ここで言う彼っていうのは特に誰だか決めてないので、適当に流してください。
正直ちょっと失敗したけど誤字脱字だけ適当にチェックしたのをそのまま載せます。
教導隊。
それは、魔法による戦術や戦術に生かせる新たな魔法の開発や実用化、デバイスを始めとした戦術面での新たなシステムの導入のテスト、そして実用化したそれらを戦う者達に教え込む、管理局の職の1つ。
そんな教導隊の職場、その食堂で、彼は上司の女性と昼食をとっていた。
「まあ、流石はなのはさん、って言うべきなんすかね。また届きませんでしたよちくしょう」
「そんなことないよ。そっちが試作品とかじゃなくて製品だったら、あの一突きは届いてた思う」
「……渡されて5分のデバイスを使いこなした人が言っても、なんのフォローにもなりません」
彼はふてくされて、手に持った菓子パンをかじった。なのはさんと呼ばれた上司の女性は「そう?」なんて返したあとに、自作らしいお弁当から具を1つ口へ運ぶ。
彼女―――高町 なのは―――は、彼の目標だった。 彼女に追い付き、追い越したい。その一心で、ここ数年はほぼ全ての時間を魔法に費やした。幸い、彼には魔法の才能があったようで、それを彼はすぐに自覚した。その才能を使い、そして努力して、今ではここの部署の中で頭1つ抜けて優秀な魔導師になった。
それでも、彼は彼女に届かない。
極悪犯罪対策の部署からスカウトや単純な階級上げの話を受けたこともあったが、彼女と同じ部署で彼女を越えるために即答で断ってきた。
ここでは、幾千幾万もの戦況で彼女と対峙した。中には普通は彼が必勝になるような戦況も少なからず存在する。
それでも彼は、未だ彼女に勝利したことは、ない。
「ホント、あなたほどの魔導師が何でこんなところにいるんですか?」
愚痴気味に、彼はそう彼女に問う。
あなたなら、もっと危険な場所でその魔法を遺憾なく発揮出来るでしょう、と。
けれど彼自身、この質問の答えに期待はしてなかった。愚痴気味に溢した言葉だからというのもあるが、そもそも彼がこの上司の出世を望んでいない。
出世なんぞされたら、確実に教導隊から移動させられるだろう。そんなことになったら、もう彼女に挑めなくなる。
戦いの前線を行くこの高町 なのはを、一度も越えられないまま終わる。それは是非ともそんなことは勘弁願いたい。
まあ、愚痴気味だったのは彼女も察しただろう。適当にはぐらかされるだろうし、さっき彼女と行った運用テストの反省点でも考えておこう。 そこまで思って、菓子パンをまた一口かじる。
「うーん、なんていうかなぁ。このあたりの階級が一番ちょうどいいんだよね」
しかし返ってきた答えは、意外にも真面目なトーンでのものだった。 かじった菓子パンを口にくわえたまま彼女を見る。思わず上司相手に「は?」と言ってしまいそうになったが菓子パンをくわえていたおかげで言葉にはならなかった。菓子パン大感謝。
言葉は出なかったが、疑問符だけは伝わった様子だ。なのはは少しだけ考えて、それから話を切り出した。
「ほら、私もこう見えて一児の母をやっていますので、子どもを置いて危険なことをするのはあまりしたくないのですよ」
そういえば、写真を見せてもらったことがある。活発な笑顔が可愛い女の子たったはずだ。確か今年で10歳だったか。4年前のテロで天涯孤独になったその子を養子として引き取ったと聞いている。見た目に遺伝子的な繋がりは感じないのに、笑顔だけは良く似ていたのが印象に残っていた。
「でも魔法は好きだったから、あたり前線から離れたくはなかったし。だから危険じゃないけど魔法で戦える、この教導隊が一番良いんだ」
そうだったんですか、と言って、彼は菓子パンを食べ終えてコーヒーを一口飲む。
苦い。どうやら入れた砂糖の分量を間違えたようだ。
「しかしまあ、4年前にテロの最前線に突っ込んだエースの言葉とは思えませんね」
「何それ? 嫌味?」
「負け犬の遠吠えです」
彼女の冗談を、八つ当たり気味に跳ね返す。
言ってから、失礼な態度だなぁ、と自分で思った。まあ、彼女との付き合いも短くないし、大丈夫だろう。
彼の思った通り、なのはは彼の態度を気にせず、会話を戻した。
コーヒーをすする。
「平凡な毎日だけど、これが案外幸せなんだよね」
「……」
やっぱり苦い。しかしここには砂糖やミルクはない。今からでも取りに行くべだろうか。
「テロの時の無茶もまだ響いてるし、シングルマザーとしては、必ず家に帰れる距離で仕事してたいんだよね」
どうしてこんな人に憧れてしまったのだろうかと、彼女と世間話するといつも思ってしまう。
本当に信じられない。
今の言葉が真実なら、絶賛平和ボケを満喫しているという。娘のために無茶は出来ないと言い、無理な戦術は取らず、無理やり勝とうとは思ってないらしい。
対して彼は、この教導隊で彼女を追うようになってからかなりの無茶をしてきた。彼女が知れば止めてくるようなひどい無理もたくさん積み重ねてきてる。
そのうえで、彼は彼女に全く勝てないのだ。
(本当に、なんで憧れちゃったのかな)
とても追いつける気がしない。ここ数年で関係の距離はそれなりに近くなったが、実力のほどはむしろ遠ざかっているとすら思う。
(けどまあ、ここまで来たんだ。どうせなら死ぬまで目指す)
ここまでの道に、後悔はない。 だから彼は強く願う。この上司を―――高町 なのはを必ず超えることを。
決意を新たに、残ったコーヒーを飲みほした。
苦い。家に帰ったらココアを飲もう。
コーヒーの描写は一応、彼の苦悩する心をを現しているつもりではある。