ある春の日。
夜雀亭では一人の少女が注文を取っていた。
「ご注文はお決まりですか?」
「ラーメンと炒飯を一人前ずつお願いします」
「飲み物は何にされますか?」
「私は清酒を」
「僕はビールを一杯お願いします」
「了解しました!」
注文を取った彼女はその注文を自分の父親に知らせる。
「ラーメンと炒飯を一人前ずつで、清酒とビールを一杯ずつの注文です」
「了解。今日はもう休憩していいぞ」
「本当?まだお客さんいっぱいいるけど?」
「あれぐらいなら昔は捌いてたから。けど、まだ寝ちゃだめだからな」
「分かった。家で留守番しておくね」
「おう、頼んだぞ」
そう言われた少女は手際よく自分のエプロンを畳んで夜雀亭を後にする。
彼女が店を出たときに一人の女性とすれ違った。
その女性は出てきた少女に気づき、話しかける。
「あら、今日はもう上がり?」
「霊夢さん、お久しぶりです。はい、今日はもう上がっていいと父さんに言われたので。霊夢さんはこれから一杯飲みに?」
「あー、まあ、そんなところかしらね。大丈夫よ。少なくとも鷲田とかみすちーの迷惑になるようなことはしないわ」
霊夢は言葉を濁しながら答えた。
それを悟られないようにか、それにしても、と彼女は話題を変える。
「あんたも大きくなったわね。今年で何歳になるんだっけ?」
「十五になります」
「十五、十五歳ねぇ。十分独立できる歳だとは思うけど、あんたは何をするつもりなの?」
「父さんと母さんの店の手伝いをしばらくして、あとのことはその時に考えます」
「へえ。ゆくゆくはあの店を継ぐのかしら?」
「多分、そうなると思いますね」
「それはいいわね。気兼ねなく飲める場所がなくならないのは」
「ご期待にこたえられるよう頑張ります」
「頑張りなさいよ。それじゃ私はここで。引き留めて悪かったわね」
「いえいえ」
そうして二人は別れた。
霊夢と別れた後、少女は改めて帰路についた。
少女が自宅で待っていると彼女の父親が帰ってきた。
「父さん、お帰り!あれ?母さんは?」
「母さんはまだ夜雀亭だぞ。それじゃ、一緒に行こうか」
「一緒にって、どこに?」
疑問を浮かべる少女に父親は微笑みながら返した。
「それは着いてからのお楽しみだ」
二人が歩く道は少女と父親、その二人にとっては慣れた道であった。
そのことに気づいた少女が父親に話しかける。
「父さん、まさか行先って…?」
「うちの店だよ。さあ着いた」
二人が着いたのはまだ中が明るい夜雀亭。
父親に促され、少女は店の中に入った。
彼女が店の中に入って見たのは多くの人が自分に向ける大量のクラッカー。
一人につき一本ではなく、二、三本持って自分に向けているというある意味恐怖の光景だった。
そこで後ろから掛けられたのは自分の父親の合図の声。
「さん、はい」
「「「「誕生日、おめでとう!!!」」」」
一斉に叫んだあと、そのまま全員が各々のクラッカーを一度に鳴らす。
そのことにしばらく呆然としていた少女であったが、何があったかに気づくと泣き崩れた。
少女の様子に先頭にいた霊夢が慌てて話しかける。
「ちょ、ちょっと大丈夫!?流石にびっくりさせ過ぎちゃった?」
「そういうのじゃないんです。ただ、皆さんが自分の誕生日を祝ってくれたことが嬉しくて」
「ああ、そういうことね。それなら落ち着いてからでいいから奥のお座敷に来なさい。鷲田が丹精込めて作ったケーキも用意されてるから」
霊夢のカミングアウトに父親が後ろで叫んだ。
「おい、おま、それは言うなって!!」
「いいじゃない、娘を泣かせた罰よ。どっかの閻魔さまは絶対に黒発言するレベルよ」
そんなやり取りに少女はいつの間にか笑みをこぼしていた。
少女の名前はシルビア・ローレライ。
鷲田進とミスティア・ローレライの間に生まれた半人半夜雀である。
エピローグ的な何かです。
これを一つの区切りとしますが、まだまだ書きたいネタもありますので更新はぼちぼちなペースでしていきたいと思います。(まだリクエストに答えてないものもありますし)
それではここまで読んでくださった皆さんに最大限の感謝を。