アーランドの冒険者   作:クー.

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最高の発明品

「よーし、いくぞ、ぷに」

「ぷに!」

 

 俺は今マークさんに作ってもらった木製の自転車に乗っていた。

 マークさん曰く試運転だそうだ。

 

「スピードキングは俺のものだ!」

 

 俺は立ちこぎをして、加速をつけた。

 車輪が木製なので、そこまでのスピードは出ないが、鍛えられた脚力により自転車はスピードを上げていった。

 

「サラマンダーよりはやーい!」

「ぷに!」

 

 どうやらぷにもご満悦のようだ。

 

「よーし。さらに加速だ。立ちこぎシステムオン!」

 

 

 

 ベキッ!

 

 

 

「ぐべら!」

 

 俺がペダルに力を入れた途端にバランスが崩れ、横に倒れてしまった。

 ぷにはちゃっかり離脱していた。

 

 

「い、いったい何があったんだ……」

 

 

「どうやら、課題は強度にあるようだね」

 

 俺がよろよろと立ち上がると、マークさんが自転車をいじっていた。

 

「……強度?」

「ああ、君の脚力が想定をはるかに上回っていてね。見事に折れてしまったよ」

 

 見てみると、ペダルの部分が根元からバキッと折れていた。

 

「それにまさか立ってこぐとは思っていなかったからね」

「ああ、なるほど」

 

 マークさんがいくら天才とはいえ、使用法は使用者しだいになるもんな。

 

「まぁ、本当に作れるとは思ってなかったんでかまわないですよ」

 

 一時とはいえ昔の風を感じられて、俺は満足だ。

 

「? 何を言ってるんだい?」

「へ?」

「欠点がわかったんだ。そこを改良しない科学者は科学者とは呼べないよ」

「ってことは?」

「次の試作品ができたら、また君に頼むとするよ」

「おお! 流石は異能の天才科学者プロフェッサー・マクブラインですよ!」

「なに、科学者として当然のことさ。完成したら君の宿屋まで呼びに行くとするよ」

 

 そう言うと、自転車を持ってマークさんは立ち去って行った。

 

「あの人ならいつか本当にロボットを作れるかもな……」

「ぷに?」

 

 

 

 一週間後

 

 

「木製とは違うのだよ木製とは!」

 

 見事に鉄製となった自転車に乗って俺は風となっていた。

 

 

「ただ、車輪だけ木製っていうのは……」

 

 正直言ってダサイ。

 強度は上がったが、スピード自体は変わらないのだ。

 

「……よっと」

 

 俺は自転車を止めて地面に降りた。

 

「結構、いいんじゃないか?」

「いや、まだだ。君の表情を見るにこれはもっとスピードを出せるはずだ」

「まぁ、確かにそうだけど……流石に無理だって」

 

 改良できる点なんてタイヤぐらいしかない。

 流石にこの世界にゴムがあるとは思えないしな。

 

 

「やる前にあきらめては発展はありえないよ。そのために次の試作品のために君に材料を取ってきてほしんだ」

「まぁ、ここまで来たら付き合うさ」

「それでは、弾む石を集めてきてくれたまえよ」

「あの不思議鉱物か、何の役に立つんだ?」

 

あ れは言うなら異常に固いスーパーボールみたいなもんだ。

 

「そこを言ってはつまらないじゃないか」

「わかったよ……採ったら、持ってくからな」

「ああ、早めに頼むよ」

 

 

 

 一週間後

 

 

 

「……よく考えたら、トトリちゃんたちもう着いてんじゃね?」

「ぷに」

 

 

 

 

 そのまた一週間後

 

 

 

 

「……すばらしい」

「……ぷに」

 

 今俺が乗っている自転車のタイヤは木製なのにまるで空気入りタイヤの様だ。

 それにタイヤも黒く塗装されて大分かっこいい。

 

「異能の天才科学者プロフェッサー・マクブライン! あんたやっぱり天才だ!」

「すばらしい速度だ! 流石は僕の発明品!」

 

 俺は自転車から降りたって、マークさんを絶賛した。

 

「でも、なんであの石でこんなに進化したんだ?」

「それはだね。あの石を加工して車輪の表面に塗装したのさ」

 

 それで現代のタイヤみたいになったってことか?

 ……マークさんはとんでもない物を作ってしまったのではなかろうか。

 

「本当にこれ貰っちゃっていいのか?」

「かまわないよ。設計図はあるし、何よりそういう約束だからね」

 

 第一印象は変な人だったのに、こんなに良い人だったとは。

 

「お礼のお礼ってわけじゃないが、必要なものがあったら俺に頼んでくれてかまわないぞ」

「ふむ。君は結構義理堅い人間のようだね。それでは遠慮せずに必要なものがあったら頼むとするよ」

 

 そして、俺たちは互いに握手を交わした。

 年は離れているがこの世界に来てから初めて男の友人ができた。

 

 

 何気に嬉しかったりする。


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