「こんにちはーっす。今日も飲みに来ましたよーっ!」
扉を大きく開けて入ってきたのはここの常連、射命丸文。
いつもは一人で来ることが多い彼女であったが、今日は小脇にもう一人抱えていた。
「文、今日も来たのか…ってなんだ、はたても一緒か」
「そうですよー!今日は二人で飲みに来ましたー!」
「文、もう着いたのなら下ろして…」
わきに抱えられてグロッキー状態になっているのは姫海棠はたて。
普段は家にこもって携帯電話型カメラを使って新聞を作っている彼女がこの店に来ることは実はそんなに珍しくない。
文が来るときに時々半ば拉致のような感じで連れてくるからだ。
「ところで文、また最高速でかっ飛ばしてきたのか?」
「そうよ…私が止めてっていっても聞く耳持たずで、もう気分最悪だわ…鷲田さん、水ください」
「烏天狗も空に酔うのか…ほれ、水」
「ありがとう…あー生き返るー」
「それで二人の注文は何だ?」
「いつものお願いしまーす」
「私も文のと一緒でいいわ」
「了解。八目鰻のかば焼き、二つ入りましたー。で、飲み物は何にするんだ?」
「「じゃあ、ビールで」」
「ういうい。それじゃ、おとなしく待っててな」
そう言うと従業員は飲み物を注ぎに向かう。
カウンターに残された二人は目の前の小人を指で突きながら話を始めた。
「いやーそれにしてもびっくりだよ。はたての新聞がコンテストで一位をとるとはね」
「ふふん。今回はネタがよかったからね。最近来た兎たちの情報を抜けるのもこのカメラのおかげだし」
「団子食べてる方は私も会ったことがあるけど、もう一人の方って結局何だったの?」
「さぁ?でも生活を見る限り永遠亭の兎みたいな感じで真面目だから空回りするタイプだよ、あれは」
二人の会話が弾んできたところで、第三者から声が飛んできた。
「二人とも、私をつつくのをやめて!」
「あ、針妙丸。ごめん。無意識だったわ」
「そうそう。あんたが突っつきやすい大きさで、突っつきやすいところにいるのが悪いのよ」
「うー。二人ともあの変態みたいなことを言って」
「変態って…あぁ、あの人間のことね」
「誰それ?」
「最近、都市伝説騒動があったじゃない?それの犯人のこと」
「あー。そんなこともあったわね。それでその犯人がどうして変態扱いされてるの?」
「なんか針妙丸を見かけた時に『ペットにしたい!』っていってたらしいわよ」
「確かにそれは変態だけど…気持ちが分からないこともないわ」
「ちょっと!この人何言ってるの!」
「うん、この子が家にいれば普段上下関係ですさんだ私の心も…」
はたてが自分の世界に入り始めたところで従業員がビールを持ってきた。
「ほい、注文の生二つ。って、はたては何やっているんだ?」
「鷲田さん!この子ください!」
「…は?この子って針妙丸か?」
「はい!だって、可愛いじゃないですか!ちっちゃくて!」
「あ、うん…悪いけど、それは俺じゃなくて霊夢の方に行ってくれないか?」
「へ?」
「いや、針妙丸って普段博麗神社に住んでいるんだよね…」
「え?」
従業員の言っていることを少しずつかみしめていったはたての顔が青ざめる。
「だからこいつが欲しいなら俺じゃなくて霊夢に言ってくれ。責任はとれないけど」
「あ、はい。分かりました」
「…取りあえず注文の生二つだ。料理の方はもう少ししたらできるから」
そう言うと従業員は次の注文を取りに向かった。
残された天狗のうちはたては針妙丸に話かけた。
「…今、博麗の巫女のところにいるっていう話だよね?」
「そうだけど?」
「その、大丈夫なの?巫女に何かされてたりしてない?」
「快適な生活を送らせてもらってるよ」
「ほんとの本当に?」
「うん、あんたが霊夢のことを全く信用してないのは十分にわかった」
「ああああああ!巫女には何も言わないで…」
「霊夢も本当に何をしているんだか…安心して。何も言わないよ」
「そう。ならよかった…で、うちの子になる気は」
「無いです」
「そんなー」
崩れ落ちるはたてであった。
自分も針妙丸で癒されたい。