「…え?」
レオ君の口から困惑の声が漏れる
さっきまでみんな楽しく飲み会をしていたのに自分の発言で空気が変わってしまったのだ。無理もない。
僕も周りの空気の変わりように少し驚いてる
一瞬の静寂の後に皆が一斉にテーブルを片付け始めた
先ほどまでの浮かれた空気など少しも残っていない。そこにあったのは真剣な、仕事人の目だけだった。
「レオナルドくん、今…なんと?
緋く輝く羽根のような光といったかね?」
「え、あ、はい…」
スティーブンさんが本から赤いプラスチックの板状のものを取り出した
「それ、正確にはこんな色?」
「ああ、そうです間違いないそんな感じ…」
なんだかさらに空気がピリピリしてきた
「…何が起こってるんだ?」
「教えてやろう、しょうもなき民と家畜よ。」
「何そのざっくりとした王様キャラ」
「二流の猿にはこの程度しか無理か」
「黙って聞いとけ。レオが見たのは吸血鬼だ。」
「「……」」
「いったい何が起こってるんすか!?」
「あ、テメー」
「猿の言葉には信用する価値はないからレオ君は正しい判断だ」
「豚も失礼が過ぎんだろ!?」
「緋き羽根纏し高貴なる存在
有名な古文書の言葉でね、研究の結果実在することはまず間違いないのにありとあらゆる光学機器やセンサーの類で「観測」されないままの「現象」だったんだ。
どうやら君の「眼」はそれを映し出した。人間と見分けのつかぬ高位の不死者の姿を。
君の見たものは…吸血鬼だ」
「なんと…吸血鬼とはまた面妖な…」
「お前後でぎっしぎしに泣かすかんな」
吸血鬼か…
この町に来てからいろいろな超常現象に寛容になった気がしていたが、まだ甘かったか。
こんな伝承だけの存在までも実在するとは…
それにしてもその空気…明らかに初めての空気ではないな
得体のしてない化け物への恐怖というよりはよく知っているからこその恐怖って感じだ。
「ふうん、やっぱり長老級の住み家かぁ、外のごみクズとはわけが違うわよね。」
「彼のおかげでこれから得られる情報は質も量も跳ね上がるだろう。
スペシャリストの出番だ。」
「えええええ~、そうか…、彼…呼ぶの?」
?なんだかまた空気が変わった気がする
「当然じゃないか。」
「つうか正直、…呼ばなくてもいらっしゃると思うし、この事態にあの人抜きのほうが考えられん。」
さっきまでの緊張感が今度は別の意味で重い空気になってきた
「?ザップさん、あの人って?…わぁ!」
「ははは、そのあほ面はなんだ!?猿がこれ以上笑わせるなよ!」
「ザップさんのこの表情…いったいどんなことが来るっていうんすか!」
「クラウスさん、少し相談したいことがあるんですけど。」
「ん?どうかしたのかね?ブッチャくん」
「その、吸血鬼って血を吸うわけですよね?ということは僕の血液はとんでもないごちそうということなのでしょうか?」
「いや、それはないと考えられる。
過去に吸血鬼の生態を研究したものがいたのだが、その研究では人造の血液を摂取する際に拒否反応が出たという。伝承などから吸血鬼は血液を媒介とし、魂を食らっているという推測が立てられているのだが、人造の血液では魂の媒介になりえないのだろう。つまり吸血鬼は人間の体で生成された純正の血液しか摂取できないというのが現在の通説となっている。だから君の血液は吸血鬼にとってむしろ劇薬となる可能性が高いだろう。」
「なるほど、ありがとうございます。
ところで吸血鬼対策のスペシャリストっていったい…?」
「ああ、私の師匠筋にあたる人でね、通称「豪運のエイブラムス」。世界屈指の吸血鬼対策専門家だ。」