居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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その41 小人

 

始まりは突然だった。

ある日の朝、博麗霊夢が大きなカバンをもって夜雀亭に来店した。

 

「私、今日からちょっと大事な用事があるからこれを預かってもらえない?」

 

そう言ってカバンから取り出したのは一つのドールハウス。

霊夢の普段の姿からは想像できないその物に従業員は少し驚いた。

 

「ドールハウス?なんでこんなものを?」

「あ、いや、そうじゃなくて。預かってほしいのはこの中身」

「中身?」

 

従業員がその『中身』を確認しようとドールハウスを開ける。

その中には西洋風の家具のおもちゃが大量にあり、あたかもそこに人が住んでいるようにある程度散らかされている。

そしてその部屋の一つにドールハウスとは場違いな和服の少女がいた。

その少女は寝息を立てており、生きているようにしか見えなかった。

 

「『中身』って、こいつのことか?」

「そうよ、彼女を数日の間預かってほしいの」

「…むにゅ?霊夢ぅ、もう朝なのぉ?」

「もう朝というか、今日から私が用事があるから預かってくれるところに行くって昨日言ったでしょ?そこにもう着いたところよ」

「おい、ちょっと待て。俺は引き受けたわけじゃないぞ」

 

霊夢の発言に従業員が慌てる。

そんなことを気にすることもなく、少女は自己紹介をした。

 

「え、もう!?は、はじめまして!少名針妙丸と言います!」

「鷲田進だ。でこっちが」

「ミスティア・ローレライです」

「鷲田さんとミスティアさん、これから数日よろしくお願いします!」

「じゃ、そういうことで。私はもう行くね」

 

そそくさと霊夢が立ち去る。

してやられた、と思った従業員は今更どうしようもなかった。

息を大きくはいた従業員は針妙丸に話しかける。

 

「はぁ。…朝飯は食べたか?」

「まだ起きたばっかりだよぉ」

「そうか…もちでも食べるか?」

「小さくしてくれればなんでもいいよ」

「了解。ミスティアも食べるか?」

「私は遠慮します。その代りお茶を一杯」

「あいよ」

 

霊夢が戻ってきたら何か奢らせようと従業員は心に誓った。

 

 

 

 

その夜。

カウンターにドールハウスを放置したまま営業を始めた夜雀亭。

初めて見る内装品に興味津々の客はどういうことか従業員に尋ねた。

 

「みすちー、このドールハウスってみすちーの?」

「いえ、私のじゃありませんよ。知り合いから預かってほしいと言われましたので」

「知り合い…って誰だ?俺の知り合いにこんなの持っている人なんていないぞ」

 

そう言って客はヒョイとドールハウスを持ち上げる。

その瞬間、中から声が響いた。

 

「ちょっと、誰よ!」

「うおっ!」

 

驚いた客は思わず手を放す。

支えを失ったドールハウスは重力に引かれて地面に落ちた。

 

「いったーーーい!!」

「ちょっと、いきなり落とすなんてどういうことですか!?」

「いや、この中からいきなり声がしたからびっくりしたんだよ」

「あ、そういえば言ってませんでしたね。この中、小人が住んでいるんです」

「小人だぁ?そんなのいるのか?」

「百聞は一見に如かず、です。よいしょっと」

 

ミスティアがドールハウスをカウンターに戻し、中から針妙丸を取り出す。

 

「これが小人か?」

「はい。小人の針妙丸です」

「ふぅん。噂ではそんなのがいるとは聞いていたが随分とちっちゃいな」

 

酔っているのか、針妙丸をウリウリと突きだす客。

 

「ちょっと、その指どけてよ!」

「この、可愛い奴め。うりうり」

「ミスティアも見てないで止めてよ!」

「ふふ、たまにはいいじゃないですか」

「私はよくないの!」

 

それから数日の間、針妙丸は期間限定の看板娘になっていた。

 

 

後日。

夜雀亭に針妙丸を預けた見返りとして従業員たちが求めたのは『偶にこの店の看板娘として預けてもらう』という単純なものだった。

これに針妙丸は反対したが、それ以外の三人が賛成したためこの提案は受け入れられた。

夜雀亭の新たな名物の誕生である。

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