幻想郷一の長生き者の登場です
「鷲田、今は幸せウサ?」
夜雀亭に来るなり不躾な質問をしてきたのは普段は迷いの竹林に住んでいる因幡てゐ。
彼女が訪れたのは昼下がりであり、その時店にいたのは従業員と店主、そしてほんの少しの客であった。
彼女のいきなりの質問に従業員は何でもないように答える。
「少なくとも昔、
「つまり昔はかなり不幸だったということウサ?」
彼女の追加の質問に従業員は遠い目をしながら答える。
「…どうだろうか?幸せの定義次第じゃないのか?」
「それなら自分にとっての幸せの定義から行くと鷲田は今まで幸せじゃなかったウサね」
「ほう、その定義について詳しく教えてくれ」
「ならお茶が怖くなってきたウサね」
「あ?ほしいのか?」
「人に物事を教えるときにお茶が怖くなってくるという持病ウサ」
「饅頭は?」
「日によるウサね。今日はお茶だけウサね。あ、コーヒーでもいいウサよ」
「はあ、了解」
お茶を受け取ったてゐは従業員に話し始めた。
「人間というのは自殺以外の方法で死んだときそれまでの幸せの量を平均すると大体一緒ウサ」
「自殺以外って?寿命は分かるが、事故や他殺で死んだときも一緒なのか?」
「むしろ自殺だけが例外と考えるのが妥当ウサね。それだけが自分で死ぬタイミングを決められるから」
「自分で決められることとそうでないことに差異があるのか?」
「詳しいことは分からないウサね。これはあくまでも経験談から言っているウサ」
「さいで。その経験の信憑性はどれぐらいだ?」
「自分の経験は幻想郷一ィィィ!!ってやつウサね」
「…つづけて」
「続けるウサよ。それで幸せの総量は決まっているという話はしたウサね」
「平均値が同じという話だったな」
「そうウサ。それで鷲田の今までの幸せの総量を見る限り零になっているウサ」
「零?マイナスじゃないのは分かるが、プラスじゃないのか?」
「零ウサ。こればっかりは間違いがないウサ」
そもそもとてゐは続ける。
「幻想入りする人、つまり外来人は一部を除いて忘れ去られた存在ウサ。そう言った人たちが幸せかどうかと聞かれると否定するのが道理ウサね」
「詳しいんだな」
「長生きしているからウサね。それを考えるとマイナスからゼロになった鷲田の方がおかしいウサ」
「ヒドイ言われようだ」
「事実ウサ。それだから外来人というだけで外にいたころは不幸と捉えるのがふつうウサ」
もちろん例外はいるウサね。とちゃっかりてゐは付け加える。
その話を聞いた従業員は疑問に思った。
「ていうことは俺の回答にかかわらず今まで不幸だというのは分かっていたことなのか?」
「さあ、どうウサね?それはさておき、零である従業員には幸せが訪れるのが妥当ウサね」
「今まで以上のか?」
「今まで以上ウサね。そして今日はその手助けをしに来たウサね」
「手助け?」
「自分からもその幸せをあげようという話ウサね」
「それってさっき言った話からするとツケがきそうだよな?」
「自分の能力だ上げる幸せはさっき話した『幸せの総量』にはカウントされないウサ。だからおとなしく受け入れるのが吉ウサ」
「そうか。ありがとうな」
「礼はいいウサ。他人に上げる幸福は回りまわって自分のところに戻ってくるからこれは自分にとってもプラスになっているから問題ないウサ」
「情けは人のなんちゃらということか」
「分かったならいいウサ。それで自分があげる幸福は助言ウサ」
「助言か。どんな助言だ?」
「単純にいうとお二人、特にミスティアは一度永遠亭で診察を受けるが吉ウサね」
「永遠亭で診察?なんか変な病気にでもかかっているのか?」
「詳しくは言わないウサ。実際に診察してからのお楽しみウサね」
「言えないじゃなく言わないか。なら従うことにするか。永遠亭の診察の予約って今空いているか?」
「そこは自分が永琳に言っておくから問題ないウサ。なんなら今から行くウサ?」
「いや、今日は店を開くからやめとく。明日か明後日には伺うからそのつもりで頼むな」
「了解ウサ」
そう言って丁度お茶を飲みほしたてゐは帰って行った。
翌々日。
早速永遠亭で診察を受けた二人に永琳が結果を言う。
「鷲田さんの方は何もなかったわ。健康状態はおおむね良好といったところね。ミスティアさんは健康に問題はなかったわ。ただ…」
「どうしたんですか?健康以外のところで問題でもあったんですか?」
「そうね。問題かどうかは分からないけど、とりあえず、二人ともおめでとうと言っておこうかしら」
「それって…」
「ご懐妊です。正真正銘、二人の子よ」
新しい命の誕生に頬をほころばせながら永琳は言った。