「このキャラとの絡みが見たい!」というのがあればぜひご一報ください。
雲も月もなく、星がきれいに散りばめられたそんな夜空。日付が変わるか変わらないかのその境目の時間、夜雀亭の二人は小休止していた。
その日の夜雀亭は団体客が予約をとっており、ついさっきその最後の客が帰ったところ。そのため、普段はもう閉店作業に入っているはずの二人も今日はカウンターに伏せていた。
「やっと最後の客が帰った~」
「久しぶりの団体客だったからね。もう食材残ってないんじゃない?」
「あぁ。豆腐と米しか残ってねぇや。冷奴はちょっと食べた気にならないし、揚げだし豆腐でいいか?」
「進君が作ったものなら何でもいいよ」
「おぅ…うれしいこと言ってくれるじゃないか…」
少し照れた従業員が厨房に立って料理を始めようとしたとき、店の入り口が開いた。
「すみません、今やってます?」
そこからのぞき込んできたのは白い帽子に紫色のワンピースを着た一人の少女。その少女はカウンターに座っている少女の背中に生えている翼を見て小さくつぶやいた。
「うわ、羽が生えている…でもあれってどう見てもコスプレだよね?さすが夢の世界、なんでもありなのね」
「お客さん、どうかしました?」
「いえ、何でもありません。それよりも今ってやってますか?ここら辺ってこういった食堂もないから困っているんで…」
「やっていないと言えば嘘になりますけど、今は丁度食材を切らしていましてね。揚げだし豆腐ぐらいしかできるものはありませんけど、それでもいいですか?」
「あ、いいですよ。豆腐は好物ですので」
「そうですか。ちょっと待っててください。揚げだし豆腐一つ追加でお願いねー!」
そう店主が厨房に声をかけ、威勢のいい声が帰ってくるのを確認してから店主は少女に向き直る。
「それであなた。見たところここは初めてかな?」
「この店は初めて訪れるわ。そもそもこの世界に店があるなんて知らなかったし」
「え?あなたってがもしかして外来人?」
「外来人が何なのか知らないけど、この世界の生まれじゃないという意味で使うのなら私は外来人だよ」
「そっかー。それならしょうがないね。ここは『居酒屋・夜雀亭』。人妖問わず料理を提供する居酒屋よ」
その言葉を聞き少女は顔を顰める。
「妖怪にも料理を提供するんですか…?」
「流石にルールを理解できないような妖怪には出さないわね。そんなことをいうなら私もそこで料理を作ってる彼も人間じゃないよ」
「え、その羽って本物の羽!?」
「そうですよ。何なら触ってみます?」
店主の提案に少女はおずおずといった調子でうなずく。恐る恐る触っていると普段から手入れされてるその羽の感触に少し驚きつつ撫でるのをやめない。
「うわ、すごいきめ細やかな羽…手入れ大変そうですね」
「毎日しているとそのうち慣れるものですよ」
少女が羽を撫でていると、従業員が料理を運んできた。
「お待たせしました。揚げだし豆腐です」
「料理も来たし食べましょう。ほらその手を放して」
料理を食べている間にも話がやむことはなく、気づいたら三人ともそれを食べ終えてしまった。
「それじゃ、お代金はいくらですか?」
そう財布を取り出そうとする少女に対して店主と従業員は押しとどめる。
「いや、まかない料理に限りなく近いものですし、お代はいいですよ」
「そう。でもなんか悪いし、やっぱり払うわ」
店主と少女が払う払わないの問答が行われているのを見て従業員は息を吐き、間に入る。
「ならこうしましょう。これはいったんツケにしておいて、次来たときに払えばいいってことにしておきましょう」
「確かにいい案ね。ならそうしておくわ」
「むう。でもそうしておいた方がいいのかな」
その後少女が帰り、二人は閉店作業を進めようとしたとき、また入口が開いた。
「今やってます?」
そこにいたのは白い帽子に紫を基調としたドレスを着た妖怪。その妖怪、八雲紫は厨房の二人に対してこう話した。
「あら、もしかして店を閉じようとしていたところかしら?」
「まぁそんなところです。今日は団体さんも来ましたし、もう食材も残ってないので、
「お豆腐、あるでしょう?」
店主の言葉は紫の声に遮られる。確かに厨房にはまだ豆腐が半丁程残っている。
またスキマでも使って見ていたのかと店主と従業員は思い、答える。
「確かに豆腐は少しだけ残ってますけど、どのような料理にしますか?」
「冷奴でいいわ。二人に無理させたくないしね」
まぁ冷奴ぐらいならと思った従業員はサッと冷奴を作り上げる。
それを少しづつつまみながら紫は呟く。
「そういえばさっきお客さんが来たでしょう?」
「確かに来ましたが、それがどうかしました?」
「彼女がツケにしたお代、私が払うわ」
「え?だからあれは彼女のツケであなたが払う理由は…」
「彼女には私が伝えるから、ね?お願いするわ」
そのあとしばらく紫と店主の間で問答が続いたが、先に折れたのは店主の方。
「分かりました。そこまで言うならあなたが払うということでいいでしょう」
「うん、ありがとうね。はい、これ合わせたお代ね」
二人分のお金を払った紫はお得意のスキマで店を後にした。
竹林のはずれに出てきた紫は空を仰いだ。そして満天の星空を眺めて独り言ちる。
「あの時の私は夢だと思っていたけど、現実の出来事だったのね」
皆さんは豆腐が一丁あったらどう料理しますか?