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永遠亭で進とミスティアの両人は八意永琳から話を聞いていた。
「私自身も驚いているわ。妖怪がまるで人間のように妊娠するなんて初めてのことじゃないかしら?」
「永琳さんでも初めてのことなんですか?」
「正直ね、てゐの口添えが無かったら機械の故障か何かを真っ先に疑うレベルよ」
その時三人の誰のものでもない声が響いた。
「自分もこれは神代の時代以来の経験ウサ。あの時子供を孕んだのは神様という違いはあるけどウサね」
声のした方を向くと天井から顔を出したてゐが三人に手を振った。
「妖怪をはじめとして人型をとるものはみんな妊娠する可能性はあるウサ。ただそれが起きる条件はかなり限られてるウサ」
「永琳さんはこのことを知っていましたか?」
「いいえ。初耳だわ」
「そりゃあ初めていう話だからウサ」
「何故言わなかったのか気になるけど続けて」
「条件が条件だからウサ。その条件が人の血をどちらかが持っていることウサ。ここで言う人の血は親とかそういった血統とか血族のことウサ」
「鷲田さんはグリフォンの半獣よ?そしてミスティアは夜雀だから二人の子供ができるのはおかしい話じゃ?」
「鷲田は自分自身外来人と言っているし、半獣は半人でもあるウサ。おかしい話ではないウサ」
「半人程度に人間であるなら構わないのね」
「その通りウサ。何なら緑色の現人神も問題ないウサね」
「随分詳しいわね。私よりも物知りじゃないのかしら?」
「なんでもは知らないウサよ。見て、聞いて、知ったことしか知らないウサね」
そうやって二人が話し込んでいるところに恐る恐るミスティアが話しかける。
「あのー、それで私が妊娠しているのは確定事項なんですか?」
その言葉で患者を放置していたことを思い出した永琳はすぐに話を戻した。
「ごめんなさい。ええ、あなたが鷲田さんとの子供を授かったことは紛れもない事実よ」
「そうですか」
「ですから、ちょっと今からこれからの妊婦としての、そしてその夫としての心構えとかそういったものを教えるわ」
「「分かりました」」
「なら自分はすたこらさっさと行くウサ」
てゐが退出した後に永琳は話し始めた。
その日の夜。
今日はもう遅いからと進とミスティアは永遠亭に泊まっていくことになった。
ミスティアを優しく寝かしつけた進は永遠亭の縁側に座っていた。
その姿を認めたのは永遠亭のお姫様こと蓬莱山輝夜だった。
「あら、鷲田さん。眠れないの?」
「まあ、少しな」
「ならちょっと一杯付き合ってくれる?」
「いや、今日は飲む気分じゃないから…」
「私が飲むのにお酌をしてくれるだけでいいわよ」
「そうか。お酒はどこにある?」
「ここにあるわ」
そう言って輝夜は進の隣に座る。
一杯目を注いでもらった輝夜は進に問いかける。
「何を考えているの?」
「俺が人の親になるのかとか、ミスティアは大丈夫なのかとか、店をどうしようかとか。主にこれからのことだな」
「ふふ、若いわね。そういった悩みを抱えることができるなんて」
「うるせえ」
「でもその若さがうらやましいわね」
「はは、うらやましいだろう」
「ええ。もう相当歳を食った私からしたらまだ見えないことに対して不安に対して悩めるのは十二分うらやましいね」
「でも輝夜にもそういった不安がないわけはないだろう?」
「もう私は『なるようにしかならない』という一種の諦観に凝り固まった古い人間、いや古い蓬莱人よ」
そのあとに輝夜は言葉をつづけた。
「でもだからこそ私が言えるアドバイスも『なるようにしかならない』しかないわ。日々を精一杯生きていたらマイナスになることは決してないから頑張っていきなさい」
「そうか」
「それにあなたはてゐに幸せが確約された人なんでしょ?だったら決して悪くなることはないわ。あの子の能力は私も保証するし」
「ありがとうな」
「ふふ、礼は元気な赤ん坊とおいしい料理でお願いするわね」
「現金な奴め」
「都で生きていくには必須スキルよ、これは」
「じゃあ、その強かさも長生きで身に着けたものか?」
「どうかしらね?」
はぐらかした輝夜はお猪口を呷る。
新たに一杯注がれたそれを持ったまま輝夜は話した。
「結局ね。人の幸不幸や現状なんてものは日々の積み重ねでしか決まらないものよ。他人を幸せにしている日々を過ごすあなた達に不幸が訪れるなんて考えられないわ」
その言葉に進は何も返さず、ただミスティアの方を見ていた。
そんな進の様子に輝夜は笑って言った。
「私がとやかく言う必要もなかったかしら?これは」
次回はその21~その40までのあとがきになります。