居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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初の一話完結ではない話です。
分量は普段と変わりませんが。



その26 狐と夜空と境界・壱

 

8月某日。都内某所。

駐車場の一角に二人の姿はあった。

 

「へ~。これが今回の車か」

「あぁ。最近こっちで流行りのハイブリッドカーというやつらしい」

「俺があっちに来た時は高嶺の花ぐらいだったけど、進んだんだな」

「それじゃ、これが免許証で、こっちがこっち側の通貨入りの財布だ」

「はいはい。じゃあ、早速行こうか」

 

鷲田進と八雲藍の二人は車に乗り込む。

二人の衣装はいつもとは違い幻想郷における外の世界でも違和感のないものを着ている。

藍に至ってはトレードマークの耳と尻尾も隠しているため、傍から見たら男女二人組がドライブに行こうとしている風景である。

会話を聞けばそんなことを思いもしないだろうが。

 

助手席に乗り込んだ藍は運転手に目的地を聞く。

 

「それで今回はどこに行って酒を調達する予定なんだ?」

「どこでもいいんですけどね…東京をぶらついて適当に決めるか」

「つまりは、いつも通りということだな」

「そう、いつも通り。じゃ、早速行きましょうか」

 

酒を調達する二人の旅が始まった。

 

車を走らせて二十分位経過したころ。

運転手はとあるものを見つけた。

 

「あれってヒッチハイクか?」

 

彼が見つけたのはスケッチブック片手に立ちすくんでいる一組の男女。

スケッチブックに書かれているのは『Go West.』の文字が書かれていた。

 

「みたいね。拾う?」

「面白そうだし、拾ってみるか」

 

二人の意見が一致したため、進は車を寄せた。

まさか車が寄ってくるとは思っていなかったろう二人組は驚いた顔で車を見ていた。

 

「二人はどこまで?」

 

助手席の窓ガラスを下げ、藍が話しかける。

その声に二人はおずおずと答える。

 

「取りあえずは京都に行こうかなと思っています」

「取りあえず?最終的な目的地じゃないのか?」

「京都で大学の友人を拾ってから九州に行こうと思っています」

「九州か。ちょっと運転手に聞いてみるよ」

 

「京都の後九州に行くらしいんだと。どうするか?」

「九州?今回は焼酎にするか」

「なら乗せていくということでいいのか?」

「いいぞ。旅は道連れ、世は情けというしな」

 

「九州まで乗せてやるってさ」

「途中で京都に行きたいんですけど…」

「それも含めてオッケーらしい。さあさ、乗った乗った」

 

藍に促されて二人は車に乗った。

 

「「お願いします」」

「いいよ。それで二人、いや三人は九州まで何をしに行くんだ?」

「パワースポット巡りです」

「九州でパワースポットて言ったら、どっかの神様がひきこもったところとかか?」

「あ、そこです。そこを中心に回ってみようかなと思いまして」

「それは面白そうだな」

「はい、とっても面白いです!」

 

そうして追加で二人を乗せた車は走り出した。

 

高速に乗ってしばらくしてくると四人の間の空気もなごんでいた。

自己紹介も終わり、二人はそれぞれ滝川巧と宇佐美蓮子とそれぞれ名乗った。

 

「へぇ。三人は同じサークルなんだ」

「はい。京都の大学にある秘封倶楽部というサークルに所属しています」

「とは言っても、三人しかいない小さいサークルなんだけどね」

「小さくてもなんかサークルに入ってるだけで大学生活は全然違ってくるからな。いいことだ」

「鷲田さんと八雲さんは何のサークルに入っていたんですか?」

「俺は剣道部だったな。藍は…サークルに入ってはいなかったな」

「意外。二人とも同じサークルに入っていたと思ってたわ」

「どうしてそう思うんだ?」

「鷲田さんと八雲さんって付き合ってるとかそんな関係じゃないのかなぁ、なんておもったんで」

「私と進はそんな関係じゃないぞ。第一、進には妻がいるしな」

「え!?鷲田さん、結婚しているんですか?」

「おうよ。可愛い妻だぞ。そういう二人はどうなんだ?」

「ただの幼馴染です。それ以上でもそれ以下でもありません」

「随分とはっきり言うんだな…」

「小学校のころからずっと言われ続けたので、若干条件反射に近いものになっているんです」

「そうそう」

「否定しているみたいだけど、二人とも顔が赤いように見えるんだが。私には」

「「え!?」」

「冗談だ」

 

助手席で笑う狐に翻弄される二人であった。

 

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