次生に福音を   作:朧残月

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プロローグ

 

 

 目が覚めた。

 

 目の前に広がるのは草や木、花が一面に広がる草原。柔らかく照らす太陽の光が草花を濡らす露に反射してキラキラと光る様はまるでおとぎ話に出てくる楽園のようで。

 

 そんな幻想的な光景に心奪われたのも一瞬。ここはどこだろう。何故俺はこんな場所に?

 

 そもそも俺の記憶はいつも通り会社へ出勤して仕事をしているところで途切れている。眠った記憶など無いし、百歩譲って仕事中に居眠りをしてしまったとしても俺の前にあるのはデスクとPCのはずだろう。

 

 寝ぼけていた頭がはっきりしてくるにつれ、意味不明な現状に次第に恐怖と不安が襲ってくる。平常心なら幻想的に見えていた目の前の光景も今ではなんだか不気味に見える。

 そんな俺の背後から足音がした。不安感からいっそ大げさな程に飛び退った俺の視界に映ったのは男性とも女性とも思えるような中性的な容姿の人だった。まるで平均的な男と女を足して二で割ったかのようなソイツはこれまた性別を判別できない声で俺に語りかける。

 

「目が覚めたようですね。獅子月修也様」

「…あ、あんたは?」

「私にはあなた方のように個体として判別される必要がありませんので固有の名称などはありません。あなたの知識の中で私の存在に最も近しい物を選ぶとするならば神でしょうか」

 

 まるで感情のこもっていない平坦な声でソイツは言う。意味が分からない。言っていることは分かるし、この異常な状況も目の前の人間が神であるならば説明がつくのかもしれない。だがまるで頭が理解するのを拒んでいるかのように整理が追いつかない。だって、もしそれが本当なら俺は…?

 

「混乱されているようですが、まずは私の話を聞いていただけますか?この状況も、ここに至った経緯も説明致します」

 

 

 

 

 

 神を名乗る奴から俺の身に起こった全てを聞いた。要約すれば俺は死んだらしい。それも世界の管理者(神の上司のようなもの)のせいで。原因に関しては世界の真理とやらに関係するらしく教えられないとのことだが…当然俺は怒った。何せ俺は死んだのだ。管理者とやらが直接謝りにくるならともかく部下(?)に処理を任せた挙句原因は話せない等と言われて納得できるはずも無い。

 そんな俺に対して神は相変わらず平坦な声で説明を続けた。管理者とやらは今現在も事態の収拾のために忙しくそのために自分が派遣されたのだと。できるならば直接謝罪をしたかったが、管理者が今その場を離れれば被害は俺一人では留まらない、それどころか日本が丸ごと地図から消滅するくらいの被害が発生する可能性があると。

 

 そう言われてしまえばそれ以上の怒りをぶつけることも出来ず。

 

「クソッ…」

 

 やり場の無いモヤモヤをため息として吐き出し、気になっていることを尋ねることにする。

 

「…んで、このあと俺はどうなんの?天国か地獄にでも行くことになんのかな」

「本来はそうなりますが今回についてはこちらの不手際に因るものですので、幾つかの候補の中から獅子堂様に選んで頂ければと思います」

 

 神が提示した選択肢は3つ。

 

1.別世界への転生(才能・前世の記憶付き)

2.任意の別世界への転生(特典無し)

3.このまま天国へ

 

 1は転生の世界は選べないが次の世界で俺が望む生き方が出来るように神が才能を付けてくれるというもの。才能が任意ではないのは世界のバランスを保つ上で与えられる才能が限られていることと、世界によっては選んだ才能が無意味になってしまう可能性があるためらしい。

 2は転生先の世界が自由である代わりに才能等は完全に運任せ。それこそファンタジーでもSFでも好きな世界へ転生できるが、運が悪ければただの村人Aで生を終えることになるだろう。

 3は何もしないという選択肢。特に説明することも無い。ただ普通に死んだ人間と同じように輪廻転生の輪に加わるということだ。

 

 どれを選ぶか。そう考え始めた俺は死ぬ前の人生を思い浮かべた。子どもの頃、学生時代を経て社会人となり、そろそろ中堅といったところで突然に潰えた俺の生。様々な思い出を思い返す内に俺の中に募る思いに気づいた時どれを選ぶかは自然と決まっていた。

 

「どれを選ぶかお決まりになりましたか?」

「あぁ、1で頼む」

「かしこまりました。では次の生でどのように生きる事を望まれますか?」

「今度の人生は…」

 

 俺の中に募る思いは後悔。なんてことは無い普通の人生だったがそれでもお世話になった、感謝している人は多い。そんな人たちは俺の突然の死にきっと悲しんでくれているだろう。録に恩返しもできず死んだ俺。次の人生こそは…。

 

「周りの、大事な人たちを悲しませないように生きたい」

「確かに承りました。ですがお気をつけください。あくまで私が与えられるのは才能のみ。それを生かすも殺すも貴方次第でございます。後悔の無きよう、よくお考えになられますよう。では、よき生を」

 

 その言葉と共に俺の意識は暗転した。

 




神様とか管理者とか伏線っぽいものとか色々あるけどこれからの展開に一切関係ないです(ネタバレ)
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