偽ゲッターロボ レプリカ   作:オンドゥル大使

14 / 66
第二話「出撃指令! ゲッターロボ 7」

 三人の声が相乗しウイングを展開させたゲッター1がネフィリムへと特攻する。その速度はまさしく神速。ネフィリムが抵抗する前にゲッター1の放った拳がネフィリムの腹腔を捉えた。その一撃で空気が割れる。巨体のネフィリムが人のそうするように後ずさった。

 

「こんなもんじゃねぇぞ……。タツヒトと、他の亡霊共の恨みはな!」

 

 リョウマの声にゲッター1は顎に備え付けられた冷却炉から熱風を噴き出して左肩のウイングへと手を伸ばす。ウイングを形成していた皮膜が瞬時に消滅し、残ったのはウイングの骨の部分だった。掴んだウイングはそのまま武器となる。骨の部位は持ち手となり、根元の部分にはエネルギーの収束装置があった。その部分へと緑色のゲッター線が収束し斧の形状を成した。

 

「ゲッターエナジートマホーク!」

 

 ゲッター線の貯蔵量が示され五パーセントを使用しトマホークのエネルギーが顕現した。ゲッター1はトマホークを振り回し正眼に構える。ネフィリムが眼窩を赤く染めた。

 

『ビームが来るぞ!』

 

「しゃらくせぇんだよ!」

 

 リョウマはアームレイカーを引く。ゲッター1が両腕を振るい上げ、緑色の発振した刃を打ち下ろした。ビームが断ち切られ、赤い光線はゲッターの遥か後ろの雲を叩きつける。

 

 ネフィリムが硬直していた。直後、激震と共にその身体が両断される。衝撃波は樹海にも及び数キロ圏内が振るったトマホークの攻撃の余波を受けた。風圧がゲッター1の赤い身体を叩く。ネフィリムは甲高い断末魔を上げながら内側へと収縮する。

 

「放散爆発だ!」

 

 慌ててゲッター1を下がらせる。赤い放散爆発の規模は今まで知っていた霧型や実態型よりも広かった。だがそれを抑制するように緑色の光の檻が拡散する。結果として放散爆発の規模は最小限に抑えられた。リョウマは瞠目する。

 

『これも、ゲッターでネフィリムを倒す一つの要因だ。ゲッター線ならばネフィリムの放散爆発を極めて小さい規模に抑えられる』

 

 サオトメの言葉にゲッターの力を思い知る。振るったトマホークの刃が霧散し、ゲッター1はウイングとして左肩に収納する。骨格から蝙蝠のそれのような皮膜が形成され、ゲッターの飛行を安定させた。

 

「……タツヒト。借りは返したぜ」

 

 いや、これからだ、とリョウマは考える。ネフィリムとレプリカントの根絶。それこそがタツヒトの、ひいては今まで散っていった者達への手向けへとなると。

 

『よし、研究所に戻るぞ』

 

 サオトメの声は震えている。自分が予想したよりもゲッターの性能が高かったからかもしれない。それとも身体にがたが生じているのか。どちらにせよ、このまま研究所に戻るのは違いない。

 

「よし、ゲッター1のまま戻るぞ。飛行は出来るだけ安全運転で――」

 

 その言葉を遮ったのは突然の分離信号だった。それが走ると共にイーグル号、ジャガー号、ベアー号がそれぞれ独立機動する。リョウマはわけも分からず空域に投げ出された。イーグル号の機動を押さえ、樹海に墜落しないようにするのが精一杯だった。

 

「何が起こった!」

 

 考えつくよりも先に新たな信号が発信される。それは合体信号であった。まさか、とリョウマは感じる。自分は間違えてまたしてもゲッター1への合体信号など出したのだろうか、と。だが自分はどのボタンにも触れた形跡はない。アームレイカーもおかしな方向に触れている事もない。

 

「おい! ジジィか? 勝手にゲッターチェンジなんてするなって」

 

『違う……。ワシは何もしておらん』

 

 サオトメの声に、だったら誰が、と声を返しかけてその可能性に思い至った。しかしその時には既に全機が合体軌道に入っている。ジャガー号が機首を上げて先導しその次にベアー号、脚部にイーグル号の順番だった。

 

 リョウマはアームレイカーを必死に引いて抵抗しようとするも既に成された合体軌道は解けば逆に危うい。ベアー号がジャガー号へと接続する。寸胴なベアー号はそのままジャガー号の白い機体の上に覆い被さる形となり背面リュックサックの推進剤タンクを形作った。イーグル号はそのまま二機と接合し、両翼が畳み込まれて内部ウイングが変形し脚部を形成する。着地したその姿はゲッター1ではない。白を基調とし、赤い脚部のそれは簡素なアーム型の細腕を持っていた。ゲッター1とはシルエットも異なり、痩躯である。ロケット型の頭部から射る光の眼光が投げられている。

 

「ゲッター……。ゲッター2だと……」

 

 リョウマの声に呼応したようにゲッター2は駆け出した。リョウマはサオトメへと通信を繋ぐ。何が起こっているのかを明確にする必要があった。

 

「おい、ジジィ! これ、あのテロリストがやったのか?」

 

『……信じ難いがそうに違いない。ジン・ハヤトはワシが思っていたよりもゲッターとの適合率が高かったようだ。まさか一度の騎乗でゲットマシンの特性を理解し、ゲッター2への変形合体を遂げるとは』

 

 笑みの形に吊り上げたサオトメだったが額に汗の玉が浮いており限界なのが窺えた。ゲッター2は何を目指しているのか、とリョウマは進行方向を見やる。その先にはサオトメ研究所があった。

 

「まさか、研究所を襲おうってのか」

 

 自分の仲間がやられた仕返しか、とリョウマは感じたが直後に耳朶を打った通信の声にそうではないと思い知らされる。

 

『オレの、オレのおもちゃだ! オレの都合のいい、オレの暴力に耐えられるおもちゃが! こんな場所にあったなんて!』

 

 どうやらハヤトはゲッターの力に呑まれているようだ。それとも元々の凶暴性が発露したのか。リョウマはどちらにせよハヤトを止めねば研究所が無茶苦茶になる未来が見えた。

 

「……冗談じゃねぇぞ。これ以上、テロリストに好きにさせるかってんだ!」

 

『リョウマ……。コックピットハッチがある。そこまで行けるか?』

 

 サオトメの言葉にリョウマは目を見開く。

 

「馬鹿言ってんじゃねぇぞ、ジジィ! 単純に歩くだけでもどれだけの距離があると思ってんだ! それにイーグル号は一番下、脚部だぞ! そんな状態から頭部のジャガー号を止めるなんざ……。電流は? ヘルメットの電流はどうなった?」

 

『既に流しました……。ですが、ジン・ハヤトの脳波も脈拍も全く止まる様子はありません』

 

 ミチルの声に、そうだろうと感じている部分もある。ハヤトは自分と組み合ってもまだ余裕のある様子だった。そんな人間に電流など痛くも痒くもなかろう。

 

「どうするんだ! このままじゃ」

 

 その時、右腕のアームが動いた。細くなっているアームの先端から緑色のエネルギーを凝縮した武器が生成される。渦巻き、ちょうどドリルの形状を成した。

 

「ゲッターエナジードリル……。おいおい、武器までアクティブになっているのかよ。ミチル! そっちのシステムから武器管制システムに入れないのか!」

 

『やっています! ですがリアルタイムでこちらの動きが阻害されておりジャガー号は完全にスタンドアローンの状態です!』

 

 ミチルの悲鳴じみた声にハヤトがやっているのだ、という悪寒が走った。リアルタイムでシステムの書き換えをしつつゲッターを動かすなど正気の沙汰ではない。だがハヤトならば出来る。その確信がある。

 

『リョウマ……。もうお前がやるほか打つ手はないようだ』

 

 サオトメは必死で笑みを作っているが限界なのは見るも明らかだった。唇の端から血を滴らせておりこのままではサオトメも死んでしまう。

 

「おれがやるしか、ねぇってのか……」

 

 リョウマはコックピットハッチを開いた。脚部状態のイーグル号は常に脚を動かしており、細かい砂利や石が散弾のように飛んでくる。避けている暇はない。せめて頭部に当たってくれるな、と願うだけだった。リョウマは無理やりよじ登る。当然の事ながら稼動状態のゲッターをよじ登るなど通常は不可能だ。だがリョウマも振り落とされないように必死だった。ベアー号に収まったサオトメの助力は期待出来まい。ちょうど腹部に差し掛かったところでゲッターエナジードリルが撃ち出された。ドリルそのものを射出武器として用いたのである。緑色のドリルはバリヤーに突き刺さったかと思うとその皮膜を干渉して消し去った。

 

『バリヤー消滅!』の報が耳に届く。

 

『まさか、ゲッターエネルギーはバリヤーを霧散させる効果もあるとは』

 

 辛うじて意識を保っているサオトメの声にリョウマは急がねば、と機械の出っ張りに手をかける。ゲッター2はそうでなくとも凹凸の少ない機体だ。だから少ない出っ張りを利用するのには苦労と焦燥が滲んだ。もしハヤトに勘付かれれば自分はゲッター線の武装の前に消し炭になるだろう。

 

「……ふざけんな。まだ一回目の合体成功だぞ。メカニックの連中も労わっていないし、何よりも亡霊共は納得しめェ」

 

 いやサオトメ研究所の崩壊はむしろ亡霊が率先しているのかもしれない。そのような考えが浮かんだがリョウマは必死で振り落とされないようにジャガー号のコックピットへと至る。通常の飛行形態ならば有視界戦闘だが合体時には自動的にコックピットが移動する。なのでリョウマはわざわざゲッター2の首の後ろへと回った。首の裏にはコックピットのシステムパネルがある。パネルを開きパスコードを打ち込んだ。直後、蒸気を棚引かせてコックピットブロックが射出される。狂気の笑いを浮かべたハヤトが振り返ったのと、リョウマが突っ込んだのは同時だった。

 

「よう」

 

 拳と挨拶が同時に出る。リョウマの拳が背後の無防備なハヤトのヘルメットを叩き割った。ハヤトはそのままコックピットへと突っ伏す。リョウマはシステムへと手を伸ばした。推進剤の逆噴射とアームレイカーを押さえて脚部の稼動を止める。緊急停止ボタンを押して祈った。

 

「止まれェ!」

 

 ゲッター2がドリルを振り上げた形で静止する。そのドリルの切っ先がサオトメ研究所にかかる寸前であった。リョウマは呼吸を荒くする。通信がようやく繋がり、ミチルの声が響いた。

 

『と、止まった……』

 

 リョウマは伝い落ちる汗を拭いながらゲッターというマシンの恐ろしさを改めて思い知る。この機体は自分達人類の、完全なる味方でもなければ従属でもないのだという事を。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。