居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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その14 庭師と哨戒天狗

突然ではあるが、夜雀亭も毎日営業しているわけではない。夜雀亭が開業された当初は毎日営業しても問題がない客数であったが、今では毎日客が来るような人気の店である。そのため昔のように店を開いたら体が壊れると判断した二人は月に二日休みを入れることにした。それは半月の日である。

その半月の日には普段できないことを二人はする。店主は騒霊や山彦たちとともにバンドをし、従業員は人里などで剣の指南をしている。

 

ある月の上弦の日。いつものように店主を見送った従業員は店の前で剣術の指南相手を待っていた。

 

「鷲田さん、おはようございます」

「今日もよろしく頼む」

「妖夢に椛、おはよう。今日はどうするんだ?」

 

やってきたのは半人半霊の魂魄妖夢と白狼天狗の犬走椛の二人であった。彼女らは夜雀亭が休みとなる日のうち上弦の日の時に従業員に剣術の指南をしてもらってる。

 

「今日も組手方式でお願いします」

「私もそれで頼む」

「了解。どっちからする?」

 

その言葉を聞いた二人は互いに向き合い、自分の拳を握る。そしてそれを構えて、

 

「「最初はグー、ジャンケンポン!」」

 

妖夢はチョキ、椛はグーを出した。

負けた妖夢が残念そうに夜雀亭の入り口付近に座る横で、勝った椛は尻尾を振りながら顔は澄ましたままで従業員の方を向く。

 

「それじゃ私からだ。早速始めてもいいか?」

「問題ないぞ」

 

その言葉を開戦の合図と捉えた二人は互いに距離をとり、睨み合う。

椛はすぐさま抜刀する。居合を得意とする従業員は鞘に刀を収めたまま互いの呼吸や間合いを読みあう。

そうして睨み合いが二、三分たったころ従業員が間合いを詰める。

突進に対し椛は必要以上に驚くことはなく、相手がどういうルートで自分に切りかかってくるかを見極め、それに応じた防御方法をとる。

しかしそれすら見極めていた従業員はその防御をすれすれでかわし、椛に攻撃する。

自分の防御が破られた椛は慌ててその攻撃を躱そうとするもバランスを崩す。

倒れこんだ椛に自分の獲物を突き付けた従業員は一言つぶやく。

 

「一本」

 

 

椛を立たせた後、従業員は指導を始める。

 

「突進の軌道を読んだことに関しては何ら問題はない。その呼んだ軌道もな。けど、それだけにこだわって他の可能性を捨てたのはダメだな」

「そうか…」

「けど他の可能性について考えて最初に読んだ軌跡への対応がおろそかになっては本末転倒になるから、そこら辺のさじ加減だな」

「ではどうしたらいいのだ?」

「分からない、というしかないな。そこら辺は実戦を重ねて感覚でつかむしかないだろう」

「実戦あるのみ、というやつか」

「ああ。こういったものは様々な戦い方の人と戦うと成長しやすいから、俺以外の人とも戦うことをお勧めするぞ」

「鷲田とだけじゃダメなのか?」

「それは偏った感覚しか生まないからおすすめは出来ないな」

「ダメなのか」

 

そう言った椛は少ししょげかえる。尻尾も心なしか垂れ下がっているように見える。

 

「自分以外の人とも戦うなら別に俺と戦うことに問題はないからな。そこは勘違いしないでほしいんだが」

「本当か!?」

 

尻尾を大きく振って椛が顔を上げる。

 

「今まで通り月一程度ならいいぞ。そういうことだから、早く順番変わってくれ。そこにいる半人半霊の目が座っててそろそろやばいから」

「む、妖夢すまなかった。交代だな」

「いいですよ。全然気にしてませんし。さぁ、早速始めましょう」

 

そう言うや否や自分の獲物を両方とも鞘から抜き去り、構える。

椛がその場を離れたのを確認すると妖夢は切りかかる。

慌てて抜刀した従業員はその怒濤の攻撃をしのいでいく。

いつもに比べて荒々しく、速い攻撃に苦戦を強いられる従業員。

このままだとジリ貧だと判断した従業員は大きく飛び退く。

妖夢はそれに対して即座に間合いを詰める。

そこまで予想した従業員は自分からも間合いを詰めてすれ違いざまに攻撃する。

その攻撃を受けた妖夢は我に返って降参した。

 

「参りました」

「危なかったが、勝てたな」

「で、どうでしたか?」

「正直あの攻勢には負けるかと思うほど激しいものだったぞ」

「そうでしたか!」

「けど、それはあくまでも防御しようとしたときの話。逃げようとしたときはそこまで苦労せずに逃げれたから、相手の逃げ場を塞ごうとする攻撃を身に着けるべきだな」

「それって難しくないですか?」

「ああ、難しい。剣という武器の性質上一方向からしか攻撃できないからな」

「ならどうすれば?」

「本当は逃げられる前に一撃で倒すのが一番だが、それが難しいなら逃げられることも考慮しながら攻撃する。さっきも言った通りそれにかまけて本末転倒な事態になったらいけないからな」

「てことは経験あるのみと?」

「そうだな。それじゃ早速もう一本ずつ行こうか」

 

二人の少女は元気よく応えた。

 

「「よろしくお願いします!!」」

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