居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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あけましておめでとうございます。
今年も夜雀亭をよろしくお願いします。


その50 山の神と祟り神

命蓮寺で鐘をついた二人が外に出ると思わぬ人がいた。

 

「あ、鷲田さんにミスティアさん!あけましておめでとうございます!」

 

妖怪の山の山頂の守矢神社に居を構えているはずの人、東風谷早苗が話しかけてきた。

辟易とした表情を隠すことなく進は答えた。

 

「早苗か…あけおめ」

「早苗さん、あけましておめでとうございます」

「それで新年の参拝はもう済ませたか?」

「済ませてるわけないだろ」

「ですよね!まだですよね!なら早速うちの神社に行きましょう!さぁ早く!」

「取りあえず落ち着け。そっちには日が明けるころ行く予定だからそれまで待ってくれ」

「そんなこと言って博麗神社に行くんでしょう!?それはダメです!」

「いや、博麗神社には新年会の時に行く予定だから。この後は帰って寝るだけの予定だから」

「なら絶対に来てくださいね!待ってますから!」

「分かった分かった。寒いのにお疲れさん」

「ではよいお年を―!」

 

そう言うと彼女は近くの人に似たようなことを話しに行った。

解放された二人は息をついた。

 

「夜に出歩くもの好きな人間もいないだろうに…なんかすごいのか何なのかよく分からないな」

「まぁ、一生懸命でいいじゃないですか」

「…帰って寝るか」

「はい」

 

こうして二人は帰路についた。

 

その日の夜明け前。

進とミスティアの二人は家を出て妖怪の山に向かった。

途中で天狗たちと新年のあいさつを交わし、山頂につくころには空が白んできていた。

 

「もう夜明けか」

「みたいですね。ちょっと朝日を拝んでから参りましょうか」

 

鳥居の外で昇り来る朝日を二人が拝んでいると後ろからかかる声が聞こえた。

 

「夜明け前から参拝とは感心だな」

「こらこら。初日の出を拝んでる人に声をかけるなんて神奈子は分かってないね」

 

声のした方を見ると、そこには注連縄を担いだ人と目玉の着いた帽子をかぶった人がいた。

二人はこの神社に祀られてる神様、八坂神奈子と洩矢諏訪子であった。

 

「あけましておめでとうございます。神奈子さんと諏訪子さん」

「おめでとうございます」

「おめでとう。それで初日の出を拝みに来ただけと言う訳ではないようだな」

「はい。こちらを納めに」

 

そう言って進が取り出したのは二本の酒瓶。

彼らはこの酒を御神酒として奉納しに来たのであった。

 

「今年もありがとう。なんだかんだ言って外のお酒を飲む機会は少ないからな」

「それで今年はどんなお酒かな?」

「折角ですので大吟醸を」

「おっ。それはいいね」

「まぁそれはともかくだ。せっかくここまで来てもらったんだ。少し上がっていかないか?」

「それならお言葉に甘えまして」

 

そうして二人と二柱は守矢神社の中へと入っていった。

 

「それで二人の今年の目標は何だ?」

「いきなり何を聞くんですか」

「いや、どうせならたまには神らしいことでもしようと思ってな。人の願いを聞き入れてみようとしただけだよ」

「ならそれは人間にやってください」

「普通の人間がここに来ることは珍しいことだから、この際半人でも妖怪でも構わないぞ」

「前にも言いましたが、俺はどの宗教にも入る気はありませんので」

「連れないな」

 

そう言うと神奈子は酒を呷る。

そんな様子の彼女を見て進は自ら進言した。

 

「何かつまみでも作りましょうか?」

「いや、客に作らせるわけには…」

「いいですって。こっちがやりたいっていってるんですから」

「むぅ。それなら頼む」

「あ、なら私も手伝いますね」

 

そう言ってミスティアと進は台所へと向かった。

残された神奈子に諏訪子が話しかける。

 

「ふられちゃったようだね」

「ま、それがあいつのいいところだ」

「おーおー、強がっちゃって」

「うるさい」

 

また彼女はふてくされたように酒を呷った。

 

「ところで早苗は?」

「さぁ?」

 

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