偽ゲッターロボ レプリカ   作:オンドゥル大使

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鋼鉄の虚無

 

 両翼のネフィリムが真の姿へと変貌した。その事実にリョウマは驚愕すると共にその手が広げられたのを視認する。直後、指先から何本もの光線が一挙に放たれゲッター1へと襲い掛かった。

 

「野郎! しかも追尾機能付きとか、いい趣味してやがる!」

 

『ゲッター2の速度で乗り切るか?』

 

「いんや、奴さん。オープンゲットの隙さえも与えてくれねぇだろう」

 

 その証拠に幾何学方向から襲い掛かるビームは予測不可能だ。オープンゲットしてゲットマシンになれば防御力も大きく下がる。ゲッター1は制動をかけて前を遮ったビームを避けたが後ろから追いすがるビームの回避までは充てられなかった。背中にビームが突き刺さりゲッター1がよろめく。

 

「このままじゃ……」

 

『機動不能になるぞ……』

 

『かといって迂闊に変形も出来ないとは』

 

 既にダメージは危険域に達している。リョウマは両翼のネフィリムを睨み据える。どう足掻いてもネフィリムを倒す手段が思い浮かばない。赤い警告色と共に絶望に突き落とされる感覚があった。ネフィリムが足を上げて踏み潰そうとする。ゲッターなど所詮は羽虫だとでも言うように。絶望の影が視界を覆い尽くした時、突然に火線が開けた。

 

 三機の何かがネフィリムへと攻撃を加える。さしものネフィリムでも反応が遅れた様子だ。リョウマはそれを視認する。

 

「何だ?」

 

 もしやまたベータか? その予感は直後に発生した現象で上塗りされた。

 

『チェンジ、ゲッター1!』

 

 なんと三機の影が一つに重なりゲッター1の姿を顕現させたのである。黒ずんだその赤い鬼にリョウマは見覚えがあった。

 

「プロトゲッター……」

 

『誰が乗っているんだ?』

 

 ハヤトの疑問に応じたのは見知った声だった。

 

『大丈夫ですか? リョウマさん』

 

「その声……ミチルだっていうのか」

 

 ミチルが乗っているなど信じられない。しかしその疑念は次の言葉で払拭された。

 

『しぶといな。さすがはワシが地獄への道連れに選んだ三人だ』

 

「ジジィ……。何やってやがる」

 

 サオトメの声にリョウマは困惑する。どうしてサオトメとミチルがプロトゲッターを動かさなければならなかったのか。プロトゲッターはネフィリムの攻撃を掻い潜り、赤いマント型のゲッターウイングを展開する。

 

『ゲッタービームだ』

 

 マントの内側から拡散されたゲッタービームが放たれネフィリムを翻弄する。その動きのキレは老人だけのものではない。

 

「ミチルが、やっぱり乗ってんのか……」

 

 しかしどうやって? ミチルは研究所のAIのはずだ。繋がった通信の先にコックピットが窺える。リョウマは目を戦慄かせた。そこにあったのはゲッターの計器と繋がったカプセルの中に浮かぶ脳髄であったからだ。

 

「何だよ、これ……。ミチルじゃねぇのか?」

 

『はい、私です。私、そのもの、と言い換えてもいいかもしれません』

 

 リョウマは瞠目する。プロトゲッターにミチルが収まっているというのか。しかしどうして脳髄だけの存在で? 疑問を払拭出来ずにいると、『やはりか……』とハヤトが呟いた。

 

「ハヤト? どういう事だ?」

 

『システムAIにしちゃ、ミチル、というAIは出来過ぎていた。月面のルナ、というAIを思い出せ、リョウマ。地上であれに勝るAI技術の躍進。それに人一人の犠牲も何もなかったとは思えない』

 

 ハヤトが何を言わんとしているのか、リョウマにはまるで分からない。ただ映し出された脳髄とカプセルは自分に生々しい現実を告げていた。

 

 ミチルはただのシステムではない。

 

『本来ならば、このような形で貴様らに露見するはずではなかったのだが、事が事だ。教えよう。ミチルはシステムAIではなく、正しくは生体コンピュータだ』

 

 発せられた言葉の意味が分からずリョウマは硬直する。しかしハヤトは得心が行ったようだった。

 

『やはりか。あの写真、タツヒトと一緒に写っていたもう一人の子供。あれこそがサオトメ・ミチルであったんだな』

 

「ハヤト? てめぇ、何を掴んでいやがった? 何でそう易々と納得出来る?」

 

『そう考えるのが自然なんだ。サオトメ・ミチルは元々人間であったが、とある時期にサオトメ研究所を束ねるシステムAI、いいや生体コンピュータとして利用されるようになった。そうなった経緯は、この老人に尋ねるのが早い』

 

 リョウマはプロトゲッターに通信を繋ぎサオトメへとがなる。

 

「何がどうなってやがる! ジジィ!」

 

『なに、簡単な事よ。この時代のコンピュータでは限界が生じた。ゲッターの運用も、あるいはプラネットシェルも。だからこそ、人柱を立てた。ワシとミチルがいればこそ、これまでの計画が可能だった』

 

「……何言ってやがるんだ。おい、ジジィ! てめぇ、何言っているのか分かってんのか!」

 

 まだ息のあったミチルを、この老人は自分の娘を、自ら道具にしたと、告白しているのだ。リョウマは戦慄く視界の中にカプセルを見据えたが自分以外は冷静だった。

 

『リョウマ。今は割り切れ。ネフィリムが来るぞ』

 

『ミチルさんがそうだったのは残念だが、俺達にはもう、過去のあやまちを正すだけの力もないんだ』

 

 どうしてだかハヤトもムサシも悲観的である。リョウマは歯噛みして迷いを振り払う。

 

「……ジジィ。生きて帰ったらてめぇをまず、殺す」

 

 リョウマの凶暴な宣告にサオトメは、『それが生きる目的となるのならば』と答えた。

 

『やるといい。今は、ネフィリムから生き残れ。それがワシの命令だ』

 

 リョウマはアームレイカーを思い切り引いてゲッター1を機動させる。両翼のネフィリムは赤い眼でゲッター1を見据えた。

 

「どうやってこのデカブツを破壊する? 今までみたいなゲッタービームは通用するのか?」

 

 先ほどまでの卵型とは一切が異なっている。完成された様子のネフィリムを倒す方法が全く浮かばない。

 

『ゲッター2の速度だけじゃ、殺せないだろうな』

 

『だからと言ってゲッター3のパワーだけでも、こいつは倒し切れまい』

 

 ハヤトとムサシでさえもこの状況を打破するだけの方策を持っていない。リョウマの迷いの胸中へと語りかける声があった。

 

『リョウマさん。一つだけ、方法があります』

 

 ミチルの声だ。リョウマは思わずカプセルの映像を切って声だけを聞く。

 

「ミチル。そうなってまで、ゲッターに尽くす事はねぇ」

 

『いいえ。今までもそうでしたし、これからもそうなのです。私がゲッターに、リョウマさんに出来る事はこれくらい。だから――』

 

「そんな寂しい事! 言うんじゃねぇ、って言ってんだ!」

 

 リョウマは顔を伏せる。ミチルの存在価値がゲッターのためだけにあったなどあんまりだった。人一人がゲッターのために死にゆくなど間違っているのだ。

 

『……これはサオトメの名を持つ者の運命。私は、幸福なんです。かつての私は、難病で十歳まで生きられないと言われてきました』

 

 リョウマはハッとする。ミチルはただ生体コンピュータとして弄ばれたわけではないと言っているのだ。

 

『だから、博士には……父には感謝しているのです。私は人間ではなくなりましたが、生体コンピュータとして役立てた。それに何よりも、リョウマさんに出会えた。それが尊いんです』

 

「やめろ……。そんな風に、飾り立てるな」

 

 普通に生きて普通に死ぬべきだったのだ。ミチルは、命を弄ばれた結果、こうして生き永らえてしまった。この地獄を見ずに済んだかもしれないのに。

 

『たとえ地獄でもいい。リョウマさんとならば』

 

 頬を熱いものが伝った。ミチルの生き様に、あるいは先ほど散っていったタツマに、自分にゲッターを託したタツヒトに。どうして、そこまで眩しく、自分に未来を任せられたのか。自分など、何もない、虚無の存在なのに。

 

「おれは、虚無だ。このゲッターっていう鋼鉄の虚無の腹の中でしか、生きられない咎人なんだ」

 

 ハヤトとムサシは何も言わない。それが逆にありがたかった。今慰められれば全てをかなぐり捨ててしまいそうだった。

 

『リョウマさん。このオシリス型ネフィリムを打倒する方法は、一つだけあります』

 

 改めて言い放ったミチルにリョウマは顔を上げる。もう涙は見せまい。全ての戦いが終わるまで、泣くわけにはいかなかった。

 

『今よりプロトゲッターのエネルギー、つまりゲッター線をゲッター1へと送る。その膨大なゲッター線をもってして行使出来る技、それこそがオシリス型ネフィリムを打倒出来る』

 

 サオトメの声にリョウマはゲッター1を振り向かせた。プロトゲッターが研究所の屋上へと降り立つ。その瞬間、瘴気のように地下からゲッター線の光が浮かび上がった。

 

 リョウマは瞠目する。まるで研究所そのものを包み込むかのようなゲッター線の光がプロトゲッターを媒介にして寄り集まっていく。魂の光だ、とリョウマは胸中に呟いた。

 

『ゲッター線、その純粋なる光は亜種を打ち砕く。受け取ってください、リョウマさん!』

 

 プロトゲッターが身体を開き、エネルギーの瀑布をゲッター1にぶつける。あまりのエネルギー量に計器が瞬時にして振り切れた。百パーセントのゲッター線貯蔵量を越えたゲッター1が全身から緑色の光を放つ。エネルギーパーティションなど、最早意味を成していない。ゲッター1はそれそのものがゲッター線の光体と化していた。

 

「計器が、見えねぇ……」

 

 何もかもが光の向こう側へと埋没していく。指先も、アームレイカーも、あるいは「ナガレ・リョウマ」という肉体でさえも還元され、ゲッターという純粋なる力へと呑み込まれていく。

 

『リョウマ! ハヤト! ムサシ! ゲッターを今までのようにテクニックで操縦するのではない! 原始本能で操縦せよ!』

 

 サオトメの声が耳朶を打つ。しかし、今にも消え入りそうな意識がリョウマという個体の消滅を間近にしていた。

 

「消える……、いいや、溶ける……。光の渦へと。おれも、ハヤトも、ムサシも……」

 

 ゲッターから赤い装甲版が外れ緑色の光を放つ鬼と化す。ネフィリムが慄いて後ずさった。この光は危険だと本能で察知したのだろう。両翼が広げられたかと思うと、幾重もの光条が充填されていく。勝負を決めるつもりなのは明白だった。

 

『リョウマさん! 全てをゲッターに委ねて! 戦うという事だけを、ゲッターロボの意識に乗せてください! そうすれば見えてくるはずです。光の向こうにある究極の技、ストナーサンシャインが!』

 

 ゲッターに委ねる。そう言われても計器も見えず、アームレイカーも消失した視界の中ではゲッターを御する術はない。リョウマは意識を保とうとするがゲッター線がそれを許さなかった。

 

 リョウマの意識は瞬時に引っ張り込まれ、どことも知れぬ銀河を漂っていた。その銀河の向こう、光の渦が連なる先に、何かが待っている。赤い鬼の威容を持つ巨大戦艦が、リョウマを睨んでいる。鬼の内部に人影を見つけた。

 

 ――あんたは……。

 

 その人影が振り返りリョウマを指差す。

 

 ――征け! ゲッターチーム!

 

 その声にリョウマは一気にゲッターの中へと引き戻された。アームレイカーは存在しない。計器も無茶苦茶だ。しかしリョウマの手は確かにゲッターの一部と繋がっていた。自身の身体を見やる。機械部品と肉体が融合し、ゲッターの声が直接脳内に響く。

 

「そうか、これが……」

 

 全てはゲッターの意思が招いた事。どちらを選ぶのか、それは遥か彼方にいるゲッターの帝王が選ぶのではない。

 

「おれ達が選ぶんだ。……聞こえてっか? ハヤト、ムサシ」

 

『ああ、何とかな。戻ってこられたみたいだが、あのゲッターロボは』

 

 ハヤトも同じものを見たらしい。ムサシは、『ゲッターの、大宇宙の意思だ』と事前に知っていたようだ。

 

『全てがどちらを選ぶのか』

 

「選ぶ? 冗談きついぜ」

 

 リョウマは声を張り上げた。

 

「おれ達が、選ばせてやるんだよ。行くぜ、ゲッター!」

 

 緑色の光体と化していたゲッター1の機体を覆っていくのは赤い装甲だった。新たに装甲版が展開され、ゲッター1が全身を開く。先ほどまでの傷跡は失せ、今のゲッター1には新たな息吹が宿っていた。黄色い眼窩が輝き、瞳孔が煌く。

 

『ゲッターに、眼が……』

 

 ミチルの声にリョウマは思惟を飛ばした。両翼のネフィリムが光条を発する。ゲッター1は片手を払っただけだ。それだけで全ての光線が弾かれ、ゲッターに命中する前に霧散した。

 

「ゲッターが、今まで以上におれ達に馴染んでくれているぜ。これが、ゲッターの力だ」

 

『三人とも! 三つの心を、一つにするんだ!』

 

 サオトメの声に躍り上がったゲッター1が両腕を胸の前で交差させる。指先がエネルギーを帯びてスパークを弾けさせた。両手を上下させるとその間で光の球が発生する。眩いばかりの光の球が、まさしく地上で太陽のように照り輝く。

 

「ストナー、サンシャイン!」

 

 ゲッターの内奥に刻まれた技の名前を発した瞬間、ゲッター1が光の球を発射した。ネフィリムに命中した瞬間、その肉体が爆ぜ、球を中心として消滅していく。ネフィリムが抗うが光の球が渦を成して質量を吸収しているのが分かった。

 

 これこそがストナーサンシャイン。全ての物質をゼロの向こう側に帰す技。

 

 単純な熱量だけでも相当だがネフィリムの身体を破砕するのは熱量ではない。重力だ。ストナーサンシャインの内側から発生したゲッター線の重力磁場がネフィリムの存在を許さないのである。

 

 両翼のネフィリムは放散爆発さえも起こさなかった。巨大な熱量に引き裂かれ、渦へと吸収される。その最期は呆気ない。リョウマは最早機械類が無茶苦茶に交差したコックピットの中で声にする。

 

「これが、ゲッターロボだ」

 

 ネフィリムが先ほどまで存在した、という証明さえも消し去った攻撃。樹海は焼け爛れ、地表は見る影もない。

 

 プロトゲッターがその時、突然跪く。ゲッター1が目を向けるとプロトゲッターが手を掲げた。

 

『何も心配はない。これで、ネフィリムと我々の、長きに渡る闘争に幕が下りた』

 

『終わったのです。ネフィリムとレプリカント、いいえ、真の人類とて、ゲッターの意思がなければ使えないストナーサンシャインを見せ付けられれば、もう手出しはしません』

 

 ミチルの声にリョウマは茫然自失で呟く。

 

「終わったのか……」

 

 自身の手と等価になったゲッターの掌に視線を落とす。

 

『はい、これで――』

 

 そこから先の言葉を上空から舞い降りた一撃が遮った。

 

 リョウマは目を見開く。

 

 ゲッタートマホークがプロトゲッターの腹腔に突き刺さっていた。ちょうどジャガー号のコックピット位置だ。そこにはミチルが収まっているはずである。

 

「ミチル!」

 

 リョウマの叫びを他所に雲を引き裂いて殺気が飛んでくる。赤いゲッタービームがゲッター1へと幾何学の軌道を描いて襲い掛かった。リョウマは咄嗟に回避する。

 

『そうか……。まだ、奴がいたな……。赤い、亜種のゲッター線の守り手。真の人類の観測者』

 

 砂嵐にまみれた通信の中でサオトメが口にする。雲が円形に抉れ、腕を組んで舞い降りてきたのは漆黒の鬼だ。赤いエネルギーパーティションに血潮さながらのゲッター線を走らせている。

 

「ヨロイの、ゲッター……」

 

 リョウマの声に通信網が繋がった。

 

『その名は正しくはない。我が名は、ゲッターノエル。この惑星に落とされし、エンペラーの嫡子、エンブリオを守護する目的を仰せつかっている』

 

 初めてまともに繋がった通信よりも驚愕するべきはその声の質だった。この声音は……。

 

『リョウマ?』

 

 ハヤトの声にヨロイのゲッター――ゲッターノエルは黄色い眼窩で睨み据える。

 

『どうやら、気付いている者もいたようだな』

 

 超越者の余裕を漂わせた声にゲッター1は飛びかかっていた。一も二もない。プロトゲッターを――。

 

「よくもミチルを、やりやがったなァ!」

 

 振るわれたEトマホークの一撃をゲッターノエルは片腕で受け止めようとする。しかしEトマホークの刃が発振したかと思うとゲッターノエルの腕に傷跡をつけた。咄嗟に飛び退いたゲッターノエルは傷跡を見やり口にする。

 

『なるほど。今までの、偽物のゲッターロボの力ではない、と思ったほうがいいか』

 

「来やがれ。てめぇを倒さなければ、人類に明日がねぇってならな!」

 

 リョウマの声にゲッターノエルは応じる。

 

『違うな。逆だ、ナガレ・リョウマ。人類に明日があるとすれば、それはこのゲッターノエルの勝利に他ならない』

 

 言葉の意味が分からずにリョウマが攻撃の準備にかかると悲鳴が迸った。

 

『世界各地で、ネフィリムが同時出現しています! 対象、オベリスク型! この数は、十、二十……。どんどん増えていきます!』

 

 オペレーターの声にリョウマは戸惑う。

 

「どういうこった? さっきのネフィリムで、全ては決したはずじゃ……」

 

『目覚めの時が来たのだ。ネフィリム迎撃レベルでは、もう止める事は出来ない。ゲッターエンブリオが、覚醒する。それはつまり、この惑星の消滅』

 

 放たれた言葉にリョウマは息を呑む。研究所から送られきた映像にはオベリスク型が多数出現する様子が克明に表示されていた。

 

「……どうなってやがる」

 

『全てを決するというのならば。ここで選択しろ、ゲッターチーム。真の人類の前に敗退するか、エンブリオの誕生を見守るか』

 

「しゃらくせぇ!」

 

 ゲッター1が空間を駆け抜ける。突き出された拳に応じてゲッターノエルも拳を突き出していた。二つの拳がぶつかり合い、空気が割れる。

 

『……ここまで分からず屋だとはな。ノエル、力づくだ』

 

 ゲッターノエルは拳を開きゲッター1の手首を掴む。次の瞬間、手首ごと折り曲げられた。直に繋がった神経が激痛を伝える。リョウマはコックピットの中で雄叫びを上げた。

 

『偽物のゲッターロボよ。お前らに明日はない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南極点を観測していた人工衛星が捉えたのは南極の氷に亀裂が走り、大地が割れる光景だった。それだけならばよくある自然の崩壊現象だったかもしれない。しかし、直後に空間を引き裂いて現れたのはネフィリムオベリスク型が十体以上であった。ネフィリムはそれぞれ浮遊して両腕を開き、十字を描く。まるで何かを祝福するかのように。

 

 ネフィリムから音波が放たれ地形が歪んだ。瞬間、地表から出現したのは赤い腕だった。未発達ながら、五指を備えたそれは人間のものだ。赤い装甲版を纏った腕が出現し、空を掴む。

 

 人工衛星は、その奥、マントルの内側に潜む黄色い眼窩までも映し出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが終わり、という奴か」

 

 シキシマは呟き、観測される事象を目にする。世界各地でのネフィリムの異常発生。そしてたった今舞い込んできた南極点での巨大な腕の映像。全てが合致する事実は一つだけだ。

 

「エンブリオが目覚め、この惑星は消滅する」

 

 

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