地霊殿。
嫌われ者たちが集う地底の中でも特に嫌われている覚妖怪が家主を務める動物の館。
地底の妖怪たちですらなかなか近づくことがないそこに夜雀亭の二人の姿があった。
「ここがあの姉妹の家か。随分と立派なもんだな」
「紅魔館にどこか似てますね」
「どっちも洋館の一種だしな。ま、赤くない分こっちの方が好みだけど」
「目にはいいですね。館談義もこれぐらいにして早速入りましょう」
「ういうい」
二人がここに来た理由は単純なものである。
館の主、古明地さとりに呼ばれたからだ。
彼女はどこから知ったのか、以前紅魔館に二人が行った時のように『貸し切り』という形でこの地霊殿に呼び寄せたのだ。
前例もあるし、特に断る理由がなかった二人は今日こうして地底にやってきたのだ。
…二人がこれに快諾した理由の一つに『温泉もありますよ』という一文があったからというのは否定できないが。
「おや、あんたたちがさとり様の言っていた人かい?」
地霊殿の入り口の扉をノックした二人を出迎えたのは猫耳が付いた赤髪の少女。
取りあえず人型の生き物が出てきたことに若干の安堵を覚えつつ従業員は答えた。
「あぁ。夜雀亭の鷲田進とミスティア・ローレライだ」
「そうかい。あたしはここに住んでいる火焔猫燐。ちょっとさとり様を呼んでくるからそこで待ってくれよ」
そう言って彼女が指さしたのは広間にあるソファー。
確かにそこは人を待つ間に休憩するにはちょうどいい場所である。
周囲に大量の動物がいることを除けば。
「ん?あぁ、さとり様のペットはみんな人懐っこいから大丈夫だよ。それじゃまたあとでね」
「いや、そうじゃないけど…あぁ、行っちまった」
燐が去って手持無沙汰になった二人はソファーに座る。
しかし、夜雀である店主にとって大量の動物に囲まれているこの状況は命の危機すら感じるものである。
だからか店主は無意識のうちに従業員にしがみついていた。
それを感じ取った従業員は落ち着かせるために店主の頭を撫で始める。
そうやって二人だけの空間を作り上げた従業員たちに動物たちは興味を無くしたのか離れていった。
「本当、二人って仲がいいよね」
唐突に聞こえた三人目の声。
驚いた二人がその声がした方を向くとそこには古明地姉妹が妹、古明地こいしがふてくされた顔で座っていた。
「いきなり声を出すなよ。びっくりしたじゃないか」
「私の接近に気づかない二人が悪いもん」
「お前の接近に気づけるわけがないだろ」
「そうなんだけど。それで二人はなんでここにいるの?もしかしてお姉ちゃんのペットになりに来たの?」
「あれ?さとりから聞いてないのか?今日は料理を作りに来たんだよ」
「あーなんか言っていた気もするなぁ」
「あれ?こいし様今日は帰って来たんだ」
従業員とこいしが話していると、燐が地霊殿の主、古明地さとりを連れてきた。
ちなみに店主は従業員の腕の中でまどろんでいた。
「うん。鷲田さんの料理が食べられるなんて帰ってきてよかった」
「それはよかったわね。お燐、悪いけどお空を呼んできてもらえないかしら?」
「了解」
燐が去った後、さとりは従業員と向き合う。
「お空は私のペットで人型になれる子の一人です。地獄に住んでいた烏だからあなた達と話が合うのでは?」
「後で話してみるか…それで、」
「『どんな食材があるのか?』ですね。そうですね、一通りはありますけど、一度見てもらった方が早いでしょう」
「じゃ、早速そうさせてもらうか」
「ならこっちが厨房ですので…『お燐たちはいいのか?』…どうせ後で会うので。こっちです。こいしはどうするつもりかしら」
「お燐たちと遊ぶ―」
「そう。ならあとで呼びに来るわ。さぁ、店主さんもこちらに。狸寝入りはダメですよ」
「流石にばれますね。もうちょっと鷲田さんの腕の中にいたかった」
「『後でいくらでもするから』だそうですよ。愛されてますね」
「るせぇ。おら、さっさと案内しろ」
「ふふふ」
結局二人が作ったのは炊き込みおこわだった。
というのも、食材を購入するときお空が米と間違えてもち米を購入していたのだ。
「もち米と普通のお米って何が違うの?」
「全然違うぞ。例えるなら博麗の巫女と守矢の巫女ぐらい違うな」
「なら一緒だね!どっちも巫女なんでしょ!」
「あぁ、もう、こいつは…」
「お空は鳥頭だからねえ」
「いやいや、これは鳥頭というレベルじゃないぞ」
「ならお空だから仕方ないねと言い換えればいいかな?」
「うん、もうそれでいいです」
ようやくリクエストに応えることができました。
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