「二日酔いに効く薬草?」
「はい。食前食後かかわらず二日酔いに効く薬、それも妖怪用と人間用の二種類の薬草がほしいんです」
深夜の夜雀亭。
まばらになってきた客の一人、風見幽香に店主は相談していた。
「あなた達は居酒屋よね?薬屋でも始める気なのかしら?」
「そういう訳じゃないんですけど。これから忘年会や新年会のシーズンですのでお酒を飲むときに少しでも負担が和らいでほしいので、一品ものという形で提供したいなと
思いまして」
「それで薬草と言う訳ね…」
「はい。植物に詳しい幽香さんなら何か知っているのかな、と思いまして」
「そう言われてもねぇ…自慢じゃないけど体調を崩したことなんてないからそう言うのには少し疎いのよ」
「そうですか。無茶を言ってごめんなさい」
「力になれなくてごめんなさいね。あ、でもあの子なら何か知っているかもしれないわ」
「心当たりがあるのですか!?」
「えぇ。私がよく行く鈴蘭畑にいる妖怪が確か毒を操る能力を持っていたはずよ」
「ど、毒ですか…」
「ほら、毒と薬は紙一重というらしいし、彼女ならそう言うのにも詳しいかもしれないわ」
「それもそうですね。ありがとうございます」
数日後。
店主と従業員は幽香が言っていた鈴蘭畑に来ていた。
二人を待っていたのは幽香ともう一人、人形ほどの大きさの少女であった。
「初めまして。メディスン・メランコリーといいます」
「鷲田進だ」
「ミスティア・ローレライです。今日はよろしくお願いします」
「はい!それじゃ、早速始めましょうか!」
そう言った彼女は鈴蘭畑の一角で講義を始めた。
「二日酔いに効く薬、というか植物といったらまず真っ先に思いつくのはケンポナシという植物ですね。実を煎じて飲むのが一般的な植物で、かつては酒を水に変えるとい
われてたものです」
「酒を水に変えるって本当か?」
「あくまでもそういう言い伝えがあるという話ですので。で、この実が成熟するのは冬なんですけど、この植物はまとまって生育しないので取るのが大変です。個人が使う
のならこれをオススメするんですけど、安定供給は難しいところがあります」
「難しい話だな。それをとるために他の食材の供給がおろそかになったら元も子もないからな」
「はい。ですので簡単に取れてそれなりに効果のある薬草として提案するのがタンポポです」
「え?タンポポってあのタンポポですか?」
「春になるときれいな黄色い花を咲かせるあのタンポポです。あれは二日酔いとは少し違いますが、胃炎や胃潰瘍に効果があるので飲み過ぎや食べ過ぎに効きます」
「あー、宴会にはそっちの方がいいかもな」
「はい。幻想郷の人たちは飲み過ぎ・食べ過ぎの気があるのでこっちの方がいいかもしれません」
「でもタンポポってどうやったら食べられるんだ?」
「簡単ですよ。葉っぱを下茹でして水にさらせばアクも抜けるのでそれをしたらサラダなり天ぷらなり好きに調理すれば美味しく食べられます」
「タンポポってすごいんですね」
「簡単に取れる野草ですし、結構お手軽ですよ。あとはセリとかナズナとかの所謂春の七草もおすすめですね」
そう言って彼女は座り込む。
座って話を聞いていた従業員は彼女に労いの言葉をかけた。
「お疲れさま。それにしても随分と詳しいんだな」
「毒を扱う以上、似たようなものにも詳しくなりますので。これらの植物はどうやっても毒にならないから余計に覚えているんです」
「毒って、人間に対してか?」
「当たり前ですよ。人間なんて種族は滅びればいいんです」
「うへぇ、怖い話だ」
「第一にあなた達は何ですか。妖怪の癖に人間に安全な食べ物を売るだなんて」
「そんなこと言っても、俺半獣らしいし」
「私はそう言うのがあまり好きじゃないので」
「むぅ。幽香さん、あの二人を毒殺してもいいですか?」
「そんなことをしたら私があなたを叩きのめすことになるけどいいのかしら?」
「でも~!」
「そう言う妖怪もいるということよ」
「分かりました…」
すっかり意気消沈したメディスンを横目に幽香は二人に話しかける。
「すまないわね。だしにするような形をとってしまって」
「だしにするって…」
「あの子、妖怪としてはかなり若い子よ。だからこういう時に勉強させていかないといつか彼女自身の身を滅ぼすことになりかねないわ」
「成程な。それで今回比較的人間に友好な人外である俺たちに会わせたということだな」
「えぇ。彼女自身人への憎しみから生まれた存在だからそれと正反対の存在であるあなた達を会わせたということよ」
「まぁ、一杯くわされた感じはするが、こっちも知りたいことが知れたからトントンだな」
「ふふ、あなたならそう言うと思っていたわ。まぁ、お礼は次お店に来たときにサービスしてくれればいいわ」
「それとこれとは話が別だ」
「えぇ、けちー」
忘年会・新年会のシーズンです。
お酒はほどほどに、飲んでも飲まれるな。