アーランドの冒険者   作:クー.

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茶色いウニにはご注意を

「ぷに、依頼受けてきたぞ」

「ぷに!」

 

 ギルドを発った後、街を出てぷにと合流した。

 

「んじゃ、出発するか。俺は地図担当するから、ぷには食料担当な」

「ぷに」

 

 地図は頼んだらクーデリアさんに貸してもらえた。一緒にウエストポーチを貸してくれたあたりやっぱ良い人なのだろう。

 ちなみに、この地図は未完成らしくこの地図を埋めていくのも冒険者の仕事らしい。

 

 

「ぷに、食えそうなものあったら教えてくれよ」

「ぷに!」

「ぷには本当にぷにぷに言うよな」

「ぷにに」

 

 あまりにもぷにがぷにぷに言うせいで、俺が数秒で考えた名前があまり意味をなしてないな。

 白玉よりもぷにの方が語感的にも合ってる気がする。

 

「クーデリアさんにもぷにって紹介したしな~」

「ぷに~」

「でも、この世界って他にもたくさんぷにみたいなのがいそうだし、紛らわしくなるよな」

 

 依頼を見たときに青ぷに討伐とかあったし。

 

「まぁ、そんときはそんときで白玉に戻すかね」

「ぷに」

 

 おそらくは了承の意だろう。

 

「んじゃ、出発!」

「ぷに!ぷに!」

 

 

 

 

 

 

 街を出てから一日経ったわけだが。

 

「今冷静になって見渡すと俺が元いた場所って森じゃなくて林だったんだな」

 

 林と森の区別がいまいちつかない、現代っ子なのである。

 元ボーイスカウト? 自然全ての知識を得てると思わないでもらいたい。

 

「しかしぷには本当、食い物見つけるのうまいよな」

「ぷに」

 

 基本的に木の実とかを食べて最近は食いつないでいる。ぷには意外と優秀だ。

 

「まぁ、ちゃかちゃか進みますか」

 

 おそらく、明日の昼ごろには着くはずだ。

 

 

 

 

 

 

 俺はうに林に到着して確信した。

 

「やっぱ、栗じゃねーか!!」

 

 茶色いでトゲがいくつも飛び出したそれはどこから見ても栗だ。

 何が『うに』だよ。どうみても全部栗じゃないか。

 

「はぁ、ぱぱっと拾って帰るとするか」

 

 見た感じかなり大量に落ちているし、すぐに終わるだろう。

 

 

「ぷに」

 

 

「? どうした、ぷに」

「ぷに?」

 

 ? あれ今後ろから聞こえたはずなのにぷには横にいる。

 

「…………」

 

 恐る恐る俺は振り返った。

 

 

「ぷに」

「ぷにに」

「ぷに!」

 

 

「…………は?」

 

 青が二匹と緑が一匹の色違いのぷにがいた。

 やたらと見た目がかわいいけど、こいつらもモンスターなんだよな。

 

「よーし、行け! ぷに!」

「ぷに!」

 

 俺の相棒の方のぷにが奴らに向かって体当たりした。

 

「「「ぷにっ!」」」

 

「…………」

 

 思わず目をこすってみてしまった。

 ぷにが同族なのに容赦ねえなとか、そういう話しではなく。

 

「ぷに、お前って本当は強いのか」

 

 こやつ一撃で三匹とも倒しおったよ。

 

「ぷに!」

「お、おう。流石だぜ、ぷに!」

 

 なんで最初俺こいつに喧嘩売ったんだろう……。

 敵が、弱すぎたという可能性もあるけど。

 

「俺は採取するから、モンスターは任せていいか?」

「ぷに、ぷに!」

 

 ……ぷにからまぶしいオーラが出てるように見えるぜ。

 

 

 

 

「うーに、うーに。僕は栗じゃなくてー、うになんだー」

 

 作詞作曲俺。タイトル自己暗示の歌。

 

「あぁ、手が痛い」

 

 歌に気を取られて、ついさっきうっかり手を刺してしまっていた。

 

「これを投げるような奴がいたら、かなりの外道だよな」

 

 この世界の栗もとい、うにはトゲが鋭いからさらに怖い。

 今度同じ依頼を受ける時は、せめて軍手ぐらいは持ってきたいな。

 

「おっ!川がある」

 

 どうやら向こうの方にも、うにが落ちてるようだ。

 ちゃんと丸太で橋もかかっている。

 

「んじゃ、渡りますかね」

 

 落ちても平気だろうが、風邪をひいたりしたら洒落にならんので慎重に渡っていく。

 

「ぷにっ!」

「ぐぼぁ!」

 

 いきなりぷにが俺の後ろからタックルをかましてきやがった。

 

「お、お前、は!い、いつから!体当たり系ヒロインにっ!なったんだ!」

 

 落ちそうなのを踏ん張ってバランスをとりつつも突っ込みを入れてしまう。

 

「ぷに!」

「付いてくるなら、普通に来てくれよ。頼むから」

 

 心臓に悪すぎるわ。

 

「とりあえず、渡っちまうぞ……あ」

 

 ツルっと、気を抜いたせいか滑ってしまった。

 川に落ちて周りに派手な音が飛び散った。

 

「がっぼ、ごぼぼ」

 

 意外と流れが速く焦りはしたものの、幸い川幅が狭いので陸地はすぐそこにあった。

 

「よっと!」

 

 俺は水の中から手を振り上げて、まっすぐ陸地にたたきつけた。

 

「――――!?」

 

 すると、突然に、とてもつもない、経験したことのない激痛が、俺の手を襲った。

 

「! がが、ごっぼ!?」

 

 あまりの痛みに水をかくことさえできない俺は、逆らうこともできずに流されていった。

 そして、沈みきる直前に俺はなんとか、手をたたきつけた所を見ることができたのだ。

 

 

 

 そこには悠然と構えているうにの姿があった……。

 


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