜ」

 

「もう、隼鷹さん。その台詞三回目ですよ」

 

「いいじゃん。それにそろそろ敵が攻撃範囲内にいる頃だし」

 

確かにそうだ。隼鷹がアウトレンジ好むので何度も止めたがそろそろ頃合いだ。

 

「わかった。隼鷹、龍鳳、艦載機を出してくれ」

 

「「了解」」

 

龍鳳の放った矢が炎を放ち、編隊を組んだ関西弁に変形する。同時に紫の炎を纏った式神が一機づつの艦載機になる。

 

「私もいくか」

 

左腕の後部甲板が回転。カタパルトを前方に向け、瑞雲を連続で射出する。

 

「隼鷹、龍鳳、時雨は待機。榛名、白露は私に続いてくれ」

 

さて、神通は作戦通りにいっているだろうか。

俺は瑞雲の一編隊を水雷戦隊の戦闘海域に向かわせた。

 

 

 

 

『今です!面舵!』

 

見つけた。二つの水雷戦隊。一つは神通が率いる水雷戦隊第二班。もう一つは軽巡棲鬼を旗艦とした敵水雷戦隊。

 

「あいつ……この間のヤツか……」

 

軽巡棲鬼の服は真ん中から裂け、団子のようになっていた髪型は崩れている。

 

『ニゲル……?ソノテイドカ……!』

 

軽巡棲鬼は進路を変えて離れて行く神通を追う。それが罠とは知らずに。

 

『日向さん、予定ポイントに到達、敵艦隊は三分後に通過予定です』

 

「了解、左舷、砲撃用意!」

 

進路を変更した神通達の航路は俺の射程内に入る用になっている。つまり追いかけてくる軽巡棲鬼は……

 

『こちら神通、敵艦隊がポイントに到達』

 

「此方も『視認』した」

 

俺たちのアウトレンジ砲撃を受けることになる!

 

「主砲、斉射!」

 

俺と榛名の砲撃が軽巡棲鬼を襲う。

 

「ナニ……ワナダト……イウノカ……?」

 

軽巡棲鬼が憎悪の籠った眼差しをこちらに向ける。だが、もう遅い。

 

「射角修正、第二射、てぇっ!」

 

第二射が軽巡棲鬼に突き刺さり、大破させ、さらに数隻の敵艦にダメージを与える。

 

「進路反転、敵艦隊に突撃します」

 

神通達が止めを指すべく突撃、魚雷の発射体制に入る。

 

「サセヌ……サセヌワ!」

 

軽巡棲鬼が生き残った砲を神通に向ける。

 

「くっ……!」

 

神通は回避の為に進路を変更、しかし軽巡棲鬼の砲から弾が発射される事はなく、暴発してアームが千切れとんだ。

 

「魚雷発射!」

 

神通は回避の為に雷撃の機会を逃した。しかし駆逐艦達はそうではない。発射された魚雷は吸い込まれるように敵艦に次々に着弾、爆発する。

 

「ススムガ……イイサ。その、先には……」

 

捨て台詞を残して軽巡棲鬼が轟沈する。

わかっている。俺達の目標は戦艦棲姫の撃破だ。先に進まなければならない。

 

「よし、これより戦艦棲姫を攻撃する。隼鷹、首尾はどうだ?」

 

『こちら隼鷹。戦艦棲姫だけどあれヤバイなぁ~。全然通じなかったよ』

 

「すまない、急いでるんだ。簡潔に結果を伝えてくれ」

 

なんで隼鷹に連絡したんだろう俺。

 

『駆逐ハ級後期型二隻、軽巡ト級一隻撃沈、軽巡ト級一隻中破、重巡ネ級一隻小破だ。戦艦棲姫にはほとんどダメージが無かったな』

 

「いや、十分だ。第一艦隊、日向、榛名、白露は戦闘を継続する。隼鷹、龍鳳、時雨は潜水艦に警戒しながら鎮守府へ帰還せよ。隼鷹、瑞雲の回収もたのんだ」

 

『えぇーっ、もう帰るのかよ……』

 

通信を切る。

もうじき日が沈む。そうなれば第二ラウンドだ。

 

 

 

 

日が暮れればなにもない海など全くの暗闇になる。

その暗闇を破るものが空に撃ち上げられる。照明弾だ。同時に神通から通信が入る。

 

『敵艦隊を発見、我、夜戦に突入す』

 

通信が終わり、砲撃の炎が戦艦棲姫を鮮やかに写し出す。

 

「こちらも確認した。突入前に合図をしろ」

 

『了解』

 

「主砲斉射!」

 

俺と榛名は邪魔になる重巡と軽巡の撃破に専念する。中破していたト級は一瞬で沈み、ネ級もすぐに砲弾の雨にさらされ、撃沈された。

 

「イマイマシイ……カンムスドモメ……シズミナサイ!」

 

戦艦棲姫からの反撃はまるで見当外れの方向へ飛んでいく。

 

『水雷戦隊、突撃します』

 

神通の合図で砲撃を中止する。

 

「ドコニイッタ……?」

 

敵を探す戦艦棲姫を映したのを最後に照明弾が消える。しかし闇が視界を支配したのは一瞬だった。

 

「アアアァァァッ!」

 

轟音と共に戦艦棲姫が燃え上がる。一瞬オレンジの服と長い髪が炎に照らし出され、直ぐに闇に消えていった。

 

 

 

 

「ダメナノネ……」

 

戦艦棲姫は激しく炎上しながらゆっくりと沈んで行く。

 

「終わりましたね、日向さん」

 

「ああ」

 

榛名が息をつく。彼女も神通も姫級の深海棲艦との戦闘は初めてだ。今日はゆっくり休ませたい。

 

「こちら日向、戦艦棲姫を撃破した。全艦、鎮守府に……」

 

「日向さん!危ない!」

 

「なっ……」

 

榛名に突き飛ばされる。一瞬遅れて到達した徹甲弾が榛名の艤装を貫く。

 

「榛名!?」

 

「大丈夫です。ですが、スクリューが破損しました。自力での航行は……」

 

不可能というわけか……。

 

「イノチビロイ……シタナ……カンムス……」

 

炎上する戦艦棲姫の背後、今までなにも無かった海に突然表れた陸地、その上に立っていたのは……

 

「ハクチセイキ……ナニヲ……」

 

戦艦棲姫が再び浮上、いや戦艦棲姫の下から陸地がせりあがって来ている。

 

「キサマヲ……カンタンニ……シズマセルモノカ。シズムクライナラ……ワタシノモトデ……ハタライテ……モラウ」

 

戦艦棲姫の周りに輸送ワ級が集まり、消火を開始する。

 

「サテ、カンムスドモ。キサマタチハ……ドウスル?ワタシト……ヤルノカ?」

 

ガシャンと音をたてて泊地棲姫の砲に徹甲弾が装填される。

 

『日向さん、無事ですか?突如出現した泊地はこちらでも確認できています』

 

「神通か……敵は泊地棲姫と複数のワ級だ。泊地棲姫の夜戦火力は高くないが……」

 

『日向さん、一度撤退しましょう』

 

神通は迷わずそう言った。

 

『水雷戦隊は地上目標へ満足なダメージを与えられません。他に敵が潜伏しているとも限りません。撤退を進言します』

 

「わかった。君からそんな事が聞けるとは思わなかった」

 

『や、やめてください』

 

「冗談だ。これで安心して水雷戦隊を任せられる。全艦に通達、鎮守府へ撤退する。潜水艦への警戒は怠るな」

 

『了解』

 

通信が切れる。

 

「ツマリ……カエルノダナ?」

 

「まぁ、そうなるな。今回は撤退する。だが、次に会ったら……」

 

「モチロン……ニガサナイ。キサマラヲ……」

 

「君を……」

 

『ミナゾコヘ……シズメル』

 

「完全に破壊する」

 

 

 

 

数日後

 

海の真ん中に出来た泊地は一晩で姿を消した。

 

「恐らく、戦艦棲姫の修理が終わったので撤退したのでしょう」

 

レポートを読み終えた提督は月刊雑誌を読みながらそう言った。

 

「なぜ、攻めて来なかったのだ。姫が二体、此方が負ける可能性も十分にあったはずだ」

 

「彼女、泊地棲姫は日向さんとの戦闘を避けた。慎重派ね。恐らく戦力を整えてまた来るわ」

 

提督はそこまで言うと雑誌をパタンと閉じた。

 

「日向さん、命令です。泊地棲姫との戦闘に備え、空母間の不和を解決してください」




作者の独断で泊地棲姫は陸上型にしました。泊地水鬼の下位互換的な。

軽巡棲鬼「たとえかませ役でも、軽巡棲鬼ちゃんの事は嫌いにならないでください!」
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