ちょっと短めですが、どうぞ
「「「とりっく・おあ・とりーと!」」」
秋も深まってきたある日、夜雀亭の入り口を最初に開けたのは三匹の妖精だった。
いつもの服装ではなく、全体的に黒い服を着た彼女らは籠を突き出しながら一斉にそういった。
唐突な訪問に従業員の目は点になる。
「…は?」
「あれ?外ではこういいながらお菓子をねだる習慣があるんじゃないの?」
「…あぁ!ハロウィンか!ちょっと今からお菓子を作るから適当な場所で待っててくれよ」
そういうと従業員は厨房に戻り、お菓子作りを始める。
手際よく生クリームを作り始めた従業員に店主が話しかける。
「進さん、『はろうぃん』って何ですか?」
「外の世界での習慣で、元々宗教的な退魔の行事なんだけど、今の日本では仮装してお菓子を貰いに行く行事になってるな」
「へぇ。それでお菓子をねだりに来たと言う訳ですか」
「全く…誰があいつらに教えたんだか…。あ、ミスティア、カボチャをとってきてくれないか?」
「カボチャですか?お菓子に用いるのは珍しいですね」
「普通は滅多に見ないけど、ハロウィンではカボチャの置物が使われるからそれを使った料理がよく出るんだよ」
「へぇ…あ、私の分のお菓子もよろしくお願いしますねー!」
「元からそのつもりだよ…ってもう行ったか」
お菓子が出来上がるのを待っていた三妖精が暇を持て余してそろそろ何かしらの悪戯でもしようかと画策し始めたころ。
大皿にお菓子を人数分乗せて従業員がやってきた。
「おら、お望みのお菓子だ。だから悪戯はしないでくれよ」
その皿に乗っているのは三切れの黄色い三角形の物。
初めて見るお菓子に三人はどうやって食べるべきか見当もつかなかった。
「これってどんなおかしなの?」
「それはクレープっていうやつだ。薄い生地で生クリームとかを挟んだお菓子だけど、初めて食べるのか?」
「他の二人はともかく、私は見たことないわよ」
「チルノとかには食わせたんだけどなぁ…。で、食べるときにはクリームがこぼれないよう気をつけろよ」
「「「はーい」」」
そう言って三妖精は初めてのクレープを食べ始める。
こぼれ出てくるクリームに四苦八苦しながらも、おいしく食べている様はまるで人の子が食べているかのような姿だった。
「うわっ!思ったよりもクリームが多い!」
「この生地って薄いけど全然破れないよね…すごいなぁ」
「あら?これクリームの中にカボチャでもはいっているのかしら?」
思い思いの感想を浮かべながら食べる様子に思わず従業員から笑みがこぼれる。
そうして食べ終えた三妖精に従業員が話かける。
「美味しかったか?」
「「「美味しかったです!」」」
「じゃ、お菓子も上げたしそのまま回れ右をして帰ってくれ」
「「「はーい!」」」
満足した三妖精が帰った後、従業員は従業員用の控室に向かう。
そこには笑顔でクレープを食べる店主の姿があった。
「ミスティア、おいしいか?」
「美味しいですよ。うちのメニューにしても問題ないぐらいに」
「それはよかった。なら今日一夜限りのメニューにでもするか」
「もういっそのこと普通のクレープも通常メニューにしませんか?」
「そうだな。じゃ、メニューの書き換えをやっておくから誰か来たらよろしく頼むわ」
「はい、了解しました」
ーおまけー
それ以降、毎年この時期にだけ出てくる裏メニューが誕生した。
それがカボチャのクリームである。
厳密に言えばクリームを使う料理に限りそれをカボチャのクリームにすることが可能というものだ。
発端はとある紫のドレスを着た客のこんな発言である。
「カボチャのクリームがあるんでしょ?だったらこのシチューもカボチャシチューに出来ないのかしら?」