近況? テストとバイトに突然現れたメテオがどごーんと当たってパ-ンしてくんねえかなあって考えてます。
【警告】:挿絵があります。苦手な方はご注意を。
どうもみなさんおはこんにちは。フェリアスナ・レフィルです。
なんだかこんな風に振り返るのも久しぶりな気がします。
……というのも、それだけこの数日間が濃かったっていうことなんだけど。
「アスナさん、そろそろ出発しますよー」
「あ、はーい。すぐ行きます」
遠くからかけられた声に、私はひねりの無い返事をする。そして、手に持っていたものを纏めつつ服のポケットに突っ込んだ。
「すいません、待たせました」
「いえ、それほど待ってませんよ。……では行きますか」
そろそろ街につきます、と呟きながら、赤いバンダナをしっかりと頭に装備した青年が目前を歩いていく。目にも鮮やかな山吹色の布が、ひらひらと宙に踊った。
——彼の名はエイト。この大陸で出会った、物腰柔らかな青年だ。
赤いバンダナを頭にしばり、群青色のシャツの上に山吹色の上着を羽織った彼の背には、鞘に納まった剣がある。……そう、彼はいわゆる旅人だ。肩にひっさげたショルダーバックをごそごそいじりつつ、一度辿り着いたことがあるという近くの街へ道を示してくれている。その動きは存外、隙がない。
……といっても彼は旅人経験は乏しいらしく、その分まごつくことも多いのだけどね。それに、隙がないといっても一般的な盗賊などを相手に考えた話であって、魔物相手にはひよっこもいいところといった感じだ。そんなわけでこの街へ案内してもらうこの期間だけだが、初歩的な野営の仕方を教えたり、危うい時にはこっそり助力したりなど、色々手を貸したりしている。
「……」
——と、ここまで話してみたが。
どうしてこれまで一人旅をしてきた私が、彼らと行動を共にしているのか。……というか、街へ案内ってなんだ。あんた世界中旅してきたんだから、そんなものしてもらわなくたってわかるだろ——みたいな疑問が残ると思う。
しかし、もちろんこれにも理由があるのだ。私には正直どうにもできない理由が。
……それを説明するために、少し前まで振り返ってみよう。
時は数日前、そう。……私がルーラを暴走させたときまで遡る。
*・*・*
ルーラを暴走させ、あふれる膨大な魔力にのみこまれた私はあの後——気がつけば真っ白い空間に立っていた。
……え、いや、なんで真っ白い空間? と思うことだろう。私もそれには同感だ。正直この状況に対してなにがどうしてこうなっているのか判断もつかなくて、その時は混乱したものだった。……いつの間にか立っていたそこは、上も下も、どこもかしこが白く染められていて、壁はおろか天上すらない。あからさまな異空間として、ひっそり存在していたのだ。
ちなみにここに来たことがあるのかという話だが、もちろん私は行ったことはない。ルーラの特性上、一度足を運んだところにしか転移できないはずなのだが……そのことが、更に謎を深めた。そもそも、天上があるかもわからないこの場所に、転移しろというほうが無理な話なのである。通常、このような異空間には、転移魔法が弾かれる結界が張られているためだ。……実際気配を探れば、そのような空気が漂っていることを確信できる。
経験上、ルーラやリレミトといった魔法を発動させることは不可能だろうと悟る。これではここがダンジョンだったとしても、魔法を活用して引き返すことはかなり難しいだろう。結界の術式を見つけ出して破ればまた別の話だけれど。……結界術式に関しては神話レベルの代物だからなあ……セレシア様でさえもいじくるのには手間がかかると言っていたから、私には少々荷が重い。
閑話休題。
……とりあえず、やはりここに辿り着いたのは、魔法の暴走が原因と考えるのが妥当だろう。考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる現状だ。
「……あー術式省略しなけりゃよかったなあ……」
まあ、後悔しても後の祭りなのだけど。
溜め息をつきつつ、とりあえず私はこの空間を進むことに決める。……通常の場所ならばむやみやたらと歩き回るのは愚作と言えるが、この状況ではそんなことは言っていられない。唯一の頼みの綱であるサンディすら不在なのだ。……ただここにとどまっているより、自分から動いた方が万が一にも備えることが出来るだろう。
自分は、これでも探索については人並み以上にこなしているつもりだ。動きながらの方が警戒するに易い。
「……」
息を潜めることもなく、堂々と道を歩いていく。……どうせこんな場所だ。見つかってしまえば、もはやその時はその時であるし、そもそも隠れるような場所どころか壁もないのだ。それなら、気を張って体力を消耗するより存在を主張していたほうがいいだろう。
どちらにせよ、状況を動かさなければならないのだし。むしろむこうからやってきてもらえるほうがありがたい。
そう考えつつ、とにかくひたすらに先の見えない道を進んでいった。
……そうしてどれだけ歩いただろうか。
私の目前には、醜悪な魔物の顔が……ではなく、ただぽつりと
「……扉?」
そう、そこにあったのはまさしく扉としか言いようの無いものだった。
ただ、状況がおかしい。扉があることにはあるのだが、そこにやはり壁はなく、扉はただ置物のような状態でそこに立っているだけなのだ。それも、周りの風景は相も変わらず真っ白。ぶつかるところもなければ曲がるところもない、まっさらな空間。
扉以外になにもない。……罠として訝しむほうが当然といえる状況だった。
「……でも、まあ……調べないっていう選択肢はないんだけど」
……ああ、そういや独り言、増えたなあ。なんて、しょうもないことを心の中で呟く。
もしかすると、この扉に触れた瞬間見えない何かに貫かれるかもしれない。いや、そもそもこの扉自体が倒れてくるかもしれない。……もしかしたら、いやこれは。こうなるかも、いやちがう。色々な悪い予感が、脳内を駆け、荒らしていく。
こんな空間に一人きり。倒れたとしても助けてくれる存在はない。独り言を呟くのも、最後になるかもしれない。
……それでも私は、手を伸ばすことをやめなかった。……目前に突き出す黒いドアノブ。それはこんなに白い空間に囲まれているにも関わらず、光の反射一つしない、黒そのもので。……嫌な予感がするなあ、と思いつつ——ついに私は、そのドアノブを握った。
——刹那。体がぐいと、前へ引っ張られる。
握っただけで、特になにもしていないはずの扉が勝手に開いたのだと気づいたのは、何秒後だっただろうか。反射的にノブから手を離し、受け身をとろうとする。しかし、床に触れるはずの腕は一向になんの感触も示さなかった。
……扉の先はひどい段差なのかな。
そう推測した私は、咄嗟にとる受け身を変更する。この間、数秒にも満たない。それは、これまで嫌でも体験してきたものに対する受け身で。……体がすべてを感知する。風を切る音、感覚。そして、青臭い緑のにおい——
——既視感を、感じた。
「……っ、!!」
目の前を見据えれば、そこにあるのは、青。
白に包まれた、青空だった——
慌てて下をみれば、眼前に広がる緑、緑。……ああ、私はまた、落下していっているのか……まさかここまできて、また経験するとは思わなかった。そう諦めに似た思いが脳内を駆けるも、実際はそれどころじゃない。
こうしている間にどんどん地面との距離をつめているのもそうだが、木々の切れ目に、人の影を見てしまったのだ。……慌てて声を張り出す。彼らは私の存在に気づいていないようで。……巻き込むのは、あまりにも忍びなかった。
この状況に於いても他人を心配するのは、長年培ってきたお人好し天使根性によるものなのかもしれない。
「——そ、そこ! どいてっくださああああああっぃい!!」
森に大きく響いた声は、しっかりその意図を伝えてくれたようだ。人影はすぐに離れてくれた。落下予定地点で魔物らしき影がおろおろしているが、知ったことか。
私は魔力を練って、術式をいくつも展開させる。……もちろん、このまま落下したらひとたまりもないからだ。いくら体が頑丈といえど、三度目はないだろう。これまで幾度もなく空から落とされてきた天使として、何故かそう直感していた。
……しかし、どういうわけか魔法は発動しない。このときに限ってか。最悪かよ。そう心の中で吐き捨てながらも、もっと最悪なことに私は気づいてしまった。……その感覚は、転職したときに覚えていた魔法がつかえなくなったときのそれとまったく同じで。
——くそ、どうすればいいんだ。転職なんて今回してないのに、魔法が使えないとか。……仕方ない、力技で衝突を緩めるしか……っ!
その時の私は、かなり必死だった。……まあ、生死がかかってるんだから当たり前だけど、そのせいでつい、やらかしてしまったのだ。
魔力をまた練って、術式を展開せずに、今度は手から放出させるように練ったものを思いっきり吐き出させる。ついでに魔力で体をコーティング。後者に限っては気休め程度にしかならないが、何もしないよりかはまだましだろう。……魔力操作はお手の物だ。これは経験によるものなので、職に依存しない。よって威力は通常そのままだ。
ド、ゴン! 派手な音をして放出した魔力は地面との衝撃と拮抗して、私に対する衝突の勢いを緩めてくれる。おかげさまで、なんとか私は無傷で地面に降り立つことができた。
特に問題はない。体にも支障をきたす出来事はもう起こっていないようだし、減ったのは自分の魔力だけだ。
……ただ、少し、やりすぎだったという、こと以外は。
「……あ。」
自分の魔力のせいで、地面に大きなクレーターが出来ていたと気づくのは、それから数秒後のことである。
*・*・*
その後なんやかんだでそこに立ち尽くしていた青年……エイトさんと、その彼の舎弟(?)らしいヤンガスという男の人と話すことになり、落ちてきたことについてはぼかしつつ「現在地がわからない」と言った結果、なんと街まで案内してくれることを約束していただけたのだった。
彼らも天使根性に毒された存在らしい。……いや、案内することに旨味はないだろうから、打算的ではないんだろうけど。……そうと信じていたい。
とまあ、ともかく、彼らがお人好しなおかげで、私はわざわざ街を探さずともどうにかなることになったのでした。ちゃんちゃん。
ここまでで回想終了だ。
「……それにしたって、兄貴は物好きでがすねえ。こんなおっさんと、更に馬姫さまを連れてるってのに。空から落ちてきた嬢ちゃんまで連れて……」
「なにをヤンガス! 貴様わしとミーティアを愚弄する気か!」
……と、何やら横で口喧嘩をしているようだ。
とげとげ帽子をかぶった山賊風の丸まるとしたおじさん(おっさん)と、馬車の御者台で枯れ葉色のフードをかぶった老人らしきひと。……前者が先ほど名前を出した、ヤンガスという人だ。
かなりいかつい顔の人で、腕や頬に傷跡がある。荒くれ者、といった印象が強い。……が、それはぱっと見というだけの話で、基本的にまんまるボディだし、先ほども言った通りどういうわけかエイトさんを兄貴として慕っている面が強いのでそれほど怖いというわけでもない。
……カラコタ橋、まあ荒くれ者の町にいそうな感じで危険っぽいけど、私単体であっても負ける気はしないからさほど警戒はしていなかったりする。
後者はトロデという方で、何故だかわからないがどこぞの国の王様みたいな物言いをする人だ。フードをずっとかぶっていて顔は見えないのだけど、小柄なのと思ったより面白い人物だということはよくわかる。
馬車をひいている綺麗なお馬さん(女の子らしい)のことをどうやら溺愛しているようで、ミーティアと名をつけて常に様子を気遣っているようだ。その呼び名は「姫」で、本当にまるでお姫様か、というような待遇を受けている。……エイトさんが彼らを呼ぶ名も「陛下」「姫様」なので、中々絡み合った事情がありそうな予感がしたり。……まさか、本当に王様じゃないよね。そんな、セントシュタインの王族じゃないんだから……実際はそんなに、王族ってお目にかかれるものじゃないはずだし……。
とても悶々とするが、とりあえずエイトさんのパーティはそんな感じで構成されている。といっても、戦うのはエイトさんとヤンガスさんだけで、お姫さまとトロデさんは隠れているんだけどね。本当に王族か。
「まあまあ陛下、もうすぐ街につきますから落ち着きましょう? ヤンガス、喧嘩はだめだよ」
「……むぅ。ちと言い足りぬが、エイトが言うのであれば仕方あるまい」
「……兄貴が言うなら、我慢しやす」
ごちゃごちゃ陰で繰り広げられていた口論は、エイトさんの諌めるような声で終着する。それは優しく窘めるような声ではあったが……エイトさんの立ち位置が中々に謎だ。実質三人で旅をしているこの人たちだけど、一番トロデさんが偉いように見せかけて、実はエイトさんのほうが地位が高かったりするのではないだろうか。相変わらずよくわからない方々だ。
「あ、アスナさん。すいません、騒がしくて……」
「いえ、大丈夫ですよ。この数日間で慣れてしまいましたし」
「あはは……」
苦笑いのエイトさん。気持ちはわからないでもない。……一応まとめ役として、さすがにこのやり取りに思うところはあるのだろう。だってこの二人、毎日どころか一日に三回は口喧嘩しているし。私にも一応おまとめ役については経験があるので、身内でない客人がいる中、このようなやり取りを毎日のように仲間がしていたら、さすがにちょっと気まずいかな、なんてすぐに想像できてしまう。
こう考えると、中々に彼の立ち位置は不憫である。……部外者の私に憐れまれてる時点で、諸々かわいそうだ。
……あ。ちなみにだけど、上で言われている通り、私の名はアスナで通している。これはこの場に限らず、セントシュタインだとか各場所でも変わらない。……本名はもちろんフェリアスナ・レフィルなのだけど、天使の名前は普通の人間からしたら少しまどろっこしいとかつて指摘されたので、それ以来本名は名乗らず愛称で名乗ることにしている。
……まあ公式の場とかでは不敬にあたりそうな話だけど。そもそも、私人間じゃないし。これまでだって何も言われなかったんだし。特に問題ないかなー、なんて、最近はほぼ開き直っていたりする。
「……そういえばなんですけど、アスナさんは街についたあと、どうするんですか?」
おっと。少し思い起こしていたら声をかけられていた。純粋に疑問と言った感じで、エイトさんがこちらを覗き込んでくる。きょとんとしたどんぐり眼だ。ぱっちりさんだね。
「私は……そうですね、とりあえず元いた場所を探してみます。どうやら変なところを通ってしまったようなので、少し大変かもしれませんけど」
一応、以前彼らに元いた場所——セントシュタインを知っているかどうか訊ねてはみたが、知らないと返されてしまった。もしかしたら別の次元に来てしまったのかと思ったけれど、出てくる魔物などは見知った存在が多かったので、彼らにはとりあえず別の大陸? といった方向で話してある。
「それは……女の人一人で、危険じゃないですか」
「大丈夫ですよ、多少は旅の心得がありますし」
まあ……しばらくは素手で奮闘しなければならないんだけど。実はルーラが暴走したときに、武器と道具袋をどこかへ飛ばしてしまったみたいなのだ。なので私は今、お金もなにもないただの無一文児状態である。
そんなわけで、戦闘は基本的に彼らにお任せだ。さすがに一人になったら戦うけど……魔物の強さとか、観察は必要だったしね。……言い訳とか言うなよ。
「……それでも、うーん……」
エイトさんは納得できないようだ。この人、やっぱりお人好しなのかもしれない。彼らにも、なにか目的があるみたいなのに。……ここはきっぱり断っておくべきかな。
迷惑かけるのも悪いし、なにより私も望んでいないから。申し訳ないけど。
「大丈夫ですって。ある程度はなんとかなりますからね。……ほら! 街が見えてきましたよ」
軽く話を逸らして、目前を指差してみせる。そこには、壁に囲まれた街の姿があった。
……あれがトラペッタ。私が来たことのない、正真正銘初めての街。
「あ……本当だ」
エイトさんも見上げて、やっと気づいたように目を瞬かせる。そうとう深く考え込んでいたようだ。あんなに目立つ壁に気づかないなんて、案外ぼんやりさんなのかもしれない。
……とぼうっと彼の方を見ていたら、突然彼の丸い瞳が細められた。
「……? どうしたんですか」
「……煙が立ってる」
彼の視線に導かれて、再度壁に焦点を定める。……よくよく見れば、青い空に黒いもやのようなものが一直線に立ち昇っていた。
……火事、だろうか。なんだろう、……とても嫌な予感がした。
恒例の用語説明(キャラ)
主人公:戦闘中は馬車の中。援護は木の枝を投げて気を逸らせるくらいなものなので、最近やばいなー、太るかなあと考えている
エイト:どんぐり眼。たびたびアスナのことを「不時着したのにまともだ」「不時着したのに野営の仕方教えてくれた」「不時着したのに」と考えては頭を振っている。
ヤンガス:原作通り年頃の娘っ子が苦手なので彼女の相手は兄貴に任せっきり。時々不時着したときの衝撃を思い出しては首を振って記憶から打ち消す。
トロデ:フードをかぶっているのに騒ぎすぎてたびたびはずれる。
ミーティア:ここら辺の草おいしいな。
用語説明(補足)
天使:お人好しのお助けマン。困ってる人を助けるアソパソマソ的存在。ただし見えない。実際はただ優しいわけではなく、オーラを集めるため打算的に人助けをしていた。世知辛い。
三度目はない:9の世界において、既に主人公は二回ほど空から落下し、生死の境を彷徨う羽目になっている。水の中に落ちるからまだいいものの、流石に地面にガツンは死ねる。
魔法が使えない:転職すると、その職業の呪文が使えなくなる。ちなみに、武器だけは極めれば他の職で使えるし、スキルで覚えた特技に限ってはこちらも他の職で行使可能。
セントシュタインの王族:こいつらに限らずドラクエの王族って、王族の自覚ないんじゃないかなあとか思う。アポなしで謁見できます。
セレシア様:説明忘れてたけど9の世界におけるマジもんの女神さま。ギャルっ子サンディと割と仲良し。父親が行方不明。
白い空間:○神と●の部屋ではない。
魔法使えない感じにする結界:しかし ふしぎな ちからに かきけされた!
作者から一言:ちなみに前々話くらいに言ってた雨空についての対策は、アスナさんが軽ーくエイトさんに助言したおかげでなんとかなりました。突然の旅でエイトさんも頼りないのはしょうがないよね、ってお話。
閲覧、お気に入りありがとうございます。
【報告】H27.7.2 用語説明を訂正・セントシュタイン王族についての補足文追加。知らん人はわからんたとえでした。他、本文の言い回しを訂正しました。
H27.7.5 挿絵追加。ちなみに左にあるのは馬車です。見えぬ。