居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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今回もリクエスト回。

それではどうぞ。


その18 運命と破壊と司書

 

「は?紅魔館に来てほしいって?」

 

従業員が素っ頓狂な声を上げる。

その原因は目の前にいるメイド服に身を包んだ少女、十六夜咲夜の注文であった。

 

「はい。その腕を紅魔館でふるってもらいたいんです」

「店はどうするんだ?」

「団体予約という制度を使えば無問題です。『団体予約、ただし実質出張みたいな!』ってやつです」

「そうするぐらいならそっちから来いよって思うんだが」

「紅魔館に住んでいる全員にこの味を味わってもらいたいので。さすがに全員紅魔館を出払う訳にはいかないでしょう」

 

用意周到に問題点をつぶしていく敏腕メイドに従業員は舌を巻くばかりである。

観念したのか従業員が頭を掻く。

 

「分かったよ。けど、ミスティアに聞いてみないことにはその提案に乗るわけにはいかないからな」

「その点は大丈夫です。店主さんには話を通してますから。本人も乗り気でしたよ」

 

ここで従業員は最初から自分に断るすべがないことを悟る。

 

「なら最初からそれを言えよ。で、いつ予約するんだ?」

「一週間後です。食材と調理道具はこちらで用意しますので、あなた達は午後四時に来てもらえれば結構ですので。ではまた」

 

そう言ってメイドはその場を去った。

 

 

 

一週間後。

 

「いつみても紅いよな。この館」

「目がちかちかしますね」

 

従業員と店主の二人はそれぞれの愛用の包丁を携えて霧の湖の畔にいた。

 

「あ、鷲田さんにみすちーさん、今日は態々ありがとうございます。皆さんお待ちですのでどうぞこちらへ」

 

門番がそんな二人の姿を見つけて、呼びかける。

呼ばれた二人はその誘導に乗って紅魔館の門をくぐった。

 

 

「今日は我々の予約を受けていただき、ありがとうございます」

 

門をくぐった二人を出迎えたのは執事服に身を包んだ少年。

従業員はその少年に見覚えがなかった。

 

「あれ?君は…?」

「初めまして。紅魔館の執事になりました、阿部青夜と言います。以後、お見知りおきを」

「君が噂の新執事か。初めまして。夜雀亭の従業員、鷲田進だ」

 

二人は握手を交わす。

握手を交わした後、執事は二人を厨房へと案内した。

 

 

「ではここが厨房です。夕食は八時からですので、それまでに完成してるというなら紅魔館の中を自由に歩き回っても構いませんので。それでは」

 

そうして執事は去っていった。

 

「ああいわれたけど仕込みからするなら今から始めないとな」

「そうですね。早速始めましょう」

 

自分の相棒を取り出した二人は早速食材と向き合った。

 

 

仕込みがひと段落したころ。

厨房に一人の少女がやってきた。

七色の翼を持った金色の髪の毛のその少女は二人に対して嬉しそうに話しかける。

 

「あなた達が今日の料理を作ってくれるという人?」

「そうだけど、お嬢さんの名前は?」

「私、フランドール・スカーレットというの!よろしくね!」

「フランドール・スカーレット…あぁ、『妹様』のほうか」

 

少女が言った名前に憶えがあった従業員は独り言ちる。

 

「私のこと知ってるの!?」

「うん、咲夜さん…ここのメイドが言ってたから」

「そう!!あ、あなたの名前は?」

「まだ言ってなかったな。俺の名前は鷲田進。それであっちにいるがミスティア・ローレライだ。よろしくな」

「鷲田さんとミスティアさんね!覚えたよ!」

「おお、偉い偉い。そういえば、フランドールちゃん、ここにある大量の納豆って何?」

 

思い出したように鷲田が指さしたのは山ができるほど積み上げられた藁の束。

吸血鬼の館に大量の納豆があることに違和感を感じた従業員はフランドールに聞く。

 

「そのネバネバしたもの?それは、お姉様の好物だから常備してるの」

「フランドールちゃんは好きじゃないのか?」

「うん。ネバネバしてて、臭くて、糸を引いてて…思い出しただけで鳥肌が立ってきた…」

「そっか、ふむ。どうしたものか…」

 

フランドールの様子からよっぽど嫌いなんだろうな、と従業員は思った。

 

「納豆スパとか考えてたけどどうしようかな…」

 

従業員が悩ましげにそう呟くのをフランドールは聞き逃さなかった。

 

「料理に納豆は入れないでね!せめて自分の分だけでもいいから!」

「分かったよ。フランドールちゃんの料理には入れないであげるよ」

「約束だからねー」

 

そう言い残してフランドールは去って行った。

 

そんな一幕もあった調理時間も終わり、夕食の時間がやってきた。

食堂に料理を運ぼうとした二人に声がかかる。

 

「お二人は料理を運ばなくて結構ですよ。私たちがしますので」

 

声をした方を向くとそこにはメイドと執事が立っていた。

そして二人はテキパキと料理を運び始める。

手持無沙汰になった二人は食堂に向かった。

 

「挨拶が遅れてごめんなさいね。私はレミリア・スカーレット。この館の主よ」

 

そこで出迎えたのは幼き吸血鬼、レミリア・スカーレット。

彼女はカリスマたっぷりの様子で二人を出迎えた。

 

「初めまして。鷲田進と言います」

「ミスティア・ローレライです」

「あんたたちが咲夜の言ってた店の二人ね」

「咲夜さんはなんて?」

「どんな料理も作れる料理人がいると彼女は言ってたわ。咲夜がべた褒めするなんて珍しいことよ」

「それは恐縮です」

「ま、今日はゆっくりしなさい。夕食が終わったら紅魔館の中を自由に歩き回ったらいいわ」

 

そういってレミリアも席に着く。

レミリアが座ったタイミングで夕食が全て運び込まれ、紅魔館の夕食が始まった。

 

イカスミスパゲッティをメインにした夕食会は全員が満足する物となった。

そのあと言われたとおりに二人は紅魔館を散策していた。

 

「ここが大図書館か」

「本がいっぱいあるって初めて見るからドキドキします」

「外では結構見るけどな」

 

二人が中に入ると出迎えたのは大量の本、本、本。

幻想郷では滅多に見ない光景に息が漏れる。

 

「あら、あなた達は先ほどあった…」

 

入り口近くでぼーっと立っていると背中に黒い翼をはやした少女がやってきた。

彼女に対して二人は本日何度目かの自己紹介をする。

 

「鷲田進だ。でこっちがミスティア・ローレライ」

「私はここの司書をさせてもらっている小悪魔です。こあとでも呼んでください。そうそう、夕食おいしかったですよ」

「ありがとうな。それでここの司書をしているって?」

「言ってもただ単に本の管理をしているだけです。実質的な支配者はパチュリー様ですよ」

「ああ、いや。そうじゃなくてな。ここの本を借りることができるのかと思ってな」

「出来ますよ。私かパチュリー様に一言言ってしっかり返してもらえるなら」

「ふーん。ならなんか借りていこうかな…」

 

そう言って従業員は図書館の奥に入っていく。

慌ててそのあとを店主がついていく。

 

まだ夜は始まったばかりである。





初の2000字越え。

レミリアやフランドールはともかく、こあが紅魔館を離れて居酒屋に来るのか?と考えた結果こうなりました。
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