居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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その46 道具屋

 

その日、夜雀亭に滅多に来ない客が訪れた。

 

「やぁ、やってるかい?」

「カウンター席が空いている程度には繁盛しているぞ…って何をつけているんだ?」

 

その滅多に来ない客、森近霖之助は奇妙なアクセサリーをつけていた。

この幻想郷においてアクセサリー自体は珍しいものではない。

博麗の巫女は大きいリボンをつけているし、守矢の風祝は蛇とカエルの髪留めをつけている。

そんな中彼は幻想郷でも滅多に見ない眼鏡を普段は着けているのだが、その日の彼は違った。

彼の目にはレンズの色が緑色の片眼鏡がつけられていた。

 

「あぁ、これかい?最近仕入れた新商品でレンズに移した対象の戦闘力を図ることができる機械、名をスカウターというんだ」

「やっぱりそれかよ…」

「しっかしこれは便利だね。『強さ』という分かりづらいものを数値化するだなんて」

「でもそれって売れるのか?」

「まさか。これが必要な人の方が珍しいよ」

「河童に持って行ったら喜びそうだな」

「そういったことでしか売れなさそうなのは分かってるさ」

「しっかし、それって本当に使えるのか?」

「使えるさ。現に今だって君の戦闘力が映っているんだ」

「さいで…あ、言わなくていいぞ。興味もないし」

「言いふらす趣味はないから安心してくれ」

「うん、お前はそんな奴だと思ってるから。それで注文は何だ?」

「ワインを一杯お願いできるかい?」

「了解。つまみは適当なものでいいか?」

「そっちに任せるよ」

「はーい。ワインとポテトチップス入りました」

 

 

 

料理を作った従業員が霖之助の席に持って行くと、彼は付けていた片眼鏡をはずしいつもの眼鏡をつけていた。

 

「それ、外したのか」

「流石に人がたくさんいるここでつけて正気を保てるほど強い生物ではないよ、僕は」

「いや、お前案外図太いからいけるんじゃね?」

「ははっ。一介の道具屋に何を求めているんだ」

「なんだろうな…まぁ、なんか面白いものでも見れたか?」

「種族差は大きいな、って思ったよ」

「人では妖怪に立ち向かえない、っていうやつか」

「そうそう。具体的な値は伏せるけど僕とここにいる人間の間ですら文字通り桁違いの能力差があるんだ」

「俺はどっち側?」

「僕よりも上だよ。因みに君の奥さんは僕並だね」

「まぁ、アイツの能力は搦め手だからな」

「そういったものは反映されないみたいだね」

「でも人間よりかは上なんだからな。種族差ってでかいよな」

「それは僕も同意するけど、それでも例外ってやっぱいるんだよ」

「霊夢とか魔理沙とかか?」

「それは前から分かっていたことじゃないか。彼女らは例外的な強さだよ」

「なら他に誰かいたっけ…」

「僕が個人的に意外だったのはあの氷精かな」

「チルノが?」

「そうそう。彼女は妖精にしてはかなりの実力の持ち主だよ」

「意外だな…光の三妖精より頭が悪いぞ?」

「それは認めるけど、戦闘力は君と同等だよ」

「マジで?」

「真面目に言ってるよ。数字はうそをつかないからね」

「なんだろう、この、なにか言葉に出来ない感じ」

「ははは。それは僕も一緒だね。でも戦闘力が一緒だとしても少なくとも作戦とか戦略とか建てられる分、君の方が上だよ」

「慰めの言葉ありがとう」

「でもびっくりしたのは事実だよ。あの氷精が僕よりも戦闘力が上だなんて」

「あー、でも映姫も言ってたなぁ。『あの妖精は「死んでしまう可能性がある」程度には強くなるかもしれないって』」

「ふーん、あの閻魔がねぇ。気になる話だけど正直会いたくないし、聞かないでおこうかな」

「まぁ、ここまで話しててなんだけどあいつと戦うことはないだろう」

「それは同意するね。喧嘩を吹っかけられても回避すればいいし」

「これが霊夢とかだったらどうしようもなくなるけど」

「問答無用だしね、彼女は」

「そうでもしないと博麗の巫女がやっていけないだけかもしれないぞ」

「意外とあり得るから、その予想」

 

珍しい客との会話は思ったよりも弾み、それは店主が従業員に助けを求めるまで続いた。

 




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