魔法少女リリカルなのはIF   作:多田 竜一

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 グランツ博士の開発した、体感シミュレーションシステムの実現によって生まれた「ブレイヴデュエル」。
 フィールド、モンスター、そしてTCGプレイヤーが一体となったこのシステムは、人々を熱狂の渦に巻き込んだ!

 そんな中、小学4年生の高町 なのははバトル・スピリッツというゲームに出会う。

 友達のアリサ・バニングスと月村 すずか。そしてバトル・スピリッツによって出会ったフェイト・テスタロッサとアリシア・テスタロッサと共に「チームT&Hエレメンツ」としてお互いにバトルの腕を磨き合い、充実した日々を送っていた。

 そんな中、「チームT&Hエレメンツ」は、ロケテスト時全国1位の最強チーム「ダークマテリアルズ」と戦うことになった。

 満席の会場の中、試合は進み、大将戦。
 なのはVSシュテルによる、ゲームの勝敗をかけた試合が、今始まる。


バトルスピリッツ~リリカルなのはinnocent~
太陽の化神、今ここに現る! バトスピにかけるなのはの思い


「「ゲートオープン。解放!」」

 仮想空間への扉が開く。2人身体がバリアジャケットに包まれて、両者はバトルフィールドに立った。

 そのバリアジャケットは、両者ともにセイクリッド。

 なのはは白で、シュテルは黒。

 ゲームの勝敗を分ける最後のバトル。フィールドに立つ2人には緊張が走り、見る者は胸を躍らせる。

 そんな中、2人はデッキを定められたゾーンへ置き、初手となる4枚のカードを1枚ずつ引いていく。

 片や「軌跡を描いた輝き(アポロ)」デッキであり、片や「軌跡に描かれた神話(こうどう)」デッキ。

 そしてこれは、ビギナー対トップバトラーの戦いでもある。

 トップバトラーのシュテルは、感情を表に出すことはなく、程よく緊張しているのがよくわかる。

 対してビギナーであるなのはの抱く緊張はだいぶ強いであろう。けれど彼女は―――笑っていた。

「よろしくお願いします。タカマチさん」

「うん! 楽しいバトルにしようね! スタークスさん!」

 挨拶するシュテルに笑顔で返すなのは。

 盤面にコアが用意され、これでバトルの準備は整った。

 そうして、シュテル先攻でバトルは始まった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 第1ターン。シュテルは「光り輝く大銀河」を配置してターン終了。

 第2ターン。なのはは「ムゲンドラ」をレベル3で召喚。そしてバーストをセット。

 第3ターン。シュテルはネクサスの効果でコストが下がった12宮Xレア「金牛龍神ドラゴニック・タウラス」を召喚してアタック。【激突】の効果により「ムゲンドラ」破壊した。

 第4ターン。なのはは「戦竜エルギニアス」を召喚し、マジック「ブレイヴ・ドロー」使用。2枚ドローし、オープンした「セイバーシャーク」を手札に加え、残ったカードを「太陽神龍ライジング・アポロドラゴン」「炎楯の守護者コロナ・ドラゴン」の順に引くように戻し「戦竜エルギニアス」でアタック。そのアタックを、シュテルはライフで受けた。

 そしてバトルは、第5ターンへ突入する。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「メインステップ。『エリダヌス・ドラゴン』をレベル2で召喚」

 フィールドに赤シンボルが現れ砕け、エリダヌス・ドラゴンが召喚される。

 そのスピリットの出現に、なのはは身構えた。

 エリダヌス・ドラゴンのレベル2と光り輝く大銀河の2枚が揃った。それは―――。

「光り輝く大銀河のレベル1効果により、手札の『光導』スピリットのコストを5にする。さらにエリダヌス・ドラゴンのレベル2効果。このスピリットを疲労させ、『光導』スピリットの軽減すべてを満たしたものとして召喚する」

 ―――神の降臨を意味する。

「黄道より来たれ、生命を司る牡羊座の神よ。『白羊樹神セフィロ・アリエス』レベル2で召喚」

 不足しているコアの確保のために、エリダヌス・ドラゴンのレベルが1に下がる。

 緑のシンボルが現れ砕け、そこから4つの光が宙を舞う。光は、複雑な軌道でフィールドの地面に向かい、そしてそこに牡羊座を描いた。地面が割れ、光導の神が這い上がりその姿を現す。

 白羊樹神セフィロ・アリエス。その咆哮は、少なくとも羊のそれではなく、神である自身の降臨をフィールド全てに知らしめるかのようだった。

「アタックステップ。金牛龍神、行きなさい」

 シュテルの命令と自身のカードの疲労により、ドラゴニック・タウラスは動き出す。地面を駆け、なのはに迫っていく。

 お互いにフラッシュタイミングに優先権を破棄。なのはの場は、疲労状態の「戦竜エルギニアス」が存在するのみ、従って、なのはの残った選択肢は、1つ。

「ライフで受ける!」

 なのはの前に、桃色の魔法陣が展開される。ドラゴニック・タウラスがそれに向かって頭突きをかまし、その衝撃がバリアジャケット越しになのはへと流れた。

 その衝撃に、悲鳴を上げながらなのはは1歩後ずさった。同時に、ギィンという音と共に魔法陣とライフ1つが砕かれる。

「くっ……でも、ライフ減少でバースト発動!」

 伏せられたバーストが開けられる。それは、白の代表的な防御マジックの1つ。

「『絶攻氷盾』のバースト効果で、ボイドからコア1個をライフへ」

 白い風がなのはを包み、ライフ減少による痛みからなのはを癒す。

「ターンエンド」

 シュテルのその宣言により、ターンはなのはへと移行した。

 第5ターン時点で、両者のライフはシュテルが4、なのはが5。

 そして、なのはの第6ターンがやってくる。

「スタートステップ」

 宣言とともに、ターン開始の一連の処理を済ませて、なのはは引いたカードを手札に加え、吟味する。

 目の前にいるのは、最強チーム「ダークマテリアルズ」の最強のプレイヤー「シュテル・ザ・デストラクタ」だ。

 一瞬だって気を抜くことは許されず、そして1つのミスさえ敗北を招いてしまうこの状況。

 手札を握るなのはの右手は、震えていた。

 自分でも、緊張しているのがよくわかる。

 けれど、決して大将に回されたことによる重圧のせいではなかった。

 この震えは緊張というよりむしろ、武者震いのほうが近いのかもしれない。

「もう、このフィールドには慣れましたか?」

 思考のために沈黙になっていたなのはに、ふとシュテルがそんなことを尋ねてきた。

 フィールドの向こう側にいる彼女の姿は良くは見えないが、バトルフィールドの仕様により声はお互いにハッキリと聞き取れるようになっている。

 その声に、なのはは手札を見ていた顔を上げシュテルの方へと向ける。

 そして少し考えてみる。

「うーん……。正直、まだ新鮮さが抜けないかな」

 まあつまり、慣れていない。

 ここにはもう何度か立っているが、この空間には毎回のように驚かされる。

 フィールドを流れる乾いた風や、スピリット特有の鳴き声、それにコアが砕ける時の音と衝撃。どれも普段の生活の中では決して感じるこのできない物ばかりだ。

「でも」となのは。「ここ、私は好きだよ」

「そうですか。ちなみに、どのようなところが?」

 聞かれて、なのははまた考える。

 でもそれは、何故か自然と言葉にできた。

「私ね、ずっと寂しかったんだ」

 思い出したのは幼少の記憶だった。

「昔はさ。家に帰ってきても誰もいなくて。今はそんなことはないんだけど、でもあの頃の寂しさがまだ心の中に残ってて」

 それは、家族が家にいるようになっても、友だちができても、変わることはなかった。少しはマシになったのは確かだけど、それでもやっぱり、何かが足りなかった。

「今なら分かる。私は、夢中になれる何かが欲しかったんだ」

 そうすれば、この寂しさはなくなることはなんとなく分かっていた。だから、探した。家族に剣術を教わってみたし、友だちと一緒にいろいろなゲームもやった。塾にも行って勉強もがんばってみたりもした。

 けれど「コレ」というものには、ポッカリと空いた穴を埋めてくるほどのものには、どうしても出会えなかった。

 気づけば、ボーっとする時間が多くなってた。

 寂しさを感じないように、考えないように、ボーっとしていた。

「それでね。アリサちゃんとすずかちゃんに連れられてT&Hに行った時に、初めてここに立ったんだ」

 あの時は正直乗り気ではなかった。

 どうせ見つからない。無駄足になるだろう。と。

 けれど。

「そこで、見つけたんだ」

「それが、バトルスピリッツ」

 シュテルの言葉を、なのはは頷いて肯定した。

「初めて、寂しさを感じなかったんだ。何かを考えるといつも付きまとう寂しさが、ここにいたらいなくなってたの。それ以来、もう私の中からは寂しさは消えていた。だから―――」

 ドローステップに利き手の左手で引いたカードを見つめる。

 それは、バトスピに手を出したキッカケとなった、一目惚れしたカードの1枚。

「メインステップ! イグア・バギーをレベル1で召喚!」

 1度は失った太陽のように輝く生活を取り戻させてくれる気がした、このデッキのキースピリット。

 このフィールドを、共に駆けると決めた仲間(カード)の1枚。

「太陽の化神、今ここに現る! 開闢の光よ、世界を照らせ! 『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』を召喚!」

 フィールドに赤のシンボルが現れ、途端にそれが炎の渦を纏う。荒れ狂う渦の中、碧に光る一対の瞳。刹那、炎を払い渦の中から現れたのは、紅き龍。太陽をそのまま龍にしたような炎のドラゴンは、この地に降り立つと同時に咆哮を放った。

「―――私は決めたんだ、私にバトスピをくれたアポロたちと一緒に、このフィールドを駆けるって!」

 なのはの言葉に応えるように、フィールドのなのはのスピリット3体が吠える。

 それは言ってしまえば、子供が新しいオモチャに出会って喜んでいる光景そのものだが、なのはには珍しいその無邪気な笑顔は、見ててとても微笑ましいものであった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

ヴィータ「アイツ、そんな思いであそこに立ってたのか」

アリサ「あの娘、結構寂しがり屋なのよ。独りの時とか、泣いてた時があったくらい」

はやて「それはまあ、良かったなぁ。夢中になれるもん見つかって」

すずか「うん、本当に」

はやて「なんやでも、なのはちゃん本当にええ顔して笑うなぁ。のろうさ貰った時のヴィータくらいかわいいわぁ」

ヴィータ「はあ! ちょっ、はやて! アタシはあんなガキみたいに笑ったりは―――」

アリサ(それにしても、どんだけ楽しいのよ。なのはったら)

すずか(なのはちゃんのあんな笑顔。私、今まで見たことあったかな)

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「なるほど。そのような思いで立っていたんですね」

 クスリ、とシュテルの頬が少し緩んだ。

 遠目にいるなのはには分からなかったが、それでも優しくなった口調のおかげで、その様子は難なく想像はできた。

「1人のカードバトラーとして、アナタのその言葉は素直に嬉しいです」

 そんなことを言われて、なのはは少し照れくさかった。

 なんか、出会って間もない少女に何を話しているのだろう、と自身の行いを思い返して恥ずかしくなってきた。

「ですが―――いや、だからこそ」

 瞬間、声のトーンと共に、シュテルの目つきが変わる。

「バトルフィールドで、手を抜いたりはしませんよ」

「ふぇ?」

 シュテルの変貌に間抜けな声を出してしまったなのはだが、そんなことなどお構いなしにフィールドでは変化が起こっていた。

 シュテルの場のスピリット、セフィロ・アリエスが緑の光を放っている。

 つまり、このスピリットの何かしらの効果が発揮されているのだ。

「白羊樹神レベル1からの効果です。系統『遊精』を持たないスピリットカード、またはブレイヴカードを召喚するとき、それを疲労状態にします」

「え、ウソ!? それじゃ……」

「ええ。折角出した太陽神龍ですが、疲労していただきます」

 ライジング・アポロドラゴンとイグア・バギーに緑の光が纏い、それに生気を吸われたかのように2体スピリットはその場にへたり込んでしまった。それと同時に、盤面のライジング・アポロドラゴンとイグア・バギーも疲労する。

「うう。……バーストをセットして、ターンエンド」

 まさに出鼻を挫かれたなのはは、そのままターンを終了させた。

 そして。

「スタートステップ」

 シュテルの第7ターンが始まる。




 いろいろと突っ込みどころはあると思いますが、バトルの内容や流れを楽しんでいただければいいかなと思ってます。

 正直、細かい設定や大将戦以外のバトル内容とか考えてないし(ボソ

 一応、シチュエーションは漫画1巻終わりから始まるドッチボール編を想像して書いています。
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