居酒屋 夜雀亭   作:アンフェンス

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ご無沙汰しています。
約4か月振りですが、よろしくお願いします。


その62 南瓜

 

冬の入り。

まだ午後五時なのに真っ暗な幻想郷で一人の客が夜雀亭にやってきた。

 

「よう、鷲田。今日もやってる?」

 

店に入ってきたのは以前月からやってきた兎の一人、鈴瑚である。

彼女は月からこの世界に移住してすぐに夜雀亭を見つけた時からこの店に足繁く通っている。

今では常連客とともに酒盛りもするなど、かつて幻想郷に攻め込もうとしていたとは思わせないほどなじんでいる。

そんな彼女はいつものようにカウンター席に座り、注文をした。

彼女がこの店に来て最初に頼む料理は決まっている。

 

「じゃ、いつも通り団子一本」

 

お目当ての団子が来る時を待とうとした彼女は次の瞬間、その表情を曇らせた。

彼女の顔を曇らせたのは従業員の返答だった。

 

「ごめんな。今日はいろいろあって団子を作ってないんだ」

「え?ちょっと待って。今日は何も行事はないはずだよね?」

「今日は冬至だぞ」

「とうじ?」

「冬至も知らないのか・・・って、月からしたらそんなこと気にならないもんな」

「鷲田、とうじって何?」

「冬至っていうのは一年で最も昼間が短い日のことだ。この日に柚子湯に入って南瓜を食べる風習がここにはあるんだ」

「へー、昼間の長さって一定じゃないんだ」

「月だと一定なのか?」

「一定だね。昼間も夜も十二時間で固定になってる」

「月の技術力って本当にどうなっているんだ?」

「さぁ?八意様なら何か知っているんじゃない?」

「永琳に聞くのはちょっとなぁ」

「まぁ、月の話は置いといて。それで今日がその日だとして、それと団子を作ってないことに何が関係あるの?」

「さっきも言ったとおり、冬至には柚子湯に入って南瓜を食べる風習があって、それに倣って今日うちでは柚子と南瓜を使った料理を出しているんだ。それで団子を作る余裕がなかっただけ」

「ふぅん。柚子と南瓜って何か合わなさそうな気がするけど」

「意外とあうぞ、これが。というわけでおすすめは今日限定の南瓜の柚子包みだ」

「へぇ。なら私から団子を奪ったそれでも注文しようかな」

「了解」

 

注文を受けた従業員を見送った鈴瑚は店内を見回す。

すると入店した時から今まで気づいていなかったが、店内のあちこちに柚子と南瓜を模した飾り付けがさがっていた。

そして店内を仄かな柚子の香りが包んでいた。

 

「季節かぁ。月にいたころには全くなかったけど、こういうものならいいねぇ」

 

月にいたころと今を比べて物思いにふけっている彼女の目の前に一枚の皿が置かれた。

 

「ほい、注文の南瓜の柚子包みだ。じゃ、ごゆっくり」

 

皿の上に置かれていたのはどう見ても柚子が丸々一個あるだけの料理。

 

「何この料理…まんま柚子みたい。あ、でもこれヘタ周辺がふたになっている」

 

鈴瑚が柚子の上部のふたを取ると、そこには柚子の果肉ではなく、南瓜のそれが中に詰め込まれていた。

 

「面白い料理。これはナイフとフォークで食べたほうがいいかね」

 

そう考えた彼女はナイフとフォークを持って器用にその料理を4つに切り分ける。

そして切り分けたうちの一つを口に運んだ。

 

「柚子の苦みと南瓜の甘みがいい具合に混ざっておいしい」

 

口に広がるのは柚子の香りとその皮の苦み、そして南瓜独特の甘み。

そして、それらを煮込んだ際にしみ込んだ砂糖醤油の味。

これらが口の中で喧嘩することなく調和した味が出来上がっていた。

無心で食べきった鈴瑚は一人、感想を言った。

 

「まぁ、この料理が私の団子を奪ったというのなら納得だね」

 

そう結論付けた彼女はお代わりを従業員に頼むのであった。

 

 

その後もせっかくだしと様々な料理を食べた鈴瑚は店から帰る途中でつぶやいた。

 

「たまには団子以外しか食べないっていうのも悪くないね」

 

そのつぶやきはいつもより深い闇へと吸い込まれていった。




冬至ということで南瓜と柚子の料理でした。
これからもかなりの不定期更新となると思いますが、また投稿した時はお付き合いしていただけると幸いです。
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