アーランドの冒険者   作:クー.

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お店番

 

「どうしてこうなった」

 

 俺とぷにカウンターの中、他の人カウンターの外。

 俺とぷに店員、他の人お客さん。

 

「どうしてこうなった」

 

 確か俺は先にアーランドに行こうと思って、準備のためにパメラ屋に立ち寄って……。

 

『少しの間だけ店番お願いできるかしら~?』

 

「……! 魅了《チャーム》か!」

「ぷに~」

「あんな美人さんに上目遣いで頼まれたらねぇ?」

「ぷにー」

 

 ぷにがさっきから俺の事を冷たい目で見てくる……。

 

 

「これくださーい」

「はいな」

 

 村の少女Aの対応をしつつパメラさんの帰りを待つ俺であった。

 

 

 

…………

……

 

 

「遅い……」

「ぷに~」

 

 あれから数時間、もう店にお客さんはいない、そしてパメラさんもいない。

 

「客も来なくて暇だしさ~」

「ぷにー」

 

 さっき来た客なんて、俺の事見て舌打ちして帰りやがったし……気持ちは分かるが。

 

 俺がダラダラしていると不意に扉が開いた。

 

「失礼する」

 

「ぷに、すげえ目つき悪い人来た! 強盗だぜ強盗!」

「ぷに!」

「…………っ」

 

 極めて平静を装ってるけど、青筋が見えてますぜ。

 

「で、ステルクさん、こんな村になんか用ですか? 強盗ですか?」

「違う、この村に錬金術師がいると聞いたから来ただけだ」

 

 スパンとね、一言で俺のネタを切り捨てられてしまった。

 一瞬の切り返しにしてはうまいと思ったのは俺だけだったか。

 

「ちょっとクールすぎませんか?」

「君が騒がしすぎるだけだろう……第一なぜ店員などやってるんだ?」

「パメラさんに押しつけられたのら~」

 

 だが後悔はない、むしろ充実感すらある。

 

「なるほど、もしやと思って来てみれば、やはり彼女の店だったか」

「お知り合いですか?」

「まあ、多少顔を知っているぐらいだがな」

 

 意外すぎる、この人に女性の知り合いがいるとは……。

 

「ステルクさんって女性に疎そうですよね」

「…………」

 

 無言で睨まれた、やっぱり強盗だよこの人。

 

「ま、まあ、おふざけはこの辺にして、何かお求めですか?」

「できるのならば、最初から真面目にやりたまえ」

「性分なんです、すいませんね」

「まったく、まあいい、一つ聞きたいことがある。この村の錬金術師のアトリエと言うのはどこにあるのだろうか?」

 

 ……トトリちゃんとステルクさんって何か交友関係あったのか?

 俺が知ってるのだと、初めてアーランドに行った時に助けてもらったぐらいか。

 まあ、ステルクさんは悪い人じゃないし教えちゃってもいいか。

 

「店出てから右に向かったとこにある坂を上った所にありますよ」

「そうか、感謝する。では失礼」

 

 そう言って、店の外へと出て行った。

 

「……冷やかしかいな」

「ぷに~」

 

 

 

…………

……

 

 

「うわ! マジで先輩が店番やってる!?」

「帰れ」

 

 俺はお客様に対してすごく良い笑顔で対応してやった。

 

 俺が来たときのクーデリアさんの気持ちが少しわかった気がする。

 

「ひでえよ先輩、実は欲しいものがあってさ」

「なんだ本当に客だったのか、んで、なんだ?」

「必殺技!」

「帰れ、必殺技の価値プレイスレス。要は商品じゃないんだよ」

 

 俺はシッシと手を振って帰ることを促した。

 

「先輩には必殺技が欲しいって気持ちわかんないのかよ?」

「…………」

 

 漫画やゲームの技を練習しまくった俺に対して言うのか、若造め。

 

「いいだろう! インスタントに使える必殺技を教えてやる!」

「おお! 流石、先輩!」

「説明は一言だ! 剣を回りながら振れ! 以上!」

「え!? そ、それだけ?」

「ああ、これさえ身につければ終盤まで使えるさ」

 

 某緑の勇者はこの技だけで十数年はやってるんだ。後輩君もこれで勇者の仲間入りだな。

 

「この技の名前は、回転切りだ!」

「回転切り!?」

「そうだ、著作権うんぬん言われたら、ありふれた名前ですよで押し通せ!」

「? よくわかんねえけど、まあいいや!ありがとな先輩!」

 

 後輩君は早速練習してくるぜと言って外に出て行った。

 

「次の奴も冷やかしだったら、ぶん殴ってやろうか」

「ぷに~」

 

 

…………

……

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

 モブ男Aが現れた

 

「…………」

 

 モブ男Aは うろうろと 商品を 見まわしている

 

「ありがとうございました~」

 

 モブ男Aは さっていった

 

 

「……今来た君が悪いのだよ」

 

 アカネは ぷにをかいほうした

 

「行くがよい!」

「ぷに!」

 

 ぷには アカネをこうげきした

 

 かいしんのいちげき!

 

 アカネはちからつきた

 

 

 

…………

……

 

 

「ちょっと、あんたサボってんじゃないわよ」

「……ハッ!」

 

 おれは めをさました

 

「いや、これはもういいから」

「何言ってんの?」

 

 目の前にはメルヴィアがいた、気絶してたとか……ぷにが最近手加減しなさ過ぎてきつい。

 

「いやこっちの話だ。で? 何のご用でしょうか?」

「冷やかしかしらね」

「帰れ」

 

 最初に冷やかし宣言したからって、許される訳じゃないぜ。

 

「俺の拳の餌食になってもらおうか」

「何かいったかしら?」

 

 すごい笑顔で凶器(拳)を振り上げてきたよ、この人。

 

「冷やかしから強盗にクラスチェンジかよ、この野郎」

「今謝ったら許してあげないこともないわよ」

 

 ちっ、流石にアレで殴られたら俺の頭がどうにかなりそうだし、謝っておくか。

 

「すまんね、君」

「ふん!」

「ぐぬ!」

 

 頭をグーって……野蛮すぎるでしょう。

 

「謝ったのに!」

「あれを謝罪って言うなら、『ごめんなさい』はいらないわよ」

「メルヴィアにはあれで十分かな? って」

「もう一発欲しいのかしら?」

 

 握りしめた拳がまた上がってきた。本当の強盗はこっちだったか。

 

「ごめんなさい」

「よろしい」

 

 くそっ! 拳を振り上げたまま交渉ってフェアじゃないだろ!

 あれか、核武装国と非核武装国の優劣の差ってことか……。

 

「そろそろ帰っていただけないでしょうか」

「まあ、あんた弄るのにも飽きたし……それじゃあねシロちゃん」

「ぷに!」

 

 メルヴィアはぷにだけに挨拶して帰ってった。

 これは酷い。

 

 

 

…………

……

 

 

 

「ただいま~、ごめんなさい、待たせちゃったかしら?」

 

 パメラさんが扉から入ってきた。

 

「い、いえいえ! 全然待ってませんよ!」

「ぷに~」

 

 うっせぇ! とぷにを目で制しておく。

 

「今日は本当にありがとうね~、おかげで用事も済ませれたわ~」

 

 パメラさんは俺に、この俺に! 私に! 満面の笑みを浮かべてきてくれたのだ。

 

「ハッハッハ、この程度で良ければいつだって」

「アカネ君はやさしいわね~」

「いやいや、そんなことないですよ」

 

 ぷに、聞いたか? 俺優しいってよ。

 

「ぷに~」

「シロちゃんもありがとね~」

「ぷにー!」

「…………ちっ」

 

 人は一瞬にして嫉妬の憎悪に落ちれるものなんですね。

 

「それじゃあ、この辺で失礼しますね」

「あら、もう行っちゃうの? せっかくだからお茶でもどうかしら~?」

 

 はい

 いいえ←

 

「折角ですが、用事があるんで」

「あらそうなの、残念ね~、それじゃあ今度何かお礼するから、また来て頂戴ね~」

「はい~」

 

 俺はそう言って店の外に出た。

 

 

 

「彼女の笑顔はまるで太陽の様で、されど近づきすぎれば焼かれる運命《さだめ》」

「ぷに~」

 

 はっきりとわかった。いまこいつ「気持ち悪りい」って言ったわ。

 

 俺はうなだれつつも馬車の近くにいたペーターに近づいた。

 

 

「ペーター……」

「お!? な、なんだよ?」

 

 前のおどs……前がんばりすぎたせいか、ペーターはキョドっていた。

 

「偶にはヘタレもいいよね」

「は? お前何言って……」

「でも、俺は……俺は!高潔なヘタレでありたい!」

「お前、頭大丈夫か?」

「さらばだ!ヘタレの王よ!」

「へ、ヘタレの王……」

 

 

 俺はヘタレな訳じゃない、一歩を踏み出せないだけだ

 

「ぷに~」

 

 今、ぷにが何を言ったかは想像に任せるとしよう。

 


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