居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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活動報告や目次にありますが、UAが10000突破しました。
それでも相変わらずのノリで行きますのでよろしくお願いします。


その34 本屋

 

本居小鈴。

彼女の名前は人里を中心にそれなりに知られている。

かといって彼女自身に力があるかと言ったらそうではない。

普通の人間である彼女の物理的にも、非物理的にも彼女の力は一般人並であるだろう。

では彼女の名前はなぜそれなりに有名なのか?

答えは単純である。

稗田阿求の友人であるからだ。

 

「鷲田さん!阿求に聞いたんですけど珍しい外の飲み物があるって本当ですか!?」

 

小鈴が従業員に元気よく話しかけたのは小鈴自身が経営している貸本屋でのことである。

その本屋は従業員の数少ない趣味の一つである読書のためによく訪れる店であり、その日も新しい本を借りに来ていたのだ。

 

「うん、確かに店にはあるけど今ここに持ってきてるわけないだろ。それにほら、他の客ビックリしてるし」

 

従業員の言う通り、いきなり大声をあげた小鈴に周りの客は驚いている。

尤も、客はこれぐらいのことはたまにあることなのでいつも通りふるまっているが。

 

「それはそれ、これはこれ。で、真っ黒の飲み物があるって本当ですか?」

「同じ客商売をしている身としてその態度には色々と突っ込みを入れたいところだけどな。コーヒーのことを言っているなら確かにあるな」

「それです!その『こおひい』というのを飲んでみたいんです」

「そうか、それならいつかうちの店に来れば飲ませてやるぞ」

「はい!なら今すぐ向かいます!」

「自分の店はどうだっていいのか?」

 

従業員の指摘にまるで失念していたかのような反応を返す小鈴。

 

「あ、そうでした!えっと、これを借りていくんですね?」

 

それでもとっさに仕事に戻れるのはこの商売をそれなりにしている証拠なのだろう。

 

「ああ。外ではもう絶版になっていた本だからつい借りたくなったんだ」

「そう言った本がうちには多いらしいですよ」

「みたいだな。外では見たことがない本がいっぱいあるしな」

「阿求の話だと、幻想郷の性質がそうさせているとか」

「忘れ去られたものが集う場所ということか」

「そうですね。…はい、オッケーです」

「ありがとな」

「いえいえ。そのこおひいとやらの料金を安くしてくれればいいですよ」

「前言撤回。強かだな」

 

従業員の言葉に小鈴は微笑むだけであった。

 

その夕方。

息せき切った小鈴が夜雀亭に飛び込んできた。

 

「鷲田さん!昼間の約束忘れたとは言わせませんよ!」

「はいはい。コーヒーだろ?ちょっと待ってくれ」

 

彼女がやってくることをなんとなく感じ取っていた従業員は冷静にコーヒーを淹れはじめる。

 

「小鈴さん、随分と上機嫌ですね」

「だってあの阿求が珍しいといっていたものが見れるんですよ。楽しみでない訳がないでしょ?」

 

あ、そうだと小鈴は自分に話しかけてきた店主に質問する。

 

「みすちーって『こおひい』って飲み物飲んだことあるよね?」

「ありますけど、私はあまり好きじゃない飲み物ですよ」

「好きじゃないって、どういうこと?」

「ちょっと苦いんですよ。進さんはそれがいいって言いますけど、私は苦手ですね」

「苦いって、どれぐらい?」

「今まで味わったことがない苦さですね。飲めないほど苦いと言う訳ではありませんけど」

「好みが分かれる苦さってところかな?」

「そんな感じです」

 

二人が話していると従業員が器を五つほど持ってきた。

五つの器のうち大きいのが三つ、小さいのが二つある。

大きい器のうち二つにはブラックコーヒーが入っており、残り一つにはお茶が注がれている。

 

「はい、コーヒー。少々苦いので好みでミルク…牛乳と砂糖を使って飲むといいぞ。ミスティアにはお茶でいいよな?」

「ありがとうございます」

「へぇ~。これがこおひいなんだね」

「ああ。外の西の方の飲み物でお茶とは違った植物の実を煮出したものだ。さっきも言った通り苦味もあるからそういったものが苦手なら砂糖や牛乳を使ってな」

「鷲田さんのおすすめの飲み方は?」

「好みにが分かれるものだから一概には言えないが、俺自身は何もいれずに飲むな」

「阿求は?」

「牛乳だけを少し入れて飲んでたな」

「ほ~。私は取りあえずそのまま飲んでみますか」

 

そう言って彼女はブラックのまま一口含む。

苦味に驚きつつもブラックのまま飲み干した彼女は次は砂糖を入れるんだ!と言いつつもう一杯従業員に注文した。

 

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