居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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その59 純粋と三体

 

ある日の深夜。

夜雀亭のカウンター席には二人の女性が居座っていた。

 

「あ゙ー。従業員さん、この飲み物お代わり」

「私にも一杯。あと何か適当な食べ物も頂戴」

「ビール二つに付け合わせ、了解っと」

 

先に注文したほうが純狐で、彼女は金色の髪にどこか外の世界における中国の民族衣装を訪仏させる服を着た女性である。

純狐に合わせて注文したのがヘカーティア・ラピズラリで、赤い髪をしており、周囲に三つの色が異なる球を浮かばせている。

彼女ら二人はこの日の昼間からずっとカウンター席で飲み続けていたのだ。

 

「それにしても従業員さん、聞いてる?」

 

すでにかなり酔っている純狐は働いている従業員におかまないなしに話しかける。

無視すると後々が面倒になることを熟知している従業員はそれに渋々応えた。

 

「聞いてる聞いてる。で、今度はどうしたって?」

「やっぱり聞いてないじゃない。さっき永琳と鈴仙に会いに行こうとしたら落とし穴に落とされたのよ!この私が!」

「永遠亭ではよくある話だな。でそれで?」

「私がこんな風になっている姿を見てそこの住人の一人が大笑いしたのよ!」

「てゐか輝夜だな。そういったことをしそうなのは」

「だからそいつをちょーっと純化しようとしたらそいつ穢れ持ってないのよ!これが飲まずにいられもんですか!」

「いや、あんたしれっとやばいことしようとしてただろ!穢れを持ってないということは多分輝夜だと思うけど、あいつじゃなかったら死人が出てる!」

 

そうやって二人の会話が盛り上がっていると今度は純狐の隣に座っていたヘカーティアが従業員を奪い去るように話しかける。

 

「従業員さん、あなたは私の服装をどう思ってる?」

「どうって、幻想郷じゃめったに見かけないTシャツ着ているな」

「へんなTシャツとか思ってないわよね?」

「思ってない思ってない」

「よかったあ。ここの住民ってこんな服している人ほとんどいし、緑色の巫女に至っては変なTシャツヤロー呼ばわりするし、散々だったのよ」

「それは大変だったな」

「大変なんてもんじゃないわ。まったくこのセンスが理解できないんてここの人はどうかしているわ」

「ま、郷に入っては郷に従えっていう言葉もあるし、我慢だな」

「ところで」

「何だ?」

「「注文のものは?」」

 

二人の言葉に従業員はわなわなと肩を震わせて叫んだ。

 

「お前らが話しかけてきたんだろうがー!」

 

 

「おまち。ビール二つとラーメン二杯だ」

 

従業員が二人に出したのは黄金色の飲み物が入ったジョッキと黄色の麺が入ったどんぶり。

それらを出された二人は従業員のほうを怪訝そうに見ていた。

 

「えーっと、ラーメンなんて締めに食べるもの注文した記憶ないんだけど…」

「お前ら、今までどれぐらい飲んだと思っている」

「さ、三時間…?」

「十時間だ。もう客もお前らしか残ってないし、いい時間じゃないのか?」

 

ヘカーティアと純狐の二人は互いに顔を見合せた。

そしてどちらからともなく口を開く。

 

「まぁ、今日はこれでお開きにするよ」

「それじゃ、私たちがこれを食べている間にお会計をお願い」

「了解。お会計お願いしまーす」

 

そして従業員が差し出した領収書に書かれていたのはいくら二人とは言え昼間から飲み始めたその時間に見合う金額。

渡された二人は目を丸くした後に従業員に言った。

 

「あー、明日持ってくるから」

「そうそう。思ったよりも飲みすぎちゃったから」

「はいはい。明日絶対にもってこいよ」

 

 

翌日。

お金を払いに二人ではなくクラウンピースが来て、従業員は目を丸くした。

なにも、二日酔いでダウンした二人に代わってクラウンピースが代金を持ってくることになったらしい。

そして彼女は無邪気にこういった。

 

「あと、おつりで何か甘いもの食べていいって聞いたから何かちょうだい」

 

思わずあの二人に殺意が芽生えた従業員だった。




実を言うと一番悩んだのはタイトルだったり。
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