偽ゲッターロボ レプリカ   作:オンドゥル大使

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最終話「聖なる未来へ 2」

 何のために戦う?

 

 今まで問われた事もなかった。考えた事も、ほとんどない。過去の亡霊に報いるため。犠牲をこれ以上増やさないため。レプリカントを抹殺するため。ネフィリムに勝つため。自分の代わりに死んでいったタツヒトの、男の無念のため。

 

 人類のため。

 

 だが全ては偽りであった。虚飾が全てを覆い尽していたのだ。プラネットシェルの外殻然り、自分を取り巻く状況然り。何もかもが嘘だった。人類は嘘。ゲッターも嘘。プラネットシェルも嘘。

 

 しかし嘘でないものがあったのではないか。リョウマはその感覚にアームレイカーに突っ込んだ手に視線を落とす。

 

「嘘じゃねぇものもあったんだ。少なくとも、人の思いや、死んでいった人間がいた事は、嘘じゃなかった。おれに託していった奴らの思い、消えていった者達の人間くささは、嘘じゃなかったんだ。そんなもの、優劣なんてつけられるわけがねぇ」

 

 拳を握り締める。

 

 タツヒト、タツマ……。どうして自分なんかに希望を繋げた? 彼らは何のために死んだ? それは、自分ならば、ナガレ・リョウマならばその先を行けると信じていたからだ。リョウマは言い放つ。

 

「おれは、偽物かもしれねぇ。それこそ、無意味に無意味を重ねるような行為かもしれねえし、このゲッターだって元を辿れば偽物だ。でもよ、こいつに魂を売り渡して、死んでいった奴らに流れている血の色はよォ……。少なくともおれ達と同じ、赤だったぜ! 真っ赤な真っ赤な、鮮血だったんだ!」

 

 リョウマは声の限りをゲッターに注ぎ込む。ゲッターは、亡霊達は、偽物であっても命をとした、その灯火がゲッター炉心に火を点ける。ゲッター線が輝きを放ち、エネルギーパーティションに緑色の血潮が滾る。

 

「熱くなれ! 焼け付くほどに!」

 

 ゲッター2が強制分離する。ハヤトが戸惑いの声を上げた。

 

『これは……。オレへの優先権を超えて、ゲッターが動いている?』

 

『全て、リョウマの意思通りに……』

 

 二人して信じられないような声を上げる。リョウマは、「今さらブルってんのか?」と煽った。するとハヤトが答える。

 

『……やれやれ。このゲッターという魔物の前では、これは浅知恵だったか』

 

『ゲッターの意思を、人の身で超えるのか、リョウマ……』

 

 ムサシの戸惑いに、「構うこたァねぇ!」と返す。

 

「ゲッターがどう感じるだとか、大宇宙の意思なんて、んなもん全部知るかよ。こちとら偽物なんだ。だったら、偽物なりに暴れさせてもらうぜ!」

 

 ゲッターノエルへと三機のゲットマシンが突っ込む。合体軌道を取ったゲットマシンが螺旋を描いて衝突し、ゲッターノエルが僅かによろめく。

 

『偽物だって分からないのか! 全ては虚しい行為なのだと!』

 

「うるせぇよ。偽物偽物ってな。本物だろうが偽物だろうが、おれの理念は変わらねぇ。人を守る。そう誓ったんだよ」

 

『誓っただと? 誰にだ! ゲッターと大宇宙の意思以上に、尊重するべきものなど……』

 

「てめぇには一生分からねぇさ。熱く今を生きる友にだよ! 気合入れろ、二人とも! チェィィィィンジ! ゲッター!」

 

 イーグル号を機首として両翼が折り畳まれる。ジャガー号が接合し、その後にベアー号が続いた。ベアー号が脚部を展開するのと同時に両腕が引き出され、内部にトマホークを備えたウイングが両腕の後部に取り付けられる。

 

「ゲッター1!」

 

 ゲッターノエルに衝突する形で変形合体を遂げたゲッター1がEトマホークを振り翳す。相手はトマホークでいなしたが一撃の威力が今までと段違いであった。思わず、と言った様子でゲッターノエルが後ずさる。

 

『この攻撃力……。ゲッター線の恩恵を……』

 

「ゲッターが選んだ? 選ばなかった? んなもんでいちいち女々しく泣いてるんじゃねぇ! 人の道は、人が切り拓くんだ!」

 

『減らず口を!』

 

 ゲッターノエルが赤いゲッター線を胸部に充填する。それと同時にゲッター1も緑色のゲッター線を胸部に充填した。攻撃色に転じたゲッター線の瀑布が襲いかかる。

 

「ゲッター、ビィーム!」

 

 同時に放たれたゲッタービームが干渉し合い、爆発の牡丹が押し広げられる。その合間を縫うようにゲッター1が駆け抜けた。もちろんゲッターノエルとて遅れを取らない。突き出された拳同士が僅かにぶれ、お互いの顔面を打ち据えた。クロスカウンターに二体のゲッターがそれぞれよろめいた。

 

「効くぜ……。だがな」

 

 鼻血を拭ってリョウマはゲッター1に機動をかける。最早、ゲッターはアームレイカーで動かすものではない。自分と一体化した機械群それぞれが細胞となり血潮となり、ゲッターと共鳴する。際限なくゲッター線が放出し、緑色の光が駆け抜ける。対して漆黒のゲッターノエルはまだその形を保っている。つまりまだ本気は出していないという事だ。

 

 ゲッター1がゲッターノエルの背後を取る。無論、反応した相手のトマホークが引き裂いた。しかしそのゲッター1は残像だ。

 

『ゲッター2並みの速度だと?』

 

「違う、よく見やがれ」

 

 引き裂いた残像は確かにゲッター2のものであった。その事実にゲッターノエルのパイロットが震撼する。

 

『……僅かな間に、もうゲッターチェンジを』

 

「言ったろうが。目ぇ瞑ってても、おれ達は合体出来るんだよ」

 

 ゲッターノエルが反応する前に振り上げた蹴りがその機体を打ち据えた。ゲッターノエルはトマホークを振り翳しゲッター1に向けて突き出す。拡散したゲッター線が膜のように展開し、ゲッタービームの嵐を巻き起こした。

 

「野郎、味な真似をしてくれるじゃねぇか。負けてらんねぇよな!」

 

 ゲッター1がEトマホークを両腕に保持し機体を中心軸に据えて回転する。巻き起こした暴風域からゲッタービームが乱射された。ゲッターノエルは即座の模倣よりもやってのけると判断したリョウマの判断に恐れを成したようだ。

 

『どうしてそこまで……』

 

「どうしてかって? それはおれ達がゲッターチームだからだよ」

 

 Eトマホークをゲッターノエルに向けて振り下ろす。相手の肩を引き裂いた一撃が赤いゲッター線を血糊のように噴き出させる。しかしゲッターノエルはEトマホークを引っ掴みゲッター1へと攻撃を加えた。トマホークの突き出た部分でジャガー号へと亀裂を走らせる。

 

「ハヤト!」

 

『こっちはいい! お前はそいつとのケリをつけろ!』

 

 仲間の声にリョウマは笑みを浮かべる。

 

「おうよ!」

 

 雄叫びが激震し、ゲッター1の眼窩に宿った瞳孔が輝く。ゲッター1はEトマホークをゲッターノエルの脇腹へと押し込んだ。

 

「お返しだ」

 

『貴様……!』

 

 赤いゲッター線が充填され即座にゲッタービームが放たれる。しかしその光条は空を穿った。代わりのようにゲッターノエルを捉えたのは網状に張った両腕である。変形を果たしたゲッター3が両腕を引き伸ばしていた。

 

『まだ月面での借りを返していなかったな。食らえ、最終奥義! 大雪山おろし、一の舞!』

 

 ゲッターノエルを中心として暴風が巻き起こる。装甲版が捲れ上がったがゲッターノエルの出力ならば逃れられた。それを封じたのは即座に躍り上がったゲットマシンだ。空中で合体し再びゲッター3となったその機体から放たれたのは両手を合わせた形で放たれた手刀である。ゲッターノエルを頭部から叩きつける。

 

『二の舞! 相乗月面割り!』

 

 ムサシの声が響き渡り、ゲッターノエルが赤い光線を発射して逃れようとする。しかし既に布石は打たれていた。ゲッター3は内蔵している全てのミサイルポッドを開け放ち、ゲッターノエルに照準する。

 

『三の舞、怒号針鼠!』

 

 まさしくその名の通り、怒号のようにミサイルが乱舞しゲッターノエルへと突き刺さろうとする。ゲッターノエルは全身を回転させて螺旋エネルギーを巻き起こし、ゲッター線の暴風で相殺した。爆発の光が次々に広がり、ゲッターノエルが中空に躍り上がる。

 

『相当な威力だが、この程度では』

 

「墜ちない、か? ならばこれを食らえ」

 

 ゲッター3が腕の関節部位の全てを開放して両腕を樹木のように広げている。開放された部位それぞれに砲門があり、それら全てが一斉にゲッターノエルを狙い澄ます。

 

「終の舞、超! 大雪山おろしィ!」

 

 それぞれの砲門から放たれたのは威力を低くしたゲッタービームそのものだ。ゲッタービームと大雪山おろしの相乗効果で瞬く間に樹海が赤く炎に染まっていく。再び分離し、ゲッター1へとチェンジする。

 

「これでやっただろう。おれ達は、エンブリオとやらを止めねぇと」

 

 ゲッター1がサオトメ研究所へと帰還しようとしたその時、樹海が割れた。何が巻き起こったのか、整理する時間もない。樹海を割いて現れたのは真っ赤な腕だ。未発達な五指を広げて何かが蠢いている。

 

「これは!」

 

『まさか、これが……』

 

『ゲッター、エンブリオ……!』

 

 あまりにも巨大なそれがゲッター1を掴み、地表の中へと引き込んでいく。抗う事も出来ず、ゲッター1は一瞬で呑み込まれてしまった。

 

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