偽ゲッターロボ レプリカ   作:オンドゥル大使

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第六話「異界奇譚 3」

 衛星軌道に戻ってくるはめになるとは思っていなかった。

 

 リョウマは先ほどの戦闘が堪えたのか、言葉少なである。ムサシはどうするべきか分からないのだろう。こちらも何か余計な事を言う状況ではなかった。だがハヤトだけはこの状況の打開策を巡らせていた。ゲッター1は衛星軌道上を漂っている。敵機が追いついてくる様子はない。

 

「ここまで追ってこないだけなのか。あるいは追ってこれない事情があるのか」

 

 呟いてハヤトは非常用の食料を確認する。三人が一週間はゲッターの中だけでも事足りる食料が備蓄されていた。水も充分ある。

 

「リョウマ。聞こえるか」

 

 通信を繋ぐと、『何だよ』という不機嫌そうな声が聞こえてきた。リョウマは相手を駆逐する事しか考えられない。本能的に敵だと判じた相手には容赦はしない性格だ。だが今回、迷っているのが窺えた。それは相手の姿がゲッターに似ていた事も無関係ではないのだろう。

 

「一週間は衛星軌道上でも生き永らえられる」

 

『そいつは結構なこって』

 

「だが、それを超えればお終いだ。オレ達は出来るだけこの状況を正確に記録せねばならない」

 

『……何が言いたいんだよ?』

 

 苛立たしげなリョウマの声にハヤトは通信チャンネルを変える。

 

「ムサシ、聞こえるな?」

 

『どうした?』

 

「ゲッターチェンジだ。ゲッター3になる」

 

 その決定にはさすがに面食らった様子で二人して声を荒らげた。

 

『てめぇ、おかしくなったのか? この状況で鈍いゲッター3なんて』

 

『鈍い、ってのは遺憾だが、俺も納得出来ん。ゲッター3に宇宙空間でなったところで』

 

「宇宙空間だからだ。重力の力は働かない。元々海洋戦闘用に造られたゲッター3にしか出来ない芸当がある」

 

 ハヤトの決定の意味が分からないのかムサシが尋ねる。

 

『何だよ?』

 

「まずはチェンジだ。敵は来ないだろう」

 

 言葉の真意は分からないものの二人のパイロットはそれぞれ分離させて合体軌道に移った。ベアー号を主軸にイーグル号、ジャガー号の順に合体する。ゲッター3になったもののムサシはハヤトに尋ねていた。

 

『で? どうするんだ?』

 

「一番手が長いのがゲッター3だ。近場の衛星に気取られない距離から、腕を伸ばして取りつけ。こっちで通信チャンネルを合わせて相手の情報を得る」 

 

 ゲッター3が攻撃目的でチェンジしたのではないのだと悟ると、二人して脱力したようだった。

 

『んだよ、そんなつまらねぇ事にゲッターを使うのか?』

 

「ゲットマシンでは至近距離まで近づかねばならない。ゲッター1や2では腕が短過ぎる。だがゲッター3ならば触れているのか分からない絶妙な力加減で衛星に触れられるだろう。通信衛星はあれだ」

 

 ハヤトが指示するとムサシはどこか不満げな声を出す。

 

『俺のゲッター3はこんな役ばかりだ』

 

 それでもゲッター3は指示通り腕を伸長させ、通信衛星へと触れた。その瞬間、様々なチャンネルがアクティブになる。ハヤトはゲットマシンの処理速度を信じてそれぞれの通信をさばいた。

 

『で? ハヤトよ。相手先の通信の言語がおれ達の共通言語とは限らないのだが』

 

「翻訳機を使えばいい。似ている言語だったならば変換する」

 

 リョウマは気に食わないのか、けっと毒づいた。

 

『そうかい、そうかい。ハヤト。てめぇは存外に肝が小せぇな』

 

「相手をゲッター線で打ちのめすだけが戦闘ではないという事だ。何個か該当するチャンネルがあった。繋ぐぞ」

 

 接続した瞬間、発せられたのは軍歌であった。ハヤトは目を見開く。リョウマとムサシも言葉をなくしているようだった。

 

『おれ達の知っている言語、だが……』

 

『軍歌だな、こりゃ』

 

 軍歌が流れる時代を計測しようとしたがゲットマシンだけの処理速度では限界が生じた。やはりゲッターだけで情報戦は不利か。

 

「まだ一日目だ。オレ達は、少しでもこの場所の特性を知っておく必要がある」

 

 ハヤトの結論にリョウマが、『そんな場合かねぇ』と含んだ声を出す。

 

「どういう意味だ?」

 

『おれ達は放散爆発に巻き込まれてここに来た。おれ達の惑星に限りなく似ていて地軸も一致している。でも迎えたのはネフィリムとゲッターの相の子だ。これってつまり……』

 

「言いたい事は分かるが、今言っても始まるまい」

 

 それでリョウマの言葉を制する。ムサシは、『どういう意味だ?』と合点が行っていないようだ。分からないほうがいい。ハヤトは自分も考えていた仮説を呟く。当然、混乱を避けるために通信は切ってあった。

 

「こちら側の惑星、つまりオレ達がネフィリムと呼んでいる連中が棲んでいる惑星が別に存在するのならば、この場所こそが……」

 

 眼下に広がる青い惑星はプラネットシェルの施されていない故郷に映ったが、数々の事象がそう容易くない事を証明している。ハヤトは年代測定法を用いる事にした。幸いにもゲッター単体で年代測定が可能である。ただし期間は一週間を要した。

 

「オレ達がくたばるのが先か、この星の秘密が割れるのが先か」

 

 ハヤトはチューブから水分を補給しつつ諸々の機能を呼び出す。ゲッターが遭難した時のために航海日誌をつける機能があった。

 

「リョウマは女々しいと笑うだろうな。だが、この記録がもしかしたら連中のベールを引っぺがす鍵になるかもしれん」

 

 ハヤトは早速キーボードを取り出し、端子を繋げて航海日誌をつけ始めた。自分達はまさしく異空間に漂着したのだ。ならば少しでも記録を残さねば。

 

「航海日誌一日目、正確な日付は不明。我々ゲッターチームはとある惑星に漂着した。ネフィリムの放散爆発に巻き込まれた結果と思われる……」

 

 そこから先の文章をハヤトは淀みなく綴った。

 

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