「皆、今日の宿は列車になった」
目的地の神社がある町に近づいてきたとき、運転手の進はそんなことを言った。
「寝台列車に泊まるということですか?」
「電車には乗らないぞ。そういう宿に泊まるということだ」
「列車を模した宿に泊まるということか?」
「いや、何でも列車自体が宿になっているらしい」
「珍しい宿もあるんだな」
「近くに温泉もあるらしいからな。面白そうだったし、そこにしたぞ」
そういうと進は今まで走っていた道から外れるようにハンドルを切る。
車が走り始めたのは今までの道とは違いアスファルトで舗装はされている、その程度の道。
舗装はされているので凸凹してるということはないが、急な下り坂のうえに急カーブが続くという道である。
ギアを落とし、慎重に車を走らせながら進はぼやく。
「すっげー事故りそうで怖いなあ、この道」
「冬とか凍りそうで怖い道だな」
「ここって一応南国と呼ばれてるところだぞ。そんなわけあるか」
「でもさっきの看板にスキー場まで何キロかの表示があったぞ。雪ぐらいは降るんじゃないのか」
「だとしても、冬にはここにこねーし」
軽口を藍と叩きあいながら恐る恐る坂道を降りる彼らの車の後ろには地元の人たちのものと思われる車が列をなして連なっていた。
彼らが本日の宿に着いた時、日は傾き、山の陰に入ろうとしていた。
「ここが今日の宿だ」
「この列車に泊まるんですか?」
「そうだな。隣に温泉もあるし、いい宿だろ?」
「隣というか、同じ建物だな」
「そうだな。ちょっと管理人に行ってくるから待ってくれ」
その後、滅多に味わえない体験を堪能した五人であった。
翌日。
神社に秘封倶楽部の三人を降ろした進と藍は地酒を探しに道の駅へと向かった。
日本屈指のアルコール消費量を誇る都道府県らしく、そこには豊富な種類の酒が置かれていた。
「何だこの量」
「お土産店の一角が酒で埋まるなんてびっくりだな」
「酒の種類は、焼酎に焼酎に…焼酎ばっかじゃないか」
「あ、ここにワインがあるな」
「何だこのワインの場違い感。赤も白もあるけど、周りが焼酎ばっかだからかな」
「赤も白もと言えばこの銘柄も赤白黒三色あるぞ」
「何が違うんだ?」
「私にわかるだけないだろ。それで、どの酒を買っていくんだ?」
「ならこの三種類の酒を一本ずつと、ワインもほしいな」
「一本で足りるのか?」
「…二本ずつ、いや三本ずつ買わないと絶対足りないよな」
「三本で足りるのか?」
「全員一杯ずつ飲む分はあるだろ。あいつらが満足する量買ったら在庫尽きるぞ」
「それもそうか。ワインも三本ずつか?」
「ワインは自分で飲むようにするつもりだから一本ずつでいいな」
「えー」
「しょうがないだろ。唯でさえ一升瓶を九本も買うんだ。一応予定ではビールも買わなきゃいけないし、今回は我慢しろよ」
「なら自分で買えば文句はないんだな?」
「…まぁ、そうなるな」
「ふふん、言質はとったぞ。なら二本ずつ追加で頼むな」
「へいへい、一体総重量どれぐらいになるんだか」
結局、焼酎九本とワイン六本を買った二人は秘封倶楽部の三人を拾った後、車で東京への帰路についた。
「鷲田さん、ずいぶんとお酒買い込みましたね」
「こんなに大量のお酒さすがに一人では飲みきれないと思うんですけど…」
「近所の奴らと一緒に飲むからな。一人分はそんなにないだろう」
「だとしても仮に八人で飲んでも一人二本分ですよ、大変じゃないんですか?」
「これ位の量を八人で飲んだら一晩あれば確実に飲み切るな」
「へ?この量を一晩なんて嘘ですよね?」
「ああ、違った。一晩もかからないな。三時間持てばいいほうか?」
「またまたご冗談を…冗談ですよね?」
「冗談じゃないから困るんだ…」
「なんか、その、ご愁傷様?です」
「同情してくれるのか。ありがとう」
「はいはい、バカなやり取りやってないでとっとと帰るぞ」
「原因の一部が言うなよ、藍」
「私はほとんど飲まないぞ」
「お前の上司が飲むんだろ?」
「それはそうだが、そういうところじゃないかこっちは」
「そうなんだよな…」
後日。
結局大量に買い込んだ酒は三時間足らずで飲み干されたとさ。
若干地元ネタが多くなった気がします。
次回は幻想郷に舞台を戻す予定です。
それでは。