大晦日。
早めに店じまいをした夜雀亭の従業員と店主、鷲田進とミスティア・ローレライは人里近くのお寺、命蓮寺に足を運んでいた。
「ごめんくださーい」
進がお堂に向けて声をかけると中から僧服に身を包んだ女性が出てきた。
「はいはーい。今年もありがとうございます」
出てきた女性の名は聖白蓮。
この命蓮寺の住職であり、魔法使いでもある。
そんな彼女のもとを二人が訪ねた目的は主に二つ。
そのうちの一つは彼が持ってきた荷物にあった。
「はい、これ。来年…と言ってもすぐですが、その分のおせちです」
「ありがとうございます。うちの子たちも喜びます」
彼らが持ってきたのはおせち。
それも寺用に所謂精進料理の料理方法で作ったものである。
これを大晦日に持ってくるのが夜雀亭の年最後の仕事である。
「星。夜雀亭の人が来ましたよ」
「はいはーい」
お堂の奥から出てきたのは寅丸星。
毘沙門天の化身であり、白蓮の弟子でもある彼女は夜雀亭の二人が来たということを聞いていそいそとやってきた。
それもそのはず。彼女は幻想郷の中でも指折りの大喰いなのだ。
普段は寺の者ということもあって大量に食べるということはしないのだが、この時だけは好きなだけ食べるのである。
そのため彼らが持ってきたおせちの量は普通の家の3~4倍近くある。
「今年もありがとうございます」
「うん、お礼はいいから涎拭けよ」
「星。そんなはしたない姿見せない」
「あ、すいません」
「ふふ、そんなに楽しみにしてくれてこちらとしてもうれしいです」
「まぁ、なんだ。独り占めするなよ」
「はい!寺の皆と、あとナズーリンとも一緒に食べさせてもらいます!」
そう宣言している星であったが、その視線はおせちに固定されたままであった。
「聖さん。その…寺の皆さんで食べてください」
「はい、ミスティアさん。星が勝手に食べないようにしっかり見張っておきます」
「ほどほどにしてやれよ」
「そう言えば、今年も鐘はついていかれるんですか?」
「あぁ、そのつもりだが」
「なら今から案内しますね」
そう言って白蓮は立ち上がって二人を案内し始める。
重箱を抱えている星に一抹の不安を感じつつも、二人はそのあとをついていった。
鐘のところに行くとそこには人の行列を処理している響子がいた。
「あれ?聖さん、どうしたんですか?」
「響子、今人って何人いるかしら?」
「あ、えーっと…丁度この行列を捌いたら百七回になりますので、最後の一回をついてもらおうと呼ぶところだったんですけど」
「あら。それなら最後の一回は彼らについてもらおうかしら」
「え?いいんですか?」
「私は普段からついていますし、たまにはいいでしょう」
「聖さんがそう言うならいいですけど…って、ミスティア!?」
「あ、響子。調子はどう?」
「そりゃあ、もうばっちり!って、そうじゃなくて!あなた達がつくの!?」
「そういう話らしい」
「ならいいわ!じゃあこの列に並んで!」
「了解」
響子に促され二人は列に並ぶ。
そうして待つこと十数分。二人が鐘をうつ時が来た。
「行く年いろいろありましたが、これで終わりですね」
ミスティアがそういい、二人は鐘をうつ。
そうして進がミスティアに言った。
「来るとしもいろいろあると思うけど、よろしくな」
「はい」
今年最後の夜雀亭でした。
それではよいお年を