偽ゲッターロボ レプリカ   作:オンドゥル大使

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第五話「咎人の声 9」

 プロトゲッターに対抗するためにはゲッター1に合体するしかない。リョウマはすぐさま合体軌道に入る。イーグル号のウイングがジャガー号に接合して畳み込まれ、ベアー号が脚部を展開する。

 

「チェンジ! ゲッター1!」

 

 ゲッター1へと変形合体を遂げたリョウマは再び敵を見据えた。プロトゲッター。黒ずんでいるがゲッターとは遜色ない形状を取っている。リョウマはミチルに尋ねた。

 

「あれ、レプリカントが一人で動かしているのか?」

 

『分かりません。ただレプリカントは多量のゲッター線を浴びているはず。普通ならば致死量ですよ』

 

 それだけのゲッター線に晒されて何故生きているのか。そのほうが不思議であったが突き詰める間もなくプロトゲッターが肉迫する。ゲッター1が上を取ってウイングに手を伸ばした。

 

 皮膜が仕舞い込まれゲッターEトマホークを形成する。発振したゲッター線の刃を振るい上げるとプロトゲッターは肩の部分から何かを取り出した。Eトマホークのエネルギー刃を受け止めたのは実体のある斧だ。二本の斧でプロトゲッターはEトマホークの刃を弾いた。

 

「トマホークだと?」

 

 短いがトマホークに違いない。片方を振るい上げてプロトゲッターが攻撃を仕掛けようとする。ゲッター1を咄嗟に飛び退らせたがリョウマの鼓膜を震わせたのはいやに冷静な声だった。

 

『その動きはもう覚えている』

 

 ハッとしたその時にはプロトゲッターが背後に回っていた。蹴りつけられゲッター1が弾け飛ぶ。Eトマホークを反射的に振るうが既にそこにはプロトゲッターの姿はない。どこへ、と首を巡らせると接近警報が轟いた。

 

「接近警報?」

 

『リョウマさん、上です!』

 

 ミチルの叫び声にリョウマは瞬間的にゲッター1を下がらせる。先ほどまでゲッター1の頭部があった空間を射抜いたのは一陣の風であった。白い機体にリョウマは瞠目する。

 

「ゲッター2だって?」

 

 ゲッター2にしか見えない相手はそのまま地表を抉り取る。左手にはドリルがあった。実体のあるドリルの回転にリョウマは呼吸を荒くする。僅かに巻き起こった旋風がゲッター1の機体表面を叩いたらしい。戦闘継続に問題はないがそれでも髪の毛一本の差で攻撃を仕掛けられたのは怖気が走った。

 

「おい、自動操縦にしちゃ、キレがよ過ぎねぇか?」

 

 ゲッター2になったという事は分離合体できたと言う事。だが自動操縦の時に発生する誤差はこの程度で埋められるものではないはず。

 

『ナガレ・リョウマ。我々は三人だ。比してお前は一人』

 

 モニターに映った人影にリョウマは戦慄した。コックピットに一人ずつ、自分の姿のレプリカントが収まっているのである。そこで理解する。相手は自分三人分に相当する戦力だと。

 

「……何てこった。レプリカントはおれの戦闘技能を覚えさせた奴を三人でゲッターを……」

 

『こっちは一人……。分が悪いのに違いありませんね』

 

 ミチルの声にリョウマは萎えかけた神経を叩き起こす。

 

「だが! 年季ってもんがあらぁ!」

 

 ゲッター1がEトマホークを手にプロトゲッターへと飛びかかる。即座に分離したプロトゲッターに翻弄される形となった。空中で合体を果たしたのはゲッター3の形状である。タンク形態の姿が大写しになったかと思うと伸縮する両腕がゲッター1を締め付けた。

 

「ゲッター3のパワーか……」

 

 侮っていた。アームレイカーを引いても押してもまるでゲッター1は反応しない。このままでは押し潰される。

 

『我らはゲッターに選ばれた存在。プロトゲッターのゲッター線は心地よいほどだ』

 

 通信網を震わせる声にリョウマは歯噛みする。相手のほうがゲッターを操るのが上だというのが信じられない。

 

「てめぇら……ゲッター線が弱点じゃねぇのか?」

 

『ゲッター線? それは我らに恩恵をもたらす事はあれど敵対する事はあり得ない』

 

 どういう事だ? 今まで相手はゲッター線兵器であるゲッターを恐れていたのではないのか。ネフィリムを倒せるのはゲッターだけだ。だというのにこの付き纏う違和感は何だ。

 

「どういう、こった……」

 

 スパークが散り、装甲版が持たない事を告げるアラートと赤色光に塗り固められる。ゲッター1では敵わないのは自明の理であったが他の形態では余計だろう。

 

『あの世で真実を知るんだな』

 

 レプリカントの声にゲッター1が限界を迎えるかに思われた瞬間、声が弾けた。

 

『リョウマー!』

 

 声と共に出撃してきたのはベータである。ベータ改八式がミサイルを撃ち放って接近してきた。だがどこかおっかなびっくりの機動で安定していない。ミサイルは幸いにしてプロトゲッターをホーミングしたがそうでなければ自分がやられていた。照準もぶれているベータを操っている主をリョウマは察知する。

 

「ムサシか?」

 

『こちとら、危険運転だ!』

 

 ベータがプロトゲッターへと猪突する。リョウマはその瞬間、相手がオープンゲットしたのを感知して手を伸ばした。爆発の瞬間にムサシは脱出しており、生身の身体が宙を舞う。ゲッター1の手がその身体を受け止めた。

 

「無茶しやがって」

 

『無茶もしなければ敵わないのだろう。リョウマ、敵もゲッターか?』

 

「ああ、みたいだな」

 

『ヨロイとの、関連は?』

 

 ムサシの恨みの相手はヨロイのゲッターだ。リョウマは、「分からねぇ」と答える。

 

「だが、奴はおれ達の敵だ」

 

『それが分かれば充分だ』

 

 ムサシのためにコックピットハッチを開けてやる。ベアー号のコックピットへとムサシが収まった。

 

 先ほどまでと違う、というのが明らかに感じられる。プロトゲッターが腹部にゲッター線を充填した。シャッターが開き、照射装置よりピンク色のゲッタービームが放たれる。

 

 樹海を焼いたゲッタービームの光条はしかしゲッターを捉えなかった。ゲッター1は明らかに回避行動が遅れていたがその速度でゲッタービームを凌駕していた。瞬時に飛び上がったゲッター1にレプリカント連中が口惜しそうにする。

 

『当たらなかったか。運のいい奴め』

 

「運? 違うな」

 

 リョウマには確信があった。ゲッターがまるで違う。活き活きとしている。ムサシがベアー号に乗っただけなのにこの違いは何だ? 血が滾り、ゲッター線の力の発露に魂が揺さぶられる。

 

「行くぜ、ムサシ!」

 

『応! チェンジ、ゲッター!』

 

 再び放たれたゲッタービームを避けた三機のゲットマシンが上空で合体を遂げる。ベアー号が変形し頭部を形成する。イーグル号がそれに接合し胴体となり、最後にジャガー号がキャタピラを有する下半身となる。

 

『ゲッター3!』

 

 当然の如くゲッター3は落下するがその際、プロトゲッターを巻き込んだ。網のように張り巡らされた両腕が瞬時にプロトゲッターの装甲を圧迫する。

 

「さっきの」

 

『お返しだ! 大雪山おろし!』

 

 暴風が巻き起こりプロトゲッターをなぶる。投げ出されたプロトゲッターに収まったレプリカントが呻いた。

 

『二人揃った程度では、プロトゲッターに勝てんわ!』

 

 ゲッタービームが照射される。ムサシは背中を向けたまま命じる。

 

『オープン、ゲット!』

 

 分離した三機のゲットマシンが再び合体軌道に移ろうとする。それを制するようにプロトゲッターが駆け抜けた。

 

『させると思っているのか?』

 

「しつけぇな」

 

 すると通信が開き、声が発せられる。

 

『……リョウマ。聞こえているか? ゲッター』

 

「ハヤト? どこに」

 

 通信位置を即座に特定する。研究所の屋上でハヤトが佇んでいる。

 

『来い!』

 

 その声にリョウマはフッと口元を緩める。

 

「おい、レプリカントさんよ。そっちは確かにおれが三人だ。割と無敵かもしれねぇ」

 

『知れた事を!』

 

 プロトゲッターがイーグル号に追いつこうとする。「でもよ」とリョウマは呟いてアームレイカーを引いていた。

 

「こっちにはそっちよりも、線の切れた馬鹿が三人揃っているんでな!」

 

 ジャガー号から伸びたアームがハヤトを引っ掴む。もう次の瞬間にはハヤトはコックピットに収まっていた。

 

『無茶をする』

 

「もうムサシに言われてんよ。行くぜ!」

 

 イーグル号の両翼が可変し脚部へと変化する。ベアー号と合体を果たした二機がジャガー号を機軸として身を翻した。瞬間、プロトゲッターの手は何もない宙を掻く。

 

『どこへ……!』

 

「こっちだよ、阿呆が」

 

 リョウマの声と共に突入してきたゲッター2のアームがプロトゲッターの顔面を打ち据える。ゲッター2の動きをプロトゲッターは捉える事が出来ない。

 

『なんて速さ……』

 

『どうやら素人さんに、教え込まなくっちゃいけないようだな。このゲッターの性能って奴を!』

 

 ハヤトの声が弾け、ツインEドリルを展開した両腕からゲッター線の竜巻が放出される。プロトゲッターは風圧に煽られる形となって上空へと一気に巻き上げられた。

 

『この、力……』

 

『お前ら、ゲッターを使いこなせていないな。初歩の初歩だ。ゲッターは三人のパイロットで出来上がる。いくらリョウマを三人分頭数揃えたところで意味のない事よ』

 

 プロトゲッターが風圧に耐えかねて分離する。今度はゲッター3であったが、それよりも早くこちらもオープンゲットする。

 

「それよりも無意味な事は――」

 

 プロトゲッターが変形合体を果たす前にプロトベアー号を掴んだ影があった。既にゲッター3へとチェンジを遂げたゲッターの両腕が伸縮して掴み上げている。

 

「悪いな。おれ達は目を瞑ってても合体出来るんだよ」

 

『そして技量不足だ。三の陣、旋風! 針鼠!』

 

 ミサイルを一斉掃射したゲッター3から逃れようとプロトゲッターがおっとり刀で変形する。

 

『ち、チェンジだ! プロトゲッター1なら負けない!』

 

 明らかにうろたえた様子のレプリカントにリョウマはフッと口元に笑みを浮かべた。

 

「ゲッター1なら負けねぇ、だと?」

 

 こちらもオープンゲットして即座に合体軌道に入る。

 

「それはこっちも同じだ! チェンジ、ゲッター1!」

 

 プロトゲッターと並行する形でゲッター1へとチェンジを果たす。相手はまだイーグル号が接合していない。だがリョウマはあえて待った。遅れて合体したプロトゲッターから通信が繋がる。

 

『何故、今攻撃しなかった?』

 

「弱い奴に教え込むためさ。正面切って言わなきゃ伝わらないだろ?」

 

『嘗めた真似を! ゲッタービーム!』

 

 ゲッター線を充填したプロトゲッターがゲッタービームを放つ。それに応じてゲッター1もゲッタービームを放った。レプリカントが哄笑を上げる。

 

『プロトゲッターはゲッター線を吸い続けた魔物だぞ! こちらのほうが、出力は上!』

 

 しかしその言葉に対してゲッタービーム同士の応酬はプロトゲッターが押される形となった。レプリカントは困惑する。

 

『な、何故、敵わない?』

 

「決まってらァ! そっちとは!」

 

 ビームを回避したプロトゲッターへと変形合体を果たしたゲッター2が突進する。Eドリルの旋風にプロトゲッターが成す術もなく煽られた。

 

『技量と!』

 

 即座に分離し変形したゲッター3が両腕を伸ばしてプロトゲッターを投げ飛ばす。

 

『体力と!』

 

 宙へと舞い上がったプロトゲッターを待っていたのは跳躍したゲッター1だった。振るい上げられたEトマホークが伸び上がる。

 

「実力が違うってなァ!」

 

 Eトマホークが打ち下ろされ、プロトゲッターは両断されたかに思われた。だがプロトゲッターは叩きのめされたものの両断は免れた形となった。最後のEトマホークが峰打ちであったらからだ。

 

「壊さないでおいたぜ。これでいいんだろ、ミチル」

 

『はい。……しかし今回恐るべき結果でしたね。プロトゲッターにレプリカントが乗るなんて』

 

「教えてくれていたらもうちょっとマシな対応が出来たかもな」

 

 恨み言を一つだけ呟く。ミチルは、『言えなかったんです……』と口にした。

 

『博士の、権限で』

 

「サオトメのジジィか。あれはどこまで知ってやがったんだ?」

 

 その疑問にミチルは答えなかった。代わりのように地平線から朝陽が昇ってくる。ゲッター1の赤い装甲が照らし出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロトゲッターが奪われたのは想定外ではあったが、こちらのゲッターが最早その力を超えている。それが分かっただけでも御の字だ」

 

 サオトメは再び地獄の釜の底に収まったプロトゲッターを仰いでいた。内部にいたレプリカントは全員、Eトマホークを打ち下ろした時には圧死していたのだという。

 

「まだ貴様にはやってもらう事がある。地獄の番人の役が取れたと思うな」

 

 プロトゲッターは黒ずんだ顔を項垂れてサオトメの言葉に是を返しているようだった。

 

「しかしレプリカント。ここまでリョウマに吹き込んだとなると隠し立てするのは限界かもしれんな」

 

 サオトメの声にミチルが応ずる。

 

『リョウマさんも、ハヤトも既に気付き始めているようです。これが、ただの生存競争ではない事に』

 

「ヨロイの出現が拍車をかけたか。だが、まぁいい。いずれ知る事だ。この世が既に地獄である事を」

 

 サオトメは白衣を翻し、その場から立ち去った。

 

 

 

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