メタサガ学園   作:ショウマ

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(い○かりやさんの解説風に)

学校生活といえば、勉強はもとより、クラブや部活動などがやはり華でしょうか?

しかし、その何れにも関わってくるのは先生や友人関係。良き関係が築ければ、それは後々までの宝となることも。

ただ、日常の何気ないやりとりで、一歩間違うと……
 
 
 





とある学園の授業風景

 

 

 幾つもの教室が並ぶ廊下を歩く、一組の男女。

 

 否、訂正しよう。

 

 歩いているのは少年だけで、少女の方はフヨフヨと宙に浮かび滑るように移動していた。

 

 通りすがりに視線を横に向ければ、どの教室内でもHR(ホームルーム)が行われている最中だ。

 

 少年の方は小さくない怪我を負っており、まるで一戦交えたかのようにボロボロな学生服姿。その内側に手を入れ、取り出した大量のカプセルを口に運んでは、バリボリと噛み砕いていく。

 

「イテテ……まったく、朝から酷い目にあった」

 

「それは自業自得かと、マスター」

 

 ゴクリと飲み込んだ少年はんたに、少女アルファは冷たい視線を向ける。

 

「家を出る前に、わたしはきちんとマスターに声をかけたはずですが。それなのに、どうして遅刻を?」

 

「あれ? じゃあアルファはきちんと起こしてくれてたのか。……いかんな、全く記憶にない」

 

 はんたはうんうん唸りながら記憶を辿ってみるものの、やはり全く覚えがなかった。

 

「ダメだ。ちなみに、それって何時頃?」

 

「午前四時です」

 

「四時間以上早いだろ! そんな時間に起こされてもすぐに寝直すわ!!」

 

「せめて三時間になりませんか? 四時間では結局いつもと変わりません」

 

「つっこむ所はソコか!」

 

 

 

 はんたとアルファが自分達のクラスの扉を横にずらして中に入ると、どうやら既に担任教師(レバンナ)は出ていった後のようだ。

 

 余計な挨拶(説教)が省けたとばかりに、自分の席に着くはんた。アルファもその後ろの自席に向かう。

 

 はんたは中身の入ってなさそうな薄い鞄を机の横にあるホルダーにぶら下げると、早速机の中にある読みかけの漫画を探し始めた。

 

「おはよー、はんた、アルファ」

 

「おーっす、ミカ」

 

「おはようございます、ミカ」

 

 はんたの前の席に座る女生徒、ピンク色の制服に丸眼鏡のミカが振り返って二人に挨拶をしてきた。

 

「ねえ、はんた。朝はローズさんと()りあったんだよね?」

 

「ああ、かなり危なかったけどな。最後はちゃんとホローチャージと、ダメ押しのAPFSDS弾(※強力な鉄甲弾)を撃ち込んどいたからな。当分はあのケーニヒ使えねぇだろ」

 

「修理するカール君泣くだろうなぁ……。そのローズさんは?」

 

 自分と同じメカニックの道を歩むがため、その心情を思ってミカはローズの弟に合掌する。

 

 そして対戦相手のローズだが、未だに教室にはやってきていない。

 

「ああ、そっか」

 

 そしてあることに気付いたミカは、彼女がやって来ない理由も悟った。

 

 んー? と、漫画を読みながらはんたが反応をすると、ミカは笑いながらその理由を話し始めた。

 

「一時間目は専攻の移動教室だよ」

 

「……って、おーい!?」

 

「だからボクはここに居たんだった」

 

 タハハと笑いながら言うメカニック科の少女(ミカ)に向かって思わず叫ぶはんた。漫画本を机の中に仕舞うと慌てて立ち上がる。

 

 クラスを見渡せば、なるほど。確かに他クラスの生徒達が席に着いており、見馴れた友人達の姿はない。

 

「おい、アルファ!」

 

 と背後を振り返れば、最早そこに人影は無く。

 

「――って居ねぇし! あいつ、一人で行きやがったな!?」

 

「だからー、アルファを相手にスオ理論は止めた方が良いって。絶対に百害以上有って、一利も無いと思うよ?」

 

「今はそんなことを言ってる場合じゃねえ! 急がないと、レバンナ先生にまた蜂の巣にされる!」

 

 そうして武装した大きなサイ型モンスターの如く、予鈴まで一分を切った教室を飛び出していくはんた。

 

 急げ、はんた!

 

 ハンター専攻者の特別教室は十二棟先の校舎にあるのだ!

 

 

     ※ ※ ※

 

 

「……で、何か言い訳があるか? はんた」

 

 授業開始のベルと同時に教室へ、外から窓ガラスを突き破って入ってきた生徒――何故か黒焦げになっているはんた――に、担当教師であるレバンナが冷たく訊ねる。

 

「先生。一つだけ良いですか?」

 

「言ってみろ」

 

 身体から未だに黒煙を上げているはんたに、レバンナは先を促す。

 

「近道に地雷が設置されてたんです。廊下から飛び降りた、丁度真下に。で、爆発にぶっ飛ばされた先にもまた地雷。そのまま連鎖爆発的にここまで運ばれてきたわけですが……あれは誰が?」

 

「わたしです、マスター」

 

「って、またお前か!? アルファ!」

 

 スパッと手を上げた少女(?)に、思わずつっこむはんた。

 

 一度ならず二度までも裏切られたと、はんたは日頃自分がしてきた行いを忘れて恨みに思う。

 

「風紀委員の仕事で朝に回収した地雷ですが、元の用具室に運ぶ時間は無いと判断し、やむなくあそこへ」

 

「いやいや、全然やむなくないだろ!? 明らかに何らかの意図があるぞ、あの設置の仕方は!」

 

「マスターの思い過ごしであると認識しますが」

 

 食って掛かるも暖簾に腕押し、ぬめぬめ細胞に釘のようだ。はんたが何を言ったところで、シレッと受け流されるだけだろう。

 

 そうはんたが歯軋りしていると、当のアルファがポツリと呟いた。

 

「ただ」

 

「ただ?」

 

「保健のミンチ先生から、レポートの提出を急がせるように頼まれておりまして」

 

「意図あるじゃねぇか! しかも殺意か!?」

 

 なに、この子怖い。

 

「二つの事柄に因果関係はありません。マスターの思い過ごしであると認識しますが」

 

「あ~、そうですか……」

 

「よし、もういいな?」

 

 はんたとしてはまだまだ文句を言いたいことはたくさんあるが、それを察しているレバンナがパンパンと手を叩き、強引に話を打ち切らせる。

 

「惜しいとこだが、授業への遅刻は無しか。はんたはアルファに感謝しとけ」

 

「先生! すごく納得がいかないんですが!?」

 

 その訴えに、誰も何も反応しない。世の理不尽さを噛み締める。

 

 そもそも自分が遅刻してきたことが原因だというのは、既に彼の頭の中には無い。

 

「さて、今日の授業だが」

 

 はんたを視線で黙らせたレバンナが、教室内に前回までは無かった機材を顎で示した。

 

「お前らが前にシミュレーターを派手にぶっ壊してくれたんでな? 今回はアルファの協力で、より頑丈な奴を用意した」

 

『おおーーっ!?』

 

『やったーー!!』

 

 一斉に歓声を上げて沸き立つ生徒達に、レバンナも満足げに頷く。

 

「よし! 今日トップの成績の奴に、俺が何かオゴってやる」

 

『オオオオーーーッ!?』

 

 教室内は地鳴りのような声に震えていた。生徒達の思いを示すかのように、部屋中の窓がカタカタと音を立てている。

 

 現役のハンター第一位といっても過言ではないレバンナのオゴり。そんな機会など、望んでも得られるわけではない。

 

 生徒達のやる気は俄然高まる。

 

 自らの戦車データが入ったIDカードをポケットから取り出しながら、口々にライバル達に勝利宣言をしていた。

 

 ちなみにこのカード。扱う生徒達が生徒達なため、非常に頑丈に出来ている。具体的にはサウルス砲の直撃にも耐えられるほど。

 

「はんた! 朝の借りはここで返させてもらうわ」

 

 ローズは雪辱を誓い。

 

「面白ぇ! ローズ、連敗記録を更新させてやるぜ。――レナ、ケン、ヒナタ。お前達にも負けないぞ!」

 

 はんたは好敵手(ライバル)達を挑発する。

 

「フフーン。返り討ち返り討ち!」

 

 二年B組の双璧、“電光石火の手足”を持つレナは鼻で笑い、

 

「楽には勝たせない。オレが倒れる時は……はんた、オマエも道連れだ!」

 

 同じくB組の双璧であるケンは下に向けた親指を突き出す。

 

「レバンナ先生のオゴりには興味があるけどね。僕はほどほどに頑張るよ」

 

 他よりもクラス人数の少ないC組のヒナタはそう言って、肩を竦めてみせた。

 

「ここは何処だ!?」

 

 その時だ。派手な音と共に床の一部が跳ね上がり、下から赤髪の男が飛び出してきた。高等部の制服の襟首には三年を示すバッヂ、ボロボロな灰色のコートを羽織っているこの生徒は――

 

「む……ここは俺のクラスではないな」

 

「ドラムカン先輩? なんで床下から!?」

 

「フッ……そんなの迷っていたからに決まっているだろう? だが……シミュレーターか。久し振りだな。悪いが混ぜてもらうぞ?」

 

 ニヤリと野性味溢れる笑みを浮かべながら、ドラムカンもコートのポケットからカードを取り出してみせる。

 

「先生! 先輩の乱入なんてアリですか!?」

 

 全体の様子を示す大型モニターの前に椅子を置き、さっさと観戦を決め込んでいたレバンナはチラリと教え子の一人でもあるドラムカンを見て、

 

「今ではモンスターが乱入してくる時代だ、構わん。……ドラムカン、どうせ今年も出席日数足りてないだろう?」

 

「絶望的なまでに」

 

「なら、全勝すればグラナトス(担任)にかけあってやるぞ? 話を聞くかは知らんが」

 

『アイツのことだ、たぶん無理だろうがな』と、他人の話を聞かない性格の同僚の顔を思い浮かべて、レバンナは脳内で一人呟く。

 

「よし! お前ら、早く負けろ! 俺のチョッパー(改造バイク)が火を吹くぜ」

 

「うわ、先輩が本気になった!?」

 

「別に良いじゃない。相手にとって不足なしってもんでしょ? それに、勝つのはアタシよ!」

 

「レナ。お前のその自信はどこからくるんだ……」

 

「僕にも少し分けて欲しいよ」

 

 授業に乱入者というこの学園では珍しくもない出来事はあったものの、おかげで教室内は激しい熱気に包まれた。

 

 シミュレーターの筐体はきちんと全員分が用意されており、員数外のドラムカンは教官用の物を使うように指示を受ける。

 

 仲間達は喜び勇んで向かう中、はんたもいそいそと筐体に向かいかけていたのだが、

 

「なあ、アルファ」

 

 足を止めて、ずっと頭に引っ掛かっていた疑問を先に消化することにした。

 

 これから行われる戦いが死闘となるは必至。すなわち、重要となるのは集中力だ。気になったままにしておくと、大事な場面で支障をきたすかもしれない。

 

 主人の一歩後ろを追従するようについてきていたアルファは、はんたの呼びかけにすぐさま応じる。

 

「どうかしましたか、マスター?」

 

「いや、今は専攻の時間だよな?」

 

「そうですね。一、二時間目を通して」

 

「ここはハンター科の教室だよな?」

 

「お疲れでしたら休息を推奨いたしますが?」

 

「いや、それはいい。それで、なんでソルジャー科(・・・・・・)のお前がここにいるんだ?」

 

 はんたのごく当たり前の質問に、何故かアルファは悩む仕草を見せる。

 

 ややあって、アンドロイドの少女は“ポン”という効果音付きで手を叩いた。

 

「そういえば、朝に惰眠を貪られてたマスターはご存知ありませんでしたね」

 

「ん? 何をだって、今ナチュラルになじらなかったか?」

 

「マスターの思い過ごしであると認識しますが。それでこのシミュレーターの導入にあたり、わたしは今日一日、授業に参加して動作チェックをするように頼まれたのです」

 

「ああ、なるほどな」

 

 それなら納得だと、疑問が解消してスッキリしたところで筐体に向かおうとしたはんた。

 

 だが、

 

「あ、それじゃあアルファはクルマは何に乗るん――ぶっ!?」

 

 再び歩き始めた所で、誰かの背中にぶつかってしまう。

 

 見ればローズやレナ、ケンにヒナタ、ドラムカンすらも足を止めていた。

 

 全員が全員、高額の賞金首(とても強いモンスター)に挟み撃ちを受けたかのような緊迫した表情をしており、額には玉のような汗が浮かんでいる。

 

「な、なんだ? おい、みんなどうしたんだ?」

 

 これはただ事ではない。

 

 はんたの勘もそれを告げていた。今すぐ逃げろと、頭の中で激しく警鐘が鳴り始める。

 

「はんた、アレをご覧になって」

 

 ローズの震える色白の指先。その方向に視線を動かしていけば、

 

「シミュレーターだろ?」

 

「バカ! よっく見なさいよ! ほら、ココよ、コーコ!」

 

「イデデデデッ!? こ、こら、レナ! 首を引っ張るな! 抜けたらどうするんだって、ん? なんだこりゃ?」

 

 いきなり横から伸びてきた腕に首(襟首ではない)を掴まれ、グイグイとレナに筐体の間近まで引っ張られていく。そうして、目に入ってきたのは一枚のシール。

 

 描かれているのはデフォルメ化された人物のイラストだ。

 

 それを見たはんたの頬が引き付けを起こす。

 

「あ、ああ……」

 

 絶望的な声が漏れ、瞬く間にはんたの額にも玉のような汗が浮かぶ。それが頬を伝っていくのを感じ取りながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 頭頂部は禿げ上がり、側頭部に僅かばかり残った白髪。目線を隠す白く塗られた丸眼鏡と、不吉さしか覚えない朗らかな笑み。

 

 間違えようがない。第一級危険人物(保険医)だ。

 

 ギギギッと、油の切れた扉の如く首を回したはんたは、一人淡々とシステムを起ち上げている人物へと顔を向けた。

 

「あるふぁサン。コレハイッタイナンデセウカ?」

 

「レバンナ先生がシミュレーターを探しているという話を聞き、それなら現在は使用していないティアマットのソレを薦めました」

 

 超弩級陸上戦艦ティアマット。アルファの本来の住居であり、はんた達の遊び場でもある。

 

「ソレデ?」

 

たまたま(・・・・)ティアマットのメンテナンスに来ていただいていたバトー博士、ツバイバト博士、サガバト博士、タンクレディ博士、伝説博士に相談したところ、移動させても良いとのことでした」

 

「…………」

 

 悪寒がした。背中を毛虫が這うなんて生易しすぎると思うくらいに。

 

(なにそのメンバー? 彼らを呼んで何するつもりだったの? ねえ? 明らかにメンテナンスじゃないよね? てか、友達いない博士は同一人物じゃなかったの? なんで三人いるんだよ……)

 

「そして機材を移動させている時に、たまたま(・・・・)ミンチ先生が通りかかりまして、提出の少ないレポートへの協力を頼まれました」

 

 モウダメダ……オシマイダ。

 

「どうした、お前達? あんなに楽しみにしていたんじゃないか。……さっさと乗れ」

 

 いつの間にか教室内の窓や扉は鉄格子で封鎖され、(マスターキー)はレバンナが指で回して遊んでいる一つだけ。

 

 ドラムカンが出てきた床下への道も、ご丁寧に鋼板で封鎖されている。

 

「ちなみに、乗らずに最下位の奴は授業放棄と見なすからな? 俺の自慢のハンター(生徒)達の中にそんな奴はいないとは思うが」

 

 この流れだと、どう考えてもロクでもないクエスト()が言い渡されるだろう。

 

 つまり……選択肢などない。

 

 死ぬか、生きるか(デッド オア アライブ)

 

 二つに一つ!

 

「や、やってやろうじゃない! 別に乗ったら死ぬわけじゃないんだし!」

 

 声を張り上げ、レナは筐体の一つに入るとテキパキと起動し始める。

 

 愛車エレファントのIDカードを挿入しながら、呆然として動かないはんた達を見やると、

 

「なに? あんた達はヤらないの? 臆病風にでも吹かれたのかしら~、それでもハンターなの?」

 

 小憎らしい笑みと共に放たれる挑発に、他の生徒達も動き始める。

 

「や、やるさ! オレが逃げるわけないだろ!」

 

「そうだよね、レナの言う通りだよ。まだ、死ぬと決まったわけじゃない」

 

「私達の不安を駆り立てるために、アルファと先生達が仕組んだとも考えられるわね」

 

「ま、俺は多少の理不尽には慣れてるがな」

 

 ケンにヒナタ、ローズ達も起動に取りかかる。各人バギーにティラノタンク、ケーニヒスティーガーなどのデータを入念にチェックしているところを見ると、やはり手持ちのデータで一番強いのを選んだようだ。

 

 ドラムカンもクールに肩を竦めながら、愛バイクチョッパーのデータを呼び出していた。

 

 彼ら彼女らばかりが目立つハンター科だが、当然他にも生徒はいる。実力は大きく離されている残りの生徒も、皆やる気を出して筐体に入っていた。

 

 実力だけで勝利を得られるわけではない。戦場では何が起きるか分からないのだ。虎視眈々とチャンスを狙っていくつもりである。

 

 準備を終えた全員が、ただ一人動かない生徒(はんた)を見た。

 

『早く来いよ。一緒にイこうぜ?』

 

 ハンター仲間として、ライバルとして競いあっている全員の視線がそう物語っている。

 

 はんたはその声なき声を聞き、フッと笑みを浮かべた。

 

――何を怖がる? 仲間達は既に戦場で、自分が来るのを待ってるんだ!

 

「よっし! トップの座は戴くぞ!」

 

 空いている残り一台の筐体に入り込むと同時に即座に起動。ティアマットでも遊んだことがあるため、手慣れた様子でウルフのカードを挿入、確認までの作業を終える。

 

 シミュレーターでのクリア目標は様々だ。

 

 それは先生(レバンナ)が用意したモンスターの討伐だったり、目標物を定めて特定の手段をとれ、ということもある。

 

 モンスター討伐の際は単独で動くのも、近くの仲間達と協力して戦うのも有りだ。その際は交渉の仕方にもポイントが加算される。

 

 ただ一人の勝者を決めるサバイバル戦の時は乱戦に次ぐ乱戦で、次の授業を受けていたはずが放課後だった時は不思議に思ったことだ。

 

 何がくるのか?

 

 操縦席の正面に据えられたモニター。真っ暗だったそこに荒野が映し出される。

 

(荒野か……。隠れるところは無し、近くに他の連中もいない)

 

 はんたは素早く状況を確認する。

 

 小さな電子音が鳴り、モニター上に今回のお題目が表示される。

 

『目標物を破壊せよ』

 

「良し!」

 

 サバイバルより余程楽な指示に、思わずガッツポーズを取る。

 

 これならば、ローズやレナ達との協力プレイだって出来るからだ。

 

 標的の破壊は出来るとして、得点に差をつけるのは交渉術ということになる。

 

 問題は、孤高を好むドラムカンがソロでチーム並の成績を叩き出すことだ。状況によっては、彼への妨害が必要になる。

 

「さて、目標は――」

 

 突如、近くの地面が爆発により吹き飛んだ。

 

「遠距離砲撃かよ! 標的はビッグキャノンか!?」

 

 操縦桿を握り、ペダルを力強く踏み込む。火の点ったエンジンがそれに応えると、深紅の戦車は勢いよく前へと飛び出した。

 

 はんたは前方を注視しながらも、片手でレーダーを操作。表示範囲を遠距離へと拡大していく。

 

 いくつかの光点――仲間達の戦車は映るが、目標は未だに表示されない。

 

 その間にも周囲では執拗な砲撃が続いており、光点は一つ、また一つと消えていく。

 

「超長距離全方位射撃とでもいうのか!?」

 

《マスター》

 

「!? アルファ?」

 

 はんたは操縦桿を巧みに操作して、執拗に飛んでくる砲弾を避けながら通信端末をオンにする。

 

「アルファ、無事か!?」

 

《はい。今のところは無傷です》

 

「うん、それなら相手の位置は分かるか? こう続けられると、結構キツい――ぞっと!」

 

 会話を続けながらも、集中力をとぎらせることなく回避に専念する。

 

 爆発の衝撃により装甲は無傷ではないが、まだまだ掠り傷程度。戦闘への支障はない。

 

《でしょうね。こちらの位置からは正確に掴んでいますが》

 

「? なんか、会話が変じゃないか? アルファ」

 

《そうですか? では、目標物の座標値を示すデータを転送しますね》

 

「おう! ついでに、ソレをローズ達にも送ってくれないか? みんなで狩ろうぜ、ってな」

 

 都市内で流行の<マックスサーガ・オンライン>における、仲間への誘いの言葉を言伝てる。

 

《…………了解です、マスター。みんな()狩りますね》

 

「………………」

 

《………………》

 

 違和感と言葉に出来ない強烈な“ナニか”に、はんたはゾクリと背中を奮わせる。

 

 まるで、戦車を降りたままウッカリ――強さがオカシイ魔物が出るゴミ山に足を踏み入れてしまったような、そんな気分だ。

 

 無言のまま、アルファから送られてきた座標を呼び出し始める。

 

《そういえば、マスターはわたしのクルマをお尋ねでしたね》

 

「…………ああ」

 

 返事はしてもしなくても一緒な気がしたので、答えるだけ答えることにした。

 

《わたしのクルマは――》

 

 データが表示される。

 

 巨大な建造物。

 

 それも、そんな巨体でありながら戦車を優に上回る速度で、コチラへと急速に近付いてきていた。

 

 はんたは即座に進行方向を変え、仲間達への救援メッセージを叩き始める。

 

「ティ……」

 

《ティアマット伝説・改です》

 

 原型は陸上戦艦というところだけだろうか?

 

 モニターに映っているソレには、形も用途も不明な武装が施されている。

 

 甲板には他にも目に優しくないカラフルな大砲をいくつも生やしているが……それよりも、先程から視界の隅に校医の助手(イゴール)が入る方が気になっていた。

 

 このタイミングで、ここで何をしてるのか?

 

 考えたくもない。

 

 そんなはんたに、アルファの声は優しく囁く。

 

《申し訳ありません、マスター。生徒の出口は一人用なんです》

 

 

 

 二時間目が終わる頃、ハンター科の生徒達は全員激しく疲弊しており、不思議に思った他の生徒が訊いても、何があったかを語る者は誰一人いなかったという。

 

 余談だが、放課後には保険委員会から『今回のレポートの提出は無事に終了した』という放送が流れた。

 

 






※ ちなみに、シミュレーターの勝者は最後まで閲覧された貴方の改造度次第です。明確な勝者は決めておりません。

有利なのはやはりボスでしょうが、それだけで決まるほど素直な世界でないのは、あの世界を知る皆様の知る通りです。
 
 
 
メタサガ学園用具委員会

学園一、決まりが緩い場所。必要な資材はどんどん購入リストへ。活動費の要求はいつも必死。
(ただし、購入後は管理を把握していない)



メタサガ学園メカニック同好会

学園ー、趣味に走っている場所。予算もメンバーそれぞれが集めてくるため、計上活動費は常に0。おかげで生徒会も口出しが出来ない。

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