ディアーチェ「あの回復効果と
ユーリ「絶攻氷盾を2枚も切ってしまっていますし、なのはさん、受けきれるんでしょうか?」
ディアーチェ「さあな。だが」
レヴィ「なにょはの目、勝つ気でいるよね」
ディアーチェ「あの手札の4枚―――いや、実質2枚だな。アレがなんなのかは、まあ見物だな」
「続けて、宝瓶神機でアタック」
アクア・エリシオンが、その青い光剣を構える。
「ここで獅機龍神の効果発動。『光導』スピリット―――宝瓶神機の疲労により、このスピリットは回復します」
伏せていたストライクヴルム・レオが、首を小刻みに振りながら立ち上がる。
「行きなさい。宝瓶神機」
光剣を構えたアクア・エリシオンが前へ出る。ストライクヴルム・レオの
まだこれを受けても負けるわけではない。このライフ3で止めているという現状は、獅機龍神や
しかし―――。
「待ってたよ、そのアタック!」
―――起死回生の一手は、ここにある。
「フラッシュタイミング! マジック『バーニング・サン』を使用!」
なのはがカードをかざす。と同時に、手札の1枚が赤く輝く。
(来ましたね。【アポロ】の切り札。……やはり1枚はそのカード)
「手札の『セイバーシャーク』をノーコストで召喚!
光を放ったカードは、自らなのはの手元を離れ、炎をまといながらなのはの盤面へ。そして神星皇の上に重なると炎と光が消え、瞬間、神星皇が回復する。
フィールドにはセイバーシャークの姿が現れ、それがすぐさま光りだす。光り輝いたセイバーシャークは、2本の白い光剣となり、それを、起き上がった神星皇がその両手で掴んだ。
「
そして、光剣を掴んだ神星皇が、アクア・エリシオンと激突する。両者とも、手に持った光剣で目にもとまらぬ速さで切り合っていく。
美しい剣舞が繰り広げられる。光剣独特の音でぶつかり合う青と白の光剣。その戦いの結末は、白い光剣が×の字を描き神を屠ったことにより、幕を閉じた。
そして、戦に勝利した神星皇は、その光剣を再び構える。
向ける先は―――シュテル。
「セイバーシャークの
シュテルの前に白のバリアが展開され、それに向かって神星皇が光剣で斬撃を放つ。
バリアを超えて襲ってきた衝撃がシュテルのライフの一つを奪う。
「……っ!」
残りライフ―――1。
「ですがそれでも―――」
迷いなく、シュテルはストライクヴルム・レオに手をかける。
「―――私の勝利は揺るがない」
カードを倒して、ストライクヴルム・レオがフィールドを駆けだす。
トリプルシンボルの
「ううん。勝ちは譲らない! 神星皇の
膝をついて伏せていた神星皇が、白のオーラを纏って起き上がり、そしてストライクヴルム・レオに咆える。
だがストライクヴルム・レオは、そんなことに構わず駆ける。
「
その猛進を、神星皇が光剣を使って阻み、両者が激突する。だがそれだけではストライクヴルム・レオの勢いは止まらず、しかし神星皇もその両足でフィールドを削りながら勢いを殺していく。やがて、フィールドの壁スレスレでストライクヴルム・レオの猛進が止まると、神星皇が弾き返し、そのまま光剣で襲い掛かる。
その切先から、ストライクヴルム・レオは寸前のところで光速で回避、神星皇の背後に回り込んで遅いかかる。その攻撃を、神星皇は振り向かずにその場から飛び立って避ける。それを追いかけ、ストライクヴルム・レオもまた宙へと上がる。
「アナタの神星皇のBPは13000。対して私の獅機龍神のBPは17000です」
光速で繰り出すストライクヴルム・レオの攻撃を上手く神星皇がいなしている光景を上空に、シュテルがこのバトルの状況を淡々と語り出す。
「そしてこのバトルで獅機龍神が勝った時、シャイン・ブレイザーの
輝竜シャイン・ブレイザーには
「そうすれば、獅機龍神の効果でダブルシンボルになっている双魚賊神のアタックでアナタの敗北は決する」
唯一の懸念事項は、なのはの残りの手札2枚の内、判明していない最後の1枚。しかし。
「そしてアナタの手札の中には、ウォール系マジックは間違いなくない。あれば間違いなくさっきの宝瓶神機のアタック中に使うべきだったからです」
そもそも、なのはのデッキのウォール系マジックは絶攻氷盾であり、あればセットしているはずである。
そして残る可能性としてBPを上げるマジックがあるが、それも1枚で4000の差を引っくり返せるカードは決まって汎用性が低い。これまでなのはが使ってきたカードを見る限りでは、ただBPを上げるためだけのカードを入れているとは考えずらい。
だからこそ、シュテルは確信していた。
「これで終わりです。タカマチさん」
自らの勝利を、疑いなく。
ストライクヴルム・レオの爪と牙が、神星皇の首筋を捉える。
このバトルが決まれば、実質的にシュテルの勝利は決まる。
しかし。
「フラッシュタイミング―――」
そんな絶対的ななのはのピンチは、彼女に残された1枚で覆る。
それは、あまりにも予想外の1枚。シュテルは勿論、この会場の誰もがその手を読むことが出来なかったカード。
その言葉はシュテルの言葉を―――勝利宣言を、たった一言で否定する。
「―――マジック『ネクサスコラプス』を使用!」
ストライクヴルム・レオの攻撃が空を切る。そして、寸でのところで避けた神星皇のカウンター、光剣の攻撃によって
片翼が強制分離したストライクヴルム・レオが、バランスを崩してフィールドの床へと突っ込む。
「
「なっ……! 馬鹿な……」
驚愕するシュテルを他所に、フィールドに突っ込んだストライクヴルム・レオに神星皇が切りかかる。
BPが18000にまで上がった神星皇に対して、ストライクヴルム・レオのBPは17000。たった1000の差ではあるが、それでもなのはのスピリットがシュテルのスピリットのBPを超えた。
そして―――。
「―――セイバー・シャークのブロック時効果で、スタークスさんの、最後のライフを破壊する!」
迫りくる刃を、ストライクヴルム・レオは間一髪で避ける。
飛行能力を失ったストライクヴルム・レオは、地を駆けて神星皇の攻撃を避けていく。
シュテルは、完全に油断していた。
いや、これはシュテルでなくとも読めはしなかっただろう。
いったい誰が、このバトルの流れで「ネクサス・コラプス」をなのはが握っていることが分かっただろうか。
あの1枚は、間違いなく初手、ないし序盤で既に手札にあったカードだ。
つまりなのはには「ネクサス・コラプス」を使って、シュテルの「光り輝く大銀河」を破壊するという選択肢があったはずだ。というより、それが最善だったはずだ。
シュテルのデッキは、大銀河、ピクシス、エリダヌスを軸にして、本来コストが高い「光導」スピリットを低コストにすることによる、大型スピリットでの制圧を狙うデッキだ。だからこそ、その主軸となる大銀河の破壊は、シュテルのバトルの核を潰すということ。
それを、なのはは分かっていたはずだ。
それなのに、彼女はあえて使わなかった。
この時、この瞬間の、勝利のために。
「まさか、このターンを凌ぐのではなく、このターンで勝利を得るつもりだったというのですか……」
シュテルが、フィールドの空を仰ぐ。
彼女は驚愕とともに、素直になのはのことを称賛していた。
こんなこと、並のバトラーに出来るバトルではない。
おそらく、彼女が「バトルスピリッツ」というゲームに触れて間もなく、かつ彼女がゲームの才に恵まれていたことが重なって起こった、奇跡とも言うべきプレイ。
なのはの策が、シュテルのプレイを超えた。
これは、抗いようも無い現実であり、また受け入れなければならない事実だ。
ああ、認めよう。彼女は―――高町 なのはは、強い。
そして、完全に―――。
「―――この読み合いは、私の負けですね……」