万仙陣に夜叉面放り込んでみた   作:SUMI

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万仙陣をやっていたらついつい創作意識が湧いてしまって気が付いたら書いていた。
正田卿にメッセージが結構効いたけど逆に燃え上がってしまったんだ。

八命陣やったから分かるけどあの人存命しているのは確実なんだよね。
だから子孫がいないのは絶対ないわけではない。と言うことでやってみた

怪士? …………きっとあの人は独身だったんだよ(震え声


一話

あることを楽しみにして寝付けなくなることって経験したことはないだろうか? それで思い浮かぶのが子供の遠足だろう。今まで見たことないところへと出かけてくる行事はまさに未知なのだ。だからこそ楽しみなのだ

夜空を見れば街灯に溢れた都会では見ることは出来ない星空を溢れていることからここはドが付くくらいの田舎である。コンビニって何ですか? が通用することから察してもらいたい。

こういっちゃなんだけどこれから上京する学生にとっては文字通り世界が変わる一大事でもあるのだから。俺こと穂積幻万(ほずみげんま)でもわずかながら興奮してなかなか寝付けない。

 

「にして……鎌倉か」

 

手にした資料には陰陽じみた、現代でわかりやすく言えばオカルトめいたことが書かれている。邯鄲と呼ばれるもので端折りに端折りって言うならば夢という形で様々な人生のシュミレートを行い、悟りを経て集合無意識から夢を持ち出すための超常の術である。そしてそれを持ち出せる資格を持つ人物が盧生と呼ばれるのである。

ほかの人物については置いておくが第二盧生についてでも語ろう。その人物の名は柊四四八。

盧生でありながら盧生を捨てた人物で第二次世界を阻止した正に英雄と言っても過言ではないほどだ。最初の盧生である甘粕正彦が引き越そうとした事件を止め、その後に満州に渡り大国各国を相手に立ち回ったのだ。その行動の軌跡は分からないけれどおそらく邯鄲が関わっているのではないかと言うのが自身の見解である。

その裏に関する事情を知っているのは俺たちにも普通ではない事情があると言うことである。そのために大任を持って送られたことになる。認められたと言う気持ちも相まって相棒の石神静乃へと声を掛ける。

 

「おーい、そろそろ頭領に出すレポートはしまった方がいい。子供の遠足みたいに寝過すぞ」

 

「ああ、そうだな。もう少ししたら切り上げるよ。先に休んでくれ」

 

こいつとはもう十年以上の付き合いが続いている幼馴染である。秘境めいた奥地にいたのだから同年代なのは静乃だけであるから幼馴染になるはある意味必然であるが。正直言って性格は素直だが常識がずれている。特に男女意識とか、倫理とか。特に俺が風呂入っているときにだろうと一緒に入ろうとしてくるしノーガードめいた服装で隣にいることなんてしょっちゅうある。まあ、そんな環境で俺が世間一般における全うな常識を持っているが逆におかしいとも言えるかもしれないが。だからこそ、ずれた静乃にいつも突っ込みをいれる俺という構図が出来上がっている。

 

「分かった。本当にどんなところか楽しみだな。静乃」

 

「ああ、大任ではあるが彼らの故郷とも言えるべき場所だからな。彼らの輪に入ってみたいな」

 

ただ、それが少し不安に見えてしまう。静乃が余りにも期待しすぎていることにだ。子孫は子孫だ偉大な英雄の生まれ変わりではないし、似ているわけでもない。それは人としてすごく失礼なことに当たるだろう。懸念はそれくらいだろう。静乃は多少常識がずれているだけだが根はやさしいしのだから。

ふと見上げた夜空の上、満月が輝いている。まるで優しく照らしているそれに一片の陰りが見え。

 

「あ、月蝕だ」

 

 

 

そこで俺の記憶は一旦途絶えた。何も見えず何も聞こえず、何かもがありながらも何もない歴史の空虚。それこそが朔。

 

さあ、一人の少女の一人歩きの妄想劇が今宵始まる。それに付き従うは存在すれどあやふやな仮面が一人。それがいかなる結末を生み出すか? それもまた朔の中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回る、回る。そこは混沌の阿頼耶。どこと知れぬ王座(ばしょ)。それを讃える音は止まず膨れ上がる。下劣な太鼓は呪詛に震え、呪われたフルートが痴れる音を連打する。演奏ですらない。

お前たちは総じて盲目だ。誰も等しく何も見ていない。

他者も世界も夢すらもそして現すらも。お前たちが見たいものしか見ないのだろう。ならばそれがお前の真だ。

 

因果?――しらんよどうでもいい

理屈?――よせよせ、興が削げる

人格?――そんなもの関係ない

善悪?――それを決めるのは己だけだ

 

お前の世界はお前の形で閉じている。

お前の真実を探して痴ればいい、快楽の詩を奏でればいい。

太極より両儀に分かれて四象に広がる万仙の陣。

普遍にして無窮である。故に限界はあらず。

 

さあさあ、痴れた音色を奏でてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて時間を進めて場所は鎌倉。朝早くではあるが下宿予定の柊家に上がらせてもらい挨拶したのはいいのだが……

 

「…………なあ、静乃。聖十郎さんに許可もらったのはいいんだが、まさかこうなるとは予想外すぎるよ」

 

だがな、いきなり風呂場を借りるはまあ、いいだろう。だがその後が問題だった。まさかのほかの人がしかも、男性で一人息子が入っている中でだ。無論、そんなのに動じない静乃である。後は分かるな? そしてそれに全く動じない夫妻もなかなかではある。俺? 俺はもや諦めの境地なのかもしれない。しかも服を着たのはいいが下着も同然なタンクトップとパンツ一枚とか……柊夫妻と和やかに談笑しているし。

長男でもある柊四四八くんはある意味納得がいっていない様子に何処と無く朝飯を食べている皆さんに納得がいってないようだ。あれ? これ自分が逆におかしいのか?と変な風に混乱しているのが分かる。さらりと自己紹介にまで入っているし。

 

「実は四四八くんが見たいのかなと思ってな」

 

懐からわざわざ手ずから作ったツッコミ用ハリセンを取り出して――どこから取り出したのは秘密な――バシンといい音が静乃のから響いてくる。相も変わらずいい音がする。

 

「じゃかましい! いくらなんでも初対面の人に対して無防備すぎるだろう! 少しは慎みを持てよぉ! 実際俺もそうだけどさぁ! ノーガードすぎるぞ!」

 

流石に初対面の人がいるのにいつものノリは抑えていたが静乃のフリーダムさに限界だった。もはや実家にいるような安定感でツッコンでしまった。今まで割と寡黙にしていたのだから急発進故に驚き具合は大きい。

 

「本当に突然押しかけてしまい申し訳ありません。俺は穂積幻万と申します。聖十郎氏との縁によって下宿させてもらうことになります。今後ともよろしくお願いいたします」

 

「ああ……こちらこそ柊四四八です。よろしくお願いします……」

 

その直ぐ後四四八さんと視線が合い時間にしてコンマ一秒に満たない時間だった。たったそれだけの時間で俺と四四八さん、いや四四八と共感し、俺たちは……

 

「「……友よ!!」」

 

もはやお互いに無意識に両手で握手をしていた。ああ、彼は真面目だと、苦労人だと。俺もここに来るまで静乃のラッキースケベの被害担当艦兼ツッコミ役だったが四四八もそうだと理解できた。だからこそ通じ会えた。彼もまた友である!

 

「おお、これが親父殿が言っていた男同士の友情。BL(ベーコンレタス)と言う物なのだな!」

 

四四八ともう一度視線を合わせ、静乃の頭から再びバシンといい音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛い、愛い、実に素晴らしい。

その桃源郷こそ絶対だ。否定こそ幸福である。お前たちが気持ち良く嵌れるならばそれでいい。ここで夢を描いてゆけ。

己はそれに抱かれ眠る。輝かる未来よ、降り注ぐ夢を見たい。そのあまりにも愚かしいすぎる人のユメとはなんと愛しきことか、彼の無卿を慰める。

願うなら願え。願う阿頼耶こそ、彼の人間賛歌なり。彼の己に捧げる想いなり。

お前がそう思うならそうなのだろうよ。お前の中ではな。それが真実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後で四四八を学校に行かせ、静乃を妻の恵理子と一緒に準備をさせに行かせた後、四四八の父でもある聖十郎と向き合っていた。

 

「それで貴様はやれと言われたのならばやれるのだな?」

 

主語が抜けているから敢えて出さないだけだろうが通じている。同じく問いかけに答えるのは幻万だ。しかし、先ほどまでの幻万を知る人が見たら驚愕するだろう。幻万から表情がない。人間の形をしたなにかだと見間違いするほどに寒々しく粛々と受け答えする様は人間らしさすら消えて機械だと勘違いしそうなほどに淡白だ。

 

「当然です。私はそうで在れと育てれてきたので」

 

「ふん、腐っても鬼面衆の一人であるわけか」

 

「それが神祇省鬼面衆夜叉面ですので」

 

淡々と返事をするさまはもはやインコと話したほうが人間味があるのでないかと言うほどだ。しかし、聖十郎は動じないし幻万がこうであるのは夜叉面と言い切った時点でそういう役職だと完結している。もはや機能とも言うべきだろう。

 

「……静摩が一緒に送ってきたのは何らかの理由があるみたいだな」

 

「私はおそらくこの朔について理屈を知りうるでしょう。頭領は適当に送っただけでしょうけど私は迦楼羅の由来を知りえています。かの第二盧生に託された希望である同時に絶望になりうるために」

 

そのことに聖十郎は密かに眉をひそめた。幻万が言っていたようにこの朔についてもっとも知識を得ているのは間違いないだろう。そして絶望と言ったことが朔についての秘密を理解していなければ出てこないのだから。

 

「やれるか?」

 

たったそれだけ。なにをなにがは問わない。

 

「そう命じられたのなら、それが夜叉面故に。そして……いえ、これは余計でしょう」

 

この時だけ仮面に隠されていた素の何かが見えた気がした。それこそが夜叉たる由来なのかは分からないけれど幻万が鬼面衆に籍を置く理由でもあるだろう。

 

「本当に鬼面衆は救えん塵ばかりだな」

 

そんな幻万を呆れたようにしか見ていない。実際そうだし、幻万自身ですらそんな連中の一人でもある。特殊な鬼面の迦楼羅である静乃を除いて神祇省の鬼面衆と言うのはそんな連中でしかなりえない、ろくでなし集団だから。変えられないし変えようとしても積み重ねたものが多すぎるし、すでに終わっている。

 

「…………ははっ、流石に俺自身否定できません。甘粕事件の際に連れてこられた鬼面もなかなかに逝っている部分がありましたしね。実際泥眼として連れられた伊藤野枝もそんな傷を持っていたみたいですし」

 

そこまでいって鬼面のではなく私人の幻万としての本音だった。どうしようもない奴らだからこそ嵌められるのだ。こんなところでしか発揮できない問題児なのだから。

 

「そうか、俺はもう行く。せいぜい俺が戻ってくるまでに終わらせてみせろ」

 

それはつっけんどんでありながらある意味信頼でもあるかもしれない言葉にすこしだけおかしい気分だった。でもそれはもっと別の人物に言うべきではないかと感じている部分もある。

 

「ええ、俺も託されたものがありますから……」

 

それでも止まれないものは止まれないのだから。そのためにも彼は仮面を嵌めるのだ。

 





蛇足 万仙陣風キャラ紹介

穂積 幻万(ほずみ げんま)
身長:174cm 体重:68kg

神祇省鬼面衆 今代夜叉。
静乃の幼馴染であり、静乃と同じく神祇の頭領の命を受けて鎌倉に送り込まれた彼女にも劣らぬ実力を持つ。
彼もそうした自負はあるが真面目で勤勉であるために親しまれている。
常識人であるため好奇心旺盛で暴走しがちな静乃のストッパーである。ただし、止めらず被害に遭うことがあるのだが。
朔について何かを知っているようだが……?




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