居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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その43 天邪鬼と超能力者

 

「最近さぁ、月の奴らがここにいるじゃない」

「よく見かけるな、鈴瑚とか特に」

「その中にさぁ、サグメって奴がいるんだけどさぁ」

「サグメ?…あぁ、筆談していた子か。彼女がどうした?」

「あいつの能力って知っている?」

「知らないな。筆談しているのと関係があるらしいけど」

「『口に出すと事態を逆転させる程度の能力』らしいよ」

「ん?お前の能力と違うのか?」

「私はひっくり返すだけ。あっちの方が能力としては上だし」

「なーんか言葉遊びされてる気がするな」

「どうせ能力に関しては自己申告だし」

「それもそうだな。で、そのサグメってやつがどうした?」

「あいつさぁ、私の親みたいなもんらしいんだよね」

「親?天邪鬼に親もくそもあるもんか?」

「親、というよりかは元ネタ?ほら、人と神みたいな関係性」

「成程」

 

今日の夜雀亭は客もまばらであった。

カウンターに一人座ってウィスキーのグラスを回しているのはちょっと前に幻想郷全体を大騒動に巻き込んだ鬼人正邪。

騒動の後さすがに反省したのか今では大人しくなり、こうして夜雀亭で酒を飲むのも許されるようにはなっていた。

そんな彼女は今グラスを持ってないほうの手でかつて利用した相手と戯れていた。

 

「それにしても正邪も丸くなったよね。皆にボコられたからかな?」

「それもあるけど、この郷の成り立ちを知ったのも大きいな。なんだよ、『賢者と博麗の巫女が倒れたら郷そのものがなくなる』って」

「あの二人が結界を維持してるからね。で、万が一にも結界がなくなったら幻想郷がなくなるだけじゃなくて、私たちも消えちゃうんだから」

「あー、全く持って面倒なシステムだこと」

「『でもそんな状況こそ覆してみたい』とか思ってないだろうな?」

「私の能力でも限界があるんだよ。神様じゃないし」

「そう思うようになっただけ進歩しているっつーことか?」

「でもいい方からしたら力があったら挑戦したいと思っているのも事実だよね?」

「ひっくり返すことが私の存在意義だからな」

 

それよりも、と正邪は目の前の小人に問いかける。

 

「お前、最近面白い人と会ったんだって?博麗の巫女とやりあえる程の力を持っているという外の奴に」

 

その疑問に針妙丸は顔を顰める。

 

「う、あの変態のことか。あぁ、確かに彼女は強かったよ。でもそれ以上に変態だったね」

「あぁ、オカルトボールをばら撒いた奴のことか?でも変態って…他の奴らはそんなこと言わなかったけどなぁ」

「あれは変態以外の何者でもないよ。私に会うなり捕まえたいなんて言ったし。鷲田さん、外の奴らってみんなああなの?」

「んなわけあるか」

「ならいいんだけど。それでその変態のことがどうしたの?」

「いや、幻想郷の住民中に追いかけられた時の話が聞きたくてね。で、彼女ってどんな格好だった?」

「えーっと、黒い帽子に黒いマントをつけてたからすぐにわかるよ」

「あんな格好か?」

「そうそう。あんな格好だった…って、ええ!?」

 

正邪が指さす先にはさっきから話題に上がっていた張本人、宇佐見董子その人がいた。

彼女は針妙丸の叫び声を聞きつけたのかカウンターによってきた。

 

「あ、あの時の小人!探したんだよ~」

 

そう言って董子は針妙丸を掌に乗せるや否や頬ずりし始めた。

 

「うわぁ!この!変態!とっとと!離れろって!」

「あぁ~、もう!抵抗するのも可愛いなぁ!」

 

針妙丸が抵抗して頬を蹴りまくるが、それもお構いなしと董子は頬ずりをやめなかった。

 

「成程、針妙丸が変態だって言ってたのもうなずけるな、これは」

「変態というよりかはHENTAIに近い気がするけどな」

「そこの二人!見てないで助けろって!」

 

 

「え!?月の都のパワーストーンってリアルに月の都の人がばら撒いていたの!?」

「あ?知らなかったのか?言っちゃあまずい情報だったのかなぁ」

「ということは月に都があってそこから幻想郷に来ている人もいるのよね!?」

「探せばいるんじゃねえのか?」

「実際この店にいるかもよ」

「はぁ~やっぱり幻想郷ってすごいなぁ。こっちにいつも来れるようになりたいなぁ」

「やめとけやめとけ。なんだかんだ言って外の方が便利だし」

「鷲田さんは外に戻りたいと思わないんですか?」

「今は人間じゃないし、こっちの方がふさわしいしな」

「それに鷲田にはいちゃつく相手がいるしな」

「え?鷲田さん彼女いるんですか?」

「彼女っていうか妻だけどな。そこで料理を作っている彼女がそうだ」

「なんかエピソードとかないんですか?ほら、甘酸っぱい話とか!」

「そういうのに興味があるのは高校生らしいな。あっても言わないけど」

「む~」

 

久々の外の話が通じる相手との会話をする従業員は傍から見てとても楽しそうであった。

 

 

 

 

「それでお客さん、ご注文は?」

「こ、この子を!」

「そいつは非売品です。どうしてもほしいなら博麗の巫女と相談の上再注文をお願いします」

「いけず~」

 




霊夢曰く、
「針妙丸がほしいなら私を倒していきなさい!」
とのことだそうで。
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