読んでくださってる極一部の方の為にも亀更新でも続けていきたいと思っております。
私の名前はナナリー・ヴィ・ブリタニア。
私の立場を簡単に述べるのならばお姫様だ。
ただし、元がつくけれども。
7年前、私とお兄様は本国ブリタニアから人質として日本に行く事になった。
もちろん拒否権などある筈も無く、お母様が殺され後ろ盾もアッシュフォードだけとなった私達にある価値など人質程度のものだったのだろう。
一応は皇子と皇女だ。
そんな、敵だらけの日本の生活でも、良かったと思える事が一つだけだけどあった。
枢木スザク
日本国首相、枢木ゲンブの一人息子。
お兄様とおなじくらい我が強く、最初はお兄様とはソリが合わずに殴り合いの喧嘩ーーいや一方的な蹂躙だった様な気もする。ホラ、お兄様って知能派でしょ?ーーなどをして周囲を困らせていた二人だけれども、二人とも一度仲良くななってしまえばばそこから親友と呼べる間柄になるのにはそう時間はかからなかった。
それ以降はブリタニア本国でのユフィ姉様やコーネリアお姉様と遊んだ時間に負けず劣らずな楽しい日々が続いた。
依然としてお兄様とスザクさんは口喧嘩ばかりだったけれども、お互いにとても楽しそうでーー楽しそうですね? と聞けば二人して同時に「楽しくなんかない!」と答えていたけれどもーー喧嘩するほど仲が良いとは日本の諺だっただろうか? 本当に仲の良い兄弟のようで微笑ましかった。
それでもそんな日常は長くも続かず神聖ブリタニア帝国は日本に宣戦布告。
私とお兄様は本国にとってはもう用済みだったのだろう。
生き残る為に必死で逃げた。
そして、お兄様は私をアッシュフォードまで逃す為に囮として本国の捜索隊の前に姿を表し、行方不明となってしまった。
アッシュフォードに匿われもう7年が経とうとしている。
もう、お兄様の事は諦めた方が良いのかもしれない。
でも、私は決めたんだ。
私の、私達の人生をメチャクチャにした世界に、国に、父に、復讐する事を。
これはお母様やお兄様の弔い合戦。
たとえこの身が朽ちようとも消して消えない傷をブリタニアに残してやる、そう決意した時だった。
不意に記憶が蘇ったのは。
枢木神社の近くの森、一人迷子になってしまいあても無く歩き回り、疲れ果てた時だった。
森の魔女に出会ったのは。
綺麗な緑色の髪をした琥珀色の瞳を持つその女性は私に言ったんだ。
ーーー力が欲しいか? 全てを塗り替え、取り戻す力が。
ーーーお前には素質がある、がまだ幼い。
ーーーだからいつか、王の力を振るう決意を、覚悟を固めた時、この力を受け入れるか、拒むかを決めろ。
ーーー私は器の大きい女なんだ。もう数百年待った。今更、十数年待つくらいなんて事はない。
ーーーただし、これだけは覚えておけ。
ーーー王の力はお前を孤独にする。
ーーー否応無くお前は一人、孤独の王道を歩む事になる。
ーーーその覚悟があるのならば、私はお前に力を与えよう。
ーーーいつかお前が私を✖︎✖︎✖︎くれるのならば、契約を結ぼう。
そうして、彼女は私の額に手を置きーーー気づけば私は枢木本家の布団の上で、お兄様やスザクさんが心配そうに此方を覗き込んでいた。
何故かはわからないが私の記憶は森の魔女と話した記憶だけがスッポリ抜けており、その時は足を滑らせて、2人が見つけてくれるまではずっと気絶していたものだと、周囲も私も思っていた。
ジャリッと私は瓦礫を踏み越え目の前に広がる惨状に目を背けず、むしろ焼き付ける様に見渡す。
クロヴィス兄様の放送を聞き、テロリストの動向を予測し弾き出した結論はテロリストはゲットーに逃げ帰るというもの。
気づけば私の足はゲットーへと向かっていた。
決意を決めた今、私はブリタニアのやり方をこの目で見てみたいとおもった。だがーー
絶え間なく響く銃声。一切の情け容赦なくブリタニア人は日本人達の命を刈り取っていく。命乞いも何もかもが無駄。日本人と分かれば殺される。硝煙の香りと鉄臭いアレの匂いが空気に溶け込み辺りに漂う。
思わず吐きそうになる。
コレが、ブリタニアのやり方か…。
こんな一方的な蹂躙で…民の心を掴めるものか。
このやり方を続けるのならばいつかブリタニアとその他の国での戦争が起こる。
だが、それでもブリタニアは勝つだろう。
あの国の軍事力は戦局を、戦略を容易く塗り替える。
あの男。シャルル・ジ・ブリタニアにはそんな迫力というか、覇気というか、そんなものを感じる。
足元を見ると、私は血だまりの中に立っていた。
建物の下敷きになった人々の血や撃ち殺された人々の血が流れ込んで来たのだろう。
数m離れた場所でミサイルが爆発し、瓦礫が、粉塵が、ズタズタに裂かれた死体が、撒き散らされた血液が宙を舞う。
だからこそ、私は決意する。この光景を見て、改めて決意が固まった。
ここの人々を助けよう、と。
ビシャリと私の左半身に血飛沫が降る。
先程のミサイルによる物だろう。
もう、我慢の限界だった。
再び湧き上がる謎の記憶。
左眼が熱い。眼の内側から燃え上がる様にナニカが溢れ出てくる。
熱が痛みに変わり、眼を開ける事すら難しくなった時。
私の精神はここでは無い、いや世界中の何処にでもあって何処にも無い、そんな場所へと飛ばされた。
ーー青く彩られたナニカの中を遡る様に登る感覚。
ーーモノクロの世界で、水平線から見えた太陽の光。
ーー噛み合う大きな二つの歯車。
ーー羽ばたく鳥の様な紋章が刻まれた石板。
ーー額に石板と同じ紋様が刻まれた何人もの巫女。
ーーいつの時代かもわからぬ兵士達。
ーー髑髏の形をとる爆煙。
ーー無数の人の怨嗟の叫び声。
そしてーーーーラグナレクの接続! 神話の、再びの始まり‼︎
ーー黄昏の神殿で両手を大きく広げ叫ぶ男の姿。
ーーそう、アイツは……‼︎
はっ! と眼を開くとそこは先程と何も変わら無い戦場だった。
違うのは私だけ。
左眼に確かな重み、禍々しい力を感じる。
ーーそうだ。
私は世界にも、周りの人間にも嘘をついていた。
生きているって嘘を。
この瞬間までは。
だがーー手に入れた。
世界に復讐する力を。
世界を壊す力を。
あの男を打倒する力を。
私はついにーー手に入れたのだ。
自然と唇の端が釣り上がる。
私の生はこの瞬間から始まった。
ーーーーだから…
私は血塗れの顔で暗く嗤った。
ナナリーちゃんが!
黒い!(笑)(笑)