アーランドの冒険者   作:クー.

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タックル・チェンジ・ダイブ

「第一回! ぷに強化会議ー!」

「ぷにー!」

「わ~」

 

 俺はロロナさんのアトリエに来ていた。

 そして木製のテーブルに座っておやつを食べていた。

 

「こないだぷにはモンスターにやられてしまったわけだ。というわけで強化しよう!」

「ぷにに!」

「はあ」

「トトリちゃん、もっと気合を入れるんだ。これは俺にとっての死活問題なんだよ」

 

 ぷにが強くならなければ、俺が戦うことになってしまう。

 夏塩蹴りを使いまくるとかマジ勘弁。

 

「でも、シロちゃんってどうやったら強くなるんですか?」

「……食事?」

 

 俺自身も半信半疑な所があります。

 

「え?ご飯食べると強くなるんですか?」

「いや、うん。簡単に言うとモンスターをパクッと……ね」

 

 若干トトリちゃんのぷにへのイメージが悪くなった気がする。

 

「え!?も、モンスターを食べちゃうんですか!?」

「ぷに」

「そう、あれは、ある日の出来事……」

 

 回想スタート。

 トトリちゃんにゴーストに遭遇した時のことやシャドーボールについて簡単に話した。

 

 

「……というわけさ」

「シロちゃんってすごい子だったんですね」

 

 トトリちゃんがぽかんと口を開けて驚いていた。

 まぁ、普通のぷに系モンスターとは違うわな。

 

「あれ? それじゃあ、話し合いしなくてもよかったんじゃないですか?」

「……ちょっとギルド行ってくる!」

 

 俺は立ち上がって、アトリエの扉に向かった。

 決して、言うまで思いつかなかった訳じゃないので悪しからず。

 

「行くぞ、ぷに」

「ぷに」

「えっと、がんばってください?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 といわけで、ギルドの依頼受付。

 

「フィリーちゃん、食べたら強くなれそうなモンスターの討伐依頼ない?」

「えっと……ごめんなさい」

 

 謝られてしまった。人見知りのフィリーちゃんには高度な要求だったか。

 

「うんじゃ、強いモンスターの依頼で」

「えっと、それなら……」

 

 フィリーちゃんが依頼書をパラパラと捲っている。

 

「これならアカネさんにちょうどいいと思いますよ」

「グリフォン討伐依頼? ――!?」

 

 俺のトラウマの一ページ、『グリフォンに殺されかけた』が蘇ってしまった。

 いや、あの日は偶々ぷにを連れて行かなかっただけだし……。

 

「ぷに、大丈夫か?」

「ぷに! ぷに!」

 

 どうやら自信満々のご様子だ。

 

「よし、それじゃそれを受けるぜ」

「はい、それじゃあ少し待っててください」

 

 フィリーちゃんがいつもの様に依頼の手続きを行う。

 しかしグリフォンか、まぁぷにが強くなるためだ。仕方ない。

 

 

 

 

 

「んで、着いた訳だ」

「ぷにに」

 

 アーランドから北に一日程歩いた街道、ここにグリフォンさんは出没するらしい。

 

「グリフォンってうまいのか?」

「ぷに~?」

「なんか筋っぽそうじゃないか?」

「ぷに」

 

 適当に話をしつつグリフォンを探す。

 まぁ、ぷにが前衛、俺がサポートで戦えば問題はないはずだ。

 ゴースト手袋も付けたし、今回ばかりは真面目な戦闘になるかもな。

 

 

「キエェェェー!」

 

 大きな雄たけびと共に、突然俺たちに影が落ちた。

 

「いらっしゃったか」

「ぷに」

 

 グリフォンが俺たちの目の前、街道の石畳に舞い降りた。

 

 

「先手必勝! ぷに、タックル!」

「ぷに!」

 

 俺の指示でぷにがグリフォンに向かって、真っ直ぐ矢の様に体当たりをしかけた。

 同時に俺も奴に向かって駈け出す。

 

「キエェー!」

 

 見事顔面に命中。奴は大きく仰け反った。

 

「そこだ!」

 

 そして、俺は上がった奴の上体が落ちるのに合わせてアッパーを打ち込んだ。

 再び奴の体が浮き上がった。

 

「ぷにに!」

「ナイスアシスト!」

 

 後ろからぷにが、浮き上がった奴に向かって、シャドーボールを放った。

 それは奴の顔面に直撃し、体勢を立て直すことを許さなかった。

 

「まだまだ! か~か~と、落とし!」

 

 足を振り上げ、ふらついている奴の後頭部に踵落としをくらわせた。

 

 

「――!?」

「キェェェー!」

 

 

 奴はダメージを受けたそぶりを見せずに、俺に向かって咆哮してきた。

 

「チッ!」

 

 俺は後ろに飛んで、距離を取った。

 

「手袋のある拳じゃないと効かないか……」

「ぷにに」

 

 手袋は俺の筋力を向上させてはくれるが、脚への恩恵は薄かったようだ。

 

「――! 来るぞ!」

「ぷに!」

 

 奴は後ろに小さく羽ばたいて、加速するための距離を取っていた。

 

「キエェェェー!」

 

「んなっ!」

 

 その速度はぷにの比ではなく、避けるために身構えた瞬間には、もう目の前に迫っていた。

 

「くっ!」

 

 咄嗟に俺は目を瞑り、腕をクロスして衝撃に備えた。

 

 

「…………」

 

 だがいつまで経っても衝撃は訪れなかった。

 

「……ん?」

 

 モシャモシャと何かを咀嚼するような音が聞こえてきた。

 

「……まさか」

 

 俺は、恐る恐る目を見開いた。

 そこには、まぁ予想通りの光景があった。

 

 

「……うまいよな」

「ぷに!」

 

 あの体積はどこに行ったのか、目の前ではぷにがうまそうにグリフォンを食べていた。

 

「一口か?」

「ぷに!」

 

 一口らしいです。

 

「巨大化でもしたのか?」

「ぷに~?」

 

 わからないそうです。

 何故、俺は目を瞑っていたのだろうか。

 

 

「……人が珍しくガチバトルしてたってのに」

 

 所詮は真面目な戦闘なんて俺には似合わないってことか。

 

「んで?新たなる力的なものは手に入ったか?」

「ぷに!」

 

 ぷにがゴクンとおそらく飲み込んだのだろう、そしてどうやら力は手に入ったらしい。

 

「でも、見た目変わってないぞ」

「ぷにに!」

 

 ぷにが突然、後ろに大きく跳んだ。

 例えるなら、さきほどのグリフォンが距離を取ったように……。

 

「おい、待てやめろ」

「ぷに!!」

 

 見たことはないが、弾丸の様な早さとはこの音を言うのかなって思った。

 しかも小さい分、圧力が大きい訳だよね……。

 

 

「ぐはっ!」

 

 威力10割増し(当社比)

 

「きょう……か……せい、こう」

 

 バタリと俺は地面に倒れこんだ。

 

 

 

《ぷにのツッコミのレベルが上がった》

 


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