偽ゲッターロボ レプリカ   作:オンドゥル大使

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第六話「異界奇譚 1」

 赤い光条が走り、樹海を瞬く間に火の色に染める。

 

 ゲッター1がその合間から縫うように飛行して出現した。赤い装甲にてらてらと炎が照り返している。

 

「野郎! ネフィリムにこれ以上、好きにさせるか!」

 

 リョウマの声にゲッター1が目標へと視線を据えた。目標物は円柱の形状を伴った一つの樹木のような存在である。赤いコアが三つのくびれで分かれており、それぞれのコアを保護するための瞼のような装甲があった。ゲッター1が飛び上がりゲッター線を胸部へと充填する。余剰エネルギーがスパークし転化したゲッター線がピンク色の攻撃色に変じた。

 

「ゲッター、ビーム!」

 

 放たれたゲッタービームは的確にコアを射抜く。しかし三つあるうちの一つを撃ち抜いてももう二つが健在ならばネフィリムが倒れる事はなかった。それどころか撃ち抜いたはずのコアが泡だって再生してくる。

 

『リョウマ! 猪突戦闘だけでは今回のネフィリム、倒す事が出来ないぞ』

 

 ハヤトの声にリョウマは、「分かってんよ!」と言い返す。ミチルからの通信が繋がった。

 

『ネフィリムの新型、トーテム型はコアが三つ並んでいる強敵。やはりコア三つを同時に破砕するか、あるいは再生前に全てのコアを破壊するしかなさそうです』

 

 解析結果がそれならばその方法しかないだろう。リョウマは、「どうする?」と声にした。

 

「ゲッター1じゃ厳しいか?」

 

『だからと言ってゲッター2でも再生前に全部破壊出来るほどの威力の技はないぞ』

 

『ゲッター3でもあのネフィリム、引っくり返せそうにない』

 

 ムサシの弱音の原因はネフィリムの磐石な姿勢にあった。トーテム型は縦長で一見するとバランスが悪そうだが大地に根を張っている事で姿勢制御は完璧である。それどころか大地から少しずつ養分も吸収しているらしい。出現時よりも明らかに挙動が上がっていた。

 

 コアから赤い光線が発射される。攻撃手段は瞼の装甲が開いた時にコアから照射される細いビームのみ。それだけならば恐るるに足らないのだが、樹海が少しずつ炎に飲まれ、このままでは消耗戦を続けるだけだった。

 

「研究所も危ねぇ。ゲッターならば避けられる攻撃だが研究所がいつまでも耐えられる保障はねぇぞ」

 

 少しずつ射程を延ばしているネフィリムを倒さなければどちらにしろこちらの破滅だ。リョウマは決断を迫られていた。

 

「ゲッター1でやるっきゃなさそうだが、ゲッター1だけじゃ厳しいだろう」

 

『どうする? 一回でコアを二つ以上破壊しなければ不利に転がるだけだぞ』

 

 リョウマはアームレイカーを引いた。ゲッター1がEトマホークを顕現させネフィリムに向けて打ち下ろす。ネフィリムの装甲が容易く剥がれ落ちるがすぐに再生した。

 

「装甲自体は脆い。つけ入る隙は、ありそうだな」

 

 唇を舐めるリョウマにハヤトが提言する。

 

『リョウマ。トマホークが効くのならば、あれを試す価値はありそうだ』

 

『あれ、ってのは?』

 

 ムサシが寝耳の水の声を出す。リョウマは何度かシミュレーションで試みた攻撃を今試す時だと判じた。

 

「やるか。よし、バックアップ頼むぜ!」

 

 もう一方のウイングの皮膜も閉じ、骨張った持ち手を握り締めてゲッター1が両腕にトマホークを保持する。

 

「行くぜ! Eトマホーク、ブーメラン!」

 

 直後、トマホークの両端を接合させ、リョウマは投げ飛ばした。発振したビーム刃が二つ重なる事によって相乗効果を生み出し、コアを容易く引き裂いた。だがそれだけではネフィリムを活動不能には追い込めない。

 

『これだけじゃ……』

 

 ミチルの声に、「まだだ!」とリョウマが声を張り上げた。その瞬間、まさしくブーメランの勢いを借りて戻ってきたEトマホークが後ろからネフィリムのコアを引き裂いた。上部二つのコアが破壊されネフィリムから攻撃の勢いが削がれる。今だ、と三人ともが感じた。

 

「トマホークを回収したらすぐに!」

 

『分かっている! オープンゲット!』

 

 ゲッター1が空中を駆け抜けトマホークをウイングに戻すや否や三機が分離した。最後の一つ、下部にあるコアから光線が放たれてゲットマシンを追いすがろうとするがそれよりも素早くジャガー号が機首となってゲッター2が顕現する。ゲッター2は右腕からEドリルを展開した。

 

『ゲッター、ツインEドリル! 食らえ! ゲッター2の速さなら』

 

 ゲッター2が残像すら居残しながら空間を駆け抜ける。当然、最後のコアが悪足掻きのように光線を発射するがゲッター2の速度には遠く及ばない。Eドリルから竜巻が発生しゲッター線の皮膜そのものがゲッター2を保護しているのもあった。そのままゲッター2が最後のコアを射抜く。

 

 甲高い鳴き声が迸りトーテム型のネフィリムが内側から赤く輝いた。

 

「放散爆発が来るぞ!」

 

 リョウマの警告に、『分かっている』とハヤトが応じようとした。しかし、ゲッター2はいつまで経ってもその場から動こうとしない。ネフィリムを射抜いたまま硬直している。

 

「おい! どうした? ハヤト。ゲッター2を回避させろ」

 

『分かっているんだが、何で……』

 

 その言葉の先を示すようにゲッター2を絡め取っている存在が明らかになった。養分を大地から吸っていたのはただ単に頑丈になるためではない。内部より出でたのは植物の根であった。ゲッター2に纏わりついて操縦系統を阻害する。

 

「植物の根? こんなもん、引き裂いちまえよ!」

 

『やれるならやっている。どうにもゲッター2の鈍い部分を狙っているらしい。動きが取れない』

 

 言っている間にも放散爆発の赤い光が視界いっぱいに広がろうとしている。リョウマはアームレイカーを引いた。

 

「オープンゲットだ! 今はこだわっている場合じゃねぇ!」

 

 放散爆発に飲み込まれる。リョウマの焦燥に全員が応じたようだがそれでも植物の根がオープンゲットを邪魔する。

 

『駄目だ、リョウマ。このタイミングでオープンゲットすれば、それこそ放散爆発の衝撃にゲットマシンが耐えられない』

 

「じゃあどうするってんだよ! ゲッター2で受け切るってのか?」

 

『爆発する間際にゲッター2で一気に引き裂く。それで行けるはずだ』

 

 ハヤトの言葉にリョウマは今にも膨れ上がりそうな爆発の光を目にする。

 

「おい、マジかよ。そんな賭けで」

 

『ゲッター2! ドリルトルネードで一気に離脱する!』

 

 ハヤトの声にゲッター2がツインEドリルを両腕に展開する。四つの竜巻が拡大し植物の根をようやく切り裂いた。

 

「これで――」

 

 だがその時には、既に放散爆発の光が広がっていた。リョウマが振り返った瞬間、その視界は赤い光の渦で埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲッター。応答してください、ゲッター2!」

 

 オペレーターの声にサオトメは放散爆発の巻き起こった地点へと目線を向ける。トーテム型ネフィリムの迎撃には成功したもののゲッターの行方がようとして知れなかった。

 

「ゲッター2は? 爆発を抜けるとか言っていたが」

 

「分かりません。全シグナル、ロスト。パイロットバイタル、ありません!」

 

 そのようなはずはない。生きているのならばバイタルが確認出来るはずであるし、死んでいたとしてもゲッターですら確認出来ないなど。

 

「ミチル。ゲッターの位置は?」

 

『それが、放散爆発の際、時空の歪み、つまりワームホールが形成されたようです。今までのようにゲッター線が放散爆発を最小限の規模に抑えていたのが逆に仇となりました。ゲッターは恐らく放散爆発の向こう側へと行ったのだと推測されます』

 

「爆発の向こう側って……」

 

 振り返ったオペレーターにサオトメは厳しい声音を向ける。

 

「続けろ。何としてもゲッターを見つけ出すのだ」

 

 はっ、とオペレーター達が忙しなく動く中でサオトメは一つの可能性を思い浮かべていた。

 

「……まさか、あちら側に行ったのではあるまいな?」

 

 ミチルにしか聞こえない声音で尋ねる。ミチルは、『それこそあり得ません』と応じた。

 

「だがワームホールが開いていたのならば、あり得ない話でもあるまい。ゲッターを奴らに取られるわけにはいかん」

 

『ゲッターの性能からして、ワームホールを超える事は可能ですが、そうなると交信手段が……』

 

 濁したミチルへとサオトメは言い放った。

 

「リョウマ、ハヤト、ムサシ。三匹は行ってしまったか。時空の果て、煉獄へと」

 

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