偽ゲッターロボ レプリカ   作:オンドゥル大使

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第五話「咎人の声 8」

 ムサシは真っ先にその気配に気付いていた。教会に入ってきた相手の足音の判別くらいはつく。

 

「誰だ? 俺は、この研究所の人間の足音は全て記憶している。侵入者だな」

 

 すぐさま判じたムサシは振り返らずに声だけ向ける。

 

「語らぬか?」

 

 飛び掛って来るプレッシャーの圧にムサシは拳で応じた。六分の一G殺法が弾ける。

 

「三の陣、月面割り!」

 

 ムサシの放った手刀が相手の頭部を断ち割った。その段階でムサシは驚愕に顔を塗り固める。

 

「俺、か……?」

 

 向かってきた相手の顔も図体もまさしく自分そのものであった。だがムサシはうろたえない。相手が敵であるというのはムサシの状況判断の神経が働いた。

 

「一の陣、大雪山、おろし!」

 

 即座に攻撃に転じられたのはムサシが自分以外を信じていないためである。現れた敵に狼狽する時間よりも攻撃に割くほうが適切だと感じたのだ。

 

 ムサシの放った投げによって頭頂部を割られたままの相手が不格好に教会を転がっていく。改めて顔を見やるとやはり自分のものであった。だが最早絶命しているらしい。

 

「……分からんな。何で俺の顔なんだ?」

 

 その時、懐に忍ばせておいた携行端末が鳴り響いた。ムサシは手に取って悪戦苦闘しながらようやく通話を繋ぐ。

 

「もしもし?」

 

『呑気だな、ムサシ。そちらにレプリカントが向かったと思うが』

 

 ハヤトの声である。ムサシは転がった遺体を蹴った。

 

「これか?」

 

『どうやらお前はオレ達の思っている以上に愚鈍らしい。もう殺したな?』

 

「悪かったな。殺してまずかったか?」

 

『いや、それでいい。相手は溶けているか?』

 

 ムサシは絶命したままの相手を観察する。

 

「溶けていないが」

 

『そうか。それはいいサンプルになる。ムサシ、お前は先に出払ったリョウマと合流しろ。このままでは』

 

 その言葉が途切れたのは轟音によってであった。通信障害かと思われるほどの破砕音にムサシは顔をしかめる。

 

「おい! 何があった?」

 

 それ以降、通信はなかった。だがムサシはハヤトの言葉通りの行動に出る事にした。

 

「ゲッターが、リョウマが出ているのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 通信をするような余裕ではないがムサシのサポートをせねばただ殺されるだけだろう。

 

 その考えからハヤトは通信を繋いだが既に一線交えた相手との戦闘で息が上がっていた。それを隠すのに精一杯で必要な事を伝えられたかどうかはわからない。ハヤトは視線を振り向ける。

 

「さて、お前だがレプリカント」

 

 視線の先にはこの隔壁内部に入ってきた自分の似姿のレプリカントがいる。しかし既に心臓を撃ち抜かれており辛うじて生きている状態であった。

 

「それは……」

 

「レプリカント処理の技術も上がっておるのでね」

 

 歩み出たサオトメが補足する。ハヤトは先刻このレプリカントを撃ち抜いた拳銃を掲げた。

 

「レプリカントの生体反応を察知して自動でホーミングする小型ミサイル。それを組み込んだ銃とは恐れ入ったぜ」

 

「研究所の技術だ」とサオトメは結ぶ。レプリカント程度ならば遅れを取る事もないだろう。

 

「悪いが、レプリカント。オレの顔真似までして入ってきた苦労は察するが無駄足だったようだな」

 

 もう一度、今度は頭蓋を割るために銃口を押し付けた。すると自分の姿を取ったレプリカントは肩を揺らして嗤い始めた。

 

「何が可笑しい?」

 

「この状況で、我々を出し抜いた、と思っているだろう?」

 

 自分の顔のレプリカントは口元に笑みを浮かべてハヤトを見つめる。

 

「それこそが、驕りだと言っている」

 

 その声の意味を判ずる前にサオトメが叫んだ。

 

「地下の階層のロックが次々に解除されているだと?」

 

 システム音声でミチルが声にする。

 

『間違いありません! 最終隔壁までリョウマさんの姿をしたレプリカントが、浸透して……』

 

 ハヤトはレプリカントへと屈み込んで尋ねた。

 

「まさか、囮か?」

 

「今頃気付いたのか」

 

 迷いなく引き金を引きハヤトはレプリカントを処理する。脳しょうを撒き散らしたレプリカントは間もなく溶け出した。

 

「博士、こいつらの真の目的は」

 

「プロトゲッターの奪取。リョウマを模したレプリカントの侵入を許すために他の二体が犠牲になったようだな」

 

 理解の早いサオトメはそれ以上に危機感に気付いているはずだ。

 

「だとすればこの場所にいるのも……」

 

 地獄の釜が開けばゲッター線に自分達は晒される事になる。ハヤトは駆け出していた。

 

「道連れは御免だ」

 

 隔壁が閉まりサオトメが後に続いた直後、腹腔に響き渡ったのは衝撃波であった。隔壁が閉まる間際確かに目にした。あれはゲッター線の塊だ。それがメインシャフトを突き抜けて放出したのである。ハヤトは通信が全て駄目になっている事に気づく。

 

「これでは、リョウマと連絡が取れない」

 

「リョウマは出ているのだろう。ムサシも、ああ伝えれば出ているに違いない」

 

 存外に事を俯瞰しているサオトメの冷静さにハヤトは胡乱な目を向ける。このプロトゲッター奪取作戦程度ならば既に想定済みだというように。

 

「ハヤト。ゲッターに向かえ」

 

「簡単に言ってくれる」

 

 そう言い残してハヤトは部屋を飛び出した。その直前にサオトメが呟いた言葉が僅かに耳朶を打った。

 

「……だが、これもまた必要な戦いなのだ」

 

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