投獄されたハヤトの処遇についてはサオトメが一任する事になった。
だがサオトメ自身も内臓に相当なダメージを負っておりすぐに復帰する事は無理だという。研究所を襲ってきたゲッターの威容に恐れを成したのか、メカニックも研究員も初陣を飾った割には無口であった。黙々とゲッター2の分離作業をするメカニックとデータを取る研究員を横目に見ながらリョウマは確信を得る。
これだけは確かなのだというのは、ゲッターはネフィリムを倒せる。充分に対抗策となるのだ。リョウマは左手首につけた端末をさすった。
「タツヒト。てめぇの理想通りかは分からねぇ。それに亡霊共が許しちゃくれねぇのもある。だがな、ゲッターは勝てるぜ。ネフィリムと偽人類共に」
それだけあればいい。自分にはそれだけで。
瞼を上げると時刻が表示されていた。惑星の公転とその速度が依然変わっていない事を彼は悟る。
だがそれは同時にこの惑星が何一つ変わっていない事。自分の役目が何一つ代わり映えのない事を示していた。ため息をつくとコックピット内で白く変わった。どうやら空調が切れていたようだ。自分の眠っている間は出来るだけ機体を温存しておく。その判断に間違いはないのだ、と感じつつも凍死など真っ平御免だと設定を変えた。
「奴は、ノエル、地上はどうなった?」
システムの一つが浮かび上がり表示時刻からつい昨日の事であるのが分かった。カメラの捉えた動画は荒々しいがネフィリムが赤い機体によって両断されたのを映し出している。広がる緑色の光。ゲッター線の光だ。彼はそれを見据えて目を細める。
「生きていたのか」
彼は画面をさすってネフィリムを圧倒した赤い機体を睨む。肩の裏から蝙蝠のような翼を生やし、赤い鬼の威容を持つ機体。間違いない。あれは――。
「ゲッターロボだ」
時刻を合わせ彼は思う。こんなに早く、いやこんなに待って訪れたのか。
「ノエル。現在地を表示」
システムが復旧しコックピット内が光で満たされる。次々とバックアップデータと外周カメラが蘇ってゆき彼は今自分がどこにいるのかを自覚した。衛星軌道上に位置する人工衛星の一つに自分とこの機体は取り付いていた。
すっかり錆び付いたレバーを引くと機体が軋みを上げる。人工衛星の上に佇んでいたのは漆黒の鬼であった。身体中に赤い鉱石が付着しており粒子を発生させる。赤い輝きが灯った鬼からは生気とも知れないものが感じられた。眼窩が黄色く光り、生きているのだ、と示す。
「行こうか、ノエル。そろそろだろう」
漆黒の鬼の機体は眼下に広がる惑星を睨みつけた。